持ち込んだアイテムが「互換性変換」される世界で現地人の吸血鬼と現代人の一般人が合体ちゃって色々する話
「ぐっ……はっ……!!!」
硬い銀のナイフが僕の胸を貫いた。
このナイフは吸血鬼の弱点の銀でできている上に「不治癒」の呪い付きのナイフだ。僕はどうする事も出来ずに血を吐いて倒れた。
「ど……どうして……。」
「ククッ。ばっかじゃねーの。アレク。こんな所にデーモンに拐われた人間がいるわけねーじゃん。」
「お人好しも過ぎるとどうしようもねえな。」
目の前にいる3人はニヤつきながら俺を嘲笑った。
僕の名はアレク・ウィード。
スプリングバニア領の領主の息子だ。
ここは強大で強力な能力を持つ吸血鬼達が凡庸で脆弱な人族を治める世界。その領主の息子である僕は当然ながら吸血鬼だ。
だけど僕には吸血鬼としての能力が何も無い。亡くなった祖母が言うには遥か祖先に僕のような「能無し」が居たらしいこと、晩年になり強大な力を覚醒させた事などがあったらしいが……。
家族も最初は僕に期待していたがずっと「能無し」のまま変わらない僕より生まれつき優秀な姉ミザリーに目が向くのは早かった。まっ、期待されないのも気楽でいいやって最近は思うようになった。
そしてその姉ミザリーが最近、デーモン族とのイザコザが頻発していると言っていた。デーモン族は遥か昔から吸血鬼族との敵対している存在だ。だけど住む場所はお互い遠く離れていたし僕には関係の無い事だと思っていた。
そこに領民がデーモンに拐われたと報せが届いた。報せたのは領地を持たない男爵クラスの吸血鬼達経由だ。
今、思うと報せたのは僕にだけ。よく考えれば怪しい話だった。だけど領民が拐われたとあって頭に血が昇った僕は……今、このザマだ。
「普段からお前の事は馬鹿だ馬鹿だって言ってんのにここまで馬鹿だったとは。」
「なんで信じるかね? フツー。」
そう言ってそいつらは俺の首からロケットのついた首飾りを奪った。
「おうおう、ミザリーの写真が入ってら。シスコンだね〜。」
「自分の姉の写真を入れてんの? キモっ。」
「か……か……え……せ!」
姉さんは出来損ないで物覚えの悪い僕をいつも庇ってくれていた。
(能無しのアレク〜。)
(弱虫のアレク〜。)
幼年学校時代、卑屈で弱虫でいじめられていた僕。
(コラッ! 弟をいじめるんじゃ無い!)
それを姉はわざわざ助けに来てくれた。
(アレク! あなたもシャンとしなさい! たまたま能力が無くったってもあなたしかできない事があるの! それをこの学校で見つけなさい!)
(グスン。……うん。お姉ちゃん。)
それから何かに打ち込もうと決めた。今後、領主となるであろう姉の手助けとなるため。そのための勉強をしようと。そうして卑屈でなく色んな事に真摯に取り組むと僕を能無しだとバカにしない友達も出来る。姉には色んな意味で頭が上がらない。
「かえせ! そのロケットは……!」
「や・だ・よ。こいつはミザリーを誘き出すために使うんだよ。アイツはなぜか出来の悪い弟を溺愛してるからな。」
「姉さんを……どうするつもりだ!?」
「ふん。お前に教えるかよ。でも、どうなるかは大体、想像がつくだろ? ミザリーは美人だしな。」
「何!?」
僕は胸から血を流しながらもなんとか立ち上がった。だけど体に力が入らずに再び倒れる。
「……ちっ。お前は無駄に体力が有りやがるな。」
「だけどこのナイフで心臓を貫かれてるんだ。じきに死ぬだろ。」
「そうだな。じゃあさよならだ。ノロマのアレク。」
「ま……て……。」
こんな所で倒れてる場合じゃないのに体に力が入らない。血が体からどんどんと流れて頭もクラクラしてきた。
「姉……さ……ん。」
死にかけの俺を置いて3人は行ってしまった。止めなければいけないのに。姉さんを守らなければいけないのに。
僕はこのままどうする事も出来ずに死んでしまうのか?
ドサッ!
と、僕の目の前に唐突に人が落ちて来た。朦朧としてよく見えないがこれは人間の男だ。そして僕と同じように傷付いていて満身創痍のようだ。
そいつはなぜか背嚢から「果実」と「筆」のようなものを取り出して果実に筆を刺した。
「ふ……ふ……フュージョン。」
フュージョン? そしてそいつはよくわからない言葉を発したかと思うと果実が光り輝いて……僕の意識は飛んだ。
ー
バキバキバキバキ!……ドサア!!!
「グホア!!!」
ウチの実家の倉庫。
岩手の田舎にある実家。
「ったー。……床が突き抜けた……シロアリか? 木がボロボロだ。」
倉庫の整理中に落ちた。
「この空間は何だ?」
落ちた先の謎の空間。ウチの倉庫には地下室があった? でも何もない。あるのは一本の奥に進む道だけだ。
「何だよ。祖父ちゃん。倉庫にこんな抜け道作ってやがったのか?」
俺の名前は「神木 翔」
ここは祖父ただ1人が住んでいる実家。今、俺は入院している祖父に代わって倉庫の掃除と整理中だった。大学も夏休みでちょうどヒマだったから。
「しかし、結構な高さから落ちたな。」
見上げると穴の開いた天井が見える。戻るには登るしかない? 土壁を? マジかよ。スマホは倉庫に置いてきたぞ。
と、焦りつつも周りを見ると「木の梯子」を見つけた。その梯子は割と頑丈そうで倉庫へと続いていた。
「ほっ。梯子があるじゃないか。これで倉庫には戻れそう。」
ひとまず一安心だけど、こんな抜け道の存在は知らなかった。倉庫からはこの抜け道の存在は全くわからなかったし、木の床で塞いでたから完全に隠していたように思える。
この抜け道の先には何があるのだろう? 祖父ちゃんがこっそり作った秘密基地でもあるのだろうか。
気になった俺は、スマホのライトで照らしながら慎重に洞窟を進んでみる。どこかカビ臭さを感じる湿っぽい空気のする洞窟を。
数分ほど歩くと日の光が差し込んでいる洞窟の出口が見えた。このまま進むと外に出るみたいだけどこれはちょっとおかしい。
実家の倉庫からこの方角は「山」の地下辺りはずなのに。
恐る恐る洞窟から外に出ると……。まず心地良くて暖かい風がビューウと吹き付けた。田舎に来るといつも感じる美味しい空気のさらに何百倍も美味な空気。
「これは森? こんな所が……。」
俺の知っている限り日本でよく見る山林とはまた違った雰囲気の変な場所。
そしてこんな妙な場所は……ちょっと探検したくなってきた。しかし、今の俺の格好が……蒸し暑い中、倉庫の整理中だったから半袖の白シャツと短パンとサンダルだけだ。
こんな装備で大丈夫か?いや、大丈夫なわけが無い。準備はしっかりして行こう。
ー
さてと、
今の俺は長袖のYシャツにジーパンとスニーカーと登山帽を身につけて。そして背負ったリュックサックの中には水、昼飯、他などの色々な道具を入れている。
ちょっとした遠足気分だ。
ほとんどガラクタだらけの倉庫だったけどこんな変な場所に出る抜け道を隠していたとは。気難しくて近寄りがたい祖父ちゃんだったけど面白い事やってたんだな。
俺は森を歩きながらなんとなく周りの写真をスマホで撮っていく。
「この木って何の木だ? 見たことねー。その辺生えてる草や花も。」
色々とワクワクしながら森を歩く。
と、自分のスマホをよく見ると電波が入って無かった。
「あれ? スマホが圏外か? もしかしてちょっとヤバイ場所かな。……遠くには行かないようにしよう。」
後ろを振り返ると通ってきた洞窟の入り口が遠くに見えてちょっと安心。見知らぬ場所で帰り道がわからなくなってそのまま遭難とか嫌だなーなどと考えながら散策していると、
「……! 人が倒れている!?」
ドキッとした。森のど真ん中に人が倒れていた。恐る恐る近づいてみると若い女性だった。真っ白の髪色と真っ白の肌をした女性。
仰向けに倒れた女性は上等そうな服を着ているがそこかしこが破れている。血こそ流していないもののまるで生気を感じない顔色だ。
「……死んでる? ……生きてる?」
その女性にさらに近づいてみる。
「た……助けて。……み……水。」
しゃ、喋った!? 生きてる!? なんか「水」って聞こえたけど。
俺はリュックサックの中からペットボトルの水を取り出してその女性の口に少し垂らす。
「大丈夫ですかー? 水ありますよー?」
と、
カッと女性の目が開いた。
「うわっ!」
俺は驚いて尻餅をついた。そしてその女性はガバッと起きた。
「それ。それ、ちょうだい。」
「えっ? この水? はい、ど……」
どうぞと言い終わる前にサッと水を掠め取られた。えっ? 今、速すぎて動きが少しも見えなかったぞ?
「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ぷはぁ。」
その女性は500mlのペットボトルの水をあっという間に空にした。よっぽど喉が渇いていたようだ。その女性は空のペットボトルをまじまじと見つめる。
「これは……聖杯? なんでこんな物を? なんであなたが持ってる?」
その女性がパッと俺を見る。見開いた赤い瞳はまるで捕食者のような鋭さを持っている。その睨んでいるような視線に少しうろたえた。
そしてなぜかこの女性は空のペットボトルを「せいはい」だとか言う。せいはいって聖杯か?
「えっ? どこにでも売ってるペットボトルの水だけど? 聖杯ってなんのこと?」
「ふざけないで! こんな物がどこにでも売ってるわけないでしょう! ま、おかげさまで私の力はかなり回復したけどね。ほら。」
そう言うと女性から風が発生した。台風のような風圧が女性の周りに発生して俺は少しビビる。
「おわっ!」
力? って何だ? 今さらだけどこの人、もしかして普通じゃない?
「あなた何者ですか? 人間じゃ無いんですか?」
「私が人間に見える?」
「えっ? ええまあ、普通の女性に見えますけど。」
「ふっ、ふふっ。お前どこの輩だ。デーモン族の領から来たのか? 私は、お前達、人間にとって恐怖をばらまく存在だぞ?」
何を言っているんだ。この人は。中二病の頭のおかしい人か。……もしくはマジでヤバイ存在?
と、空から大きな何かがすぐ近くにズズーンと降って来た。
「うわっ!」
大地が揺れてバランスを崩しそうになる。
「こーんな所に居たあ。吸血鬼どもは逃げ足だけは速いんだから。」
「あら、しつこいわね。デーモン族は。でももう逃げる必要はなくなったわよ?」
デーモンと呼ばれたそいつは数メートルはある黒い体をした翼の生えた巨人。悪魔的なツノや尻尾が生えている。
えっ? 何こいつ? デーモンって? 悪魔的な何か?
「むむ? それは……聖杯? 水を満たすだけで全回復+αの効果のあるジエリクサーが作れる聖杯ではないか! ミザリー! お主がなぜそれを持っている!?」
「ふふっ。どうしてでしょうね? さて、これで私の力も全快しちゃったわよ? せっかく色々してくれたのも無駄になったわね。」
俺の持って来た水のペットボトル (今はカラ)について何やら言い合いを始めた。えーと、それは実家のすぐ近くの自販機で買ったよくある渓谷の天然水ですよ? ジエリクサーって何? てか、これ何の茶番?
「ぐぬぬぬぬ。クソがああ!」
「ふふっ。さぁ二回戦を始めましょうか!」
「XXXXXXXXXXXX!!!」
「XXXXXXXXXXXXXX!!!」
2人は何やらよくわからない言葉? 呪文みたいなのを唱え始めると……そこは戦場になった。
火の球が飛び交ったり、氷の刃が飛び交ったり、雷の槍が飛び交ったり。真っ黒の高速の闇の玉が飛び交ったり。女とデーモンは俺の事なんか気にせずに魔法みたいなものの撃ち合いをしている。
「おわあ! 茶番じゃなかったー!」
そして俺のすぐ近くに流れ弾がいくつも飛んでくる! 木 近くの木が削れこの葉が舞う! 地面に大穴が空く!
これはヤバイ! どうする? 俺どうする? 逃げなきゃいけないのにと思っていると俺の頭の中で声がした。
(リュックの中の……を使って下さい。)
「えっ? 誰?」
(私はSalu (サリュ)です。リュックの中の……を使って下さい。)
えっ? サリュって。俺のスマホの話しかけるタイプの質問形AIじゃん。
(そうです。サリュです。現状を打開する方法をお教えしています。リュックの中の唐揚げ串を使って下さい。)
えっ!? 唐揚げ串? 昼食用に買った唐揚げ串を使うって何?
(手に持って投げて下さい。)
手に持って投げるの!? 唐揚げ串を? もう! よくわかんねーから投げるぞ! なんでサリュにそんな事を勧められてるかとかよくわかんねーけど投げるぞ!
「ううりゃあああああ!」
俺はリュックから紙の小袋に包まれた唐揚げ串を急いで取り出すと振りかぶって投げた。焦って無茶苦茶に投げたそれは回転しながら飛んで行くとピタッと空中で静止して……キュリアアアアアア!!!と甲高い音を発しながら唐揚げだけが回転を始めた。
串は唐揚げの回転が増すごとに段々と光り輝いて光の矢になった。そして回転した唐揚げが「砲身」となり……バシュッッッッ!!! とデーモンに向けて光の矢が飛ばされた。
「うぐ! なんだそれは! XXXXXXXXXXXXXX!」
デーモンは各種バリアを展開した。
パパパパリン!!
が、光の矢となった串は全てのバリアを貫通してデーモンの額をガッ! っと貫く。
「な!? うううぎゃああああああああ!」
額に大きな穴が空いたデーモンは……断末魔を上げながらゆっくりとチリになって消えて行った。光の矢となったは空の彼方へ消えて行き、空中に残った唐揚げも回転を止めてボトボトと地面に落ちた。
なんだ? 俺は夢を見ている? 唐揚げの串が光る矢になってデーモンとかいう巨大生物の額に穴を開けたぞ? そして俺の唐揚げは地面で砂まみれだ。コンビニで買った唐揚げ串だが258円のちょっと良いお値段のする奴だぞ?
「人間! 今度は何をした!? まさかグングニルを使ったと言うの!? いや、こっちの「揚げ肉」に見える物体が本体か!? グングニル級を何発も放つ事が出来る神話級か!?」
女が訳の分からない事を言って俺を睨む。しかもさっきまで魔法を撃っていた手をこちらに向けて。もしかして俺にも魔法を撃つぞっていう素振りか?
(サリュ。どうしたらいい?)
頭の中で問いかけるとサリュは答えてくれた。
(相手は化け物です。勝てる方法がありません。逃げましょう。リュックにある「手鏡」を使って下さい。)
マジか。化け物か。それは逃げるしかない。俺はリュックに
手を突っ込んだ。
「これ以上、神話級は使わせないわ! XXXXX!」
その女の発した魔法は簡素な魔法だった。真空の風の太針を飛ばすというもの。だがその針は鋭く俺の腕や胸に刺さった。
「ギャッ!」
俺は手鏡を落としてうずくまる。
「それは……転移系の神話級か。お前はいったい何者だ? どこでそれを手に入れた?」
「ぐあああ……!」
痛い。痛い。痛い。痛い。
腕と胸に激痛が走る。
クソッ……なんでこんな事に……。
こんな事ならこんな所に来るんじゃなかった。
もうやだ……どこか遠い場所へ……。
(顎です。顎を手鏡の上に乗せて!)
(顎……?)
俺はうずくまりながらあごで手鏡に触れた。すると、バシュッと音を立てて俺は転移した……。
「あっ! 逃げられた!」
そこには吸血鬼ミザリーただ1人だけが残った。
ー
気付いたら俺は見知らぬ場所にいた。さっきとは違う場所だが同じような雰囲気と思しき森の中。そこで俺は仰向けに倒れていた。
(ううっ。体が痛い。服がベトベトだ。これは血か。)
先程の謎の女にやられた傷は決して浅くなかったようだ。それに少し寒い。この場所がそうなのか血を流しすぎたせいなのかわからない。
(これは……体の傷が致命的なようです。リュックの中のボールペンとリンゴを使って下さい。)
(サリュ。ボールペンとリンゴ?)
痛い体をなんとか我慢してリュックからボールペンとリンゴを取り出す。
(サリュ。どう使えばいい? これで体を治せるのか?)
(リンゴとボールペンは体の傷を回復させるものではありません。ただ……現状を打開するための最良の策です。リンゴにボールペンを刺して下さい。)
……リンゴにボールペンを刺す? ……よく分からないが言われた通りにするしかない。
(刺したぞ。サリュ。)
(ではそちらに倒れている男に向けて「フュージョン」と言って下さい。)
男? 不思議に思って周囲を見ると俺と同じように血をたくさん流した男が倒れていた。しかしフュージョン? って何だ? よく分からないがやってみるしかない。
「ふ……ふ……フュージョン。」
そう言うと手に持ったボールペンの先のリンゴがピカッと光って俺の意識は飛んだ。
ー
俺は目を覚ました。
(ううん。ここは……?)
今いる場所は薄暗い森。さっきまで居た場所とは似ているようで似ていない場所。俺は……そうだ。俺は謎の女の攻撃を受けて瀕死の状態だった。それで手鏡でまた別の場所に来て。それをサリュの勧めでリンゴにボールペンを指して……「フュージョン」とか言ったか。
(フュージョンって何だったんだ? 傷を治す魔法かなんかか? 俺の体は?)
自分の体を弄るようにして触ってみると……体の痛みもなく傷も治っていた。良かった。生きている。確かに「不治癒」の呪い付きのナイフで刺されたのに……。
(ん? 呪い付きのナイフで刺された? 何だこの記憶は?)
(ん? 僕は姉さんから魔法攻撃を受けた? 何だこの記憶は?)
(えっ?)
(えっ?)
頭の中で知らない声がした。
よくわからないが俺は体を起こそうとした。だけど俺が体を起こそうとするより早く俺の体が「勝手に動いて」起き上がった。俺はびっくりして自分の体を触る。
(何だ? 体が勝手に動いた?)
(何だ? 手が勝手に動いた?)
(ん?)
(ん?)
何だ何だ? 俺の体にもう1人の誰かがいるような感覚が……。
(そうだ。サリュ。俺はどうなったんだ?)
(サリュ? ……ああサリュか。僕はどうなったの?)
サリュに聞いてみる。
もう1人の誰かもなぜかサリュに問いかける。
(なんとか助かったようですね。貴方達は本当にギリギリの状態でした。端的に言いますと貴方達は合体しました。)
((合体?))
自分の意識と誰かの意識がハモったような感覚。
(はい。今の貴方達は一つの体に二つの心。いわゆる二重人格とも言えますがそうとは一概には言えない複雑な状態となりました。)
えっ。じゃあ俺の体にもう1人いるって事?
(お前は誰だ?)
(えっ。僕? 僕は……アレク・ウィードだ。スプリングバニア領の領主の息子だ。君は?)
うわ。頭の中で返事された。サリュが頭の中で喋ってくるのとはまた違う感じだ。ちょっとゾワっとする。まあ、向こうも同じなのだろうか。
(俺は……神木翔だ。日本から来た。ここは何処なんだ?)
(ここは……何処だろうな。僕は仲間に……仲間だと思ってた奴に騙されて……転移系の道具を使われてそれでナイフに刺されたんだけど……。)
そうアレクに言われるとその光景を俺も体験したとばかりにはっきりと想像できた。そうだ。俺は騙されて刺された。その時の恐怖がリアルで少しブルった来た。
(だからここが何処かは正直言って分からないんだ。君は?)
(俺は……実家の倉庫を整理してたら森に出て。そして謎の女を助けたら。なんか吸血鬼とか言ってたな。デーモンとの争いに巻き込まれたと思ったらその謎の女に攻撃されて。今はこの有様だ。正直、サリュの言う通りに来たからよくわ
からん。)
(その謎の女って……)
謎の女。……あれ? 謎の女は……俺の知ってる人っぽいぞ……? なんでだ? 初めて会ったはずなのに。
(あれ? 姉ちゃん?)
(……そうだね。僕の姉さんだね。君は姉さんに魔法攻撃を受けて瀕死の状態だったのか。ごめん。僕の姉さんがごめん。)
アレクに謝られた。
(いや、悪いのはアレクじゃないし。それに……どうやら俺達が合体しちゃったのって俺のせいみたいだし。スマン。)
俺達はお互いに謝った。するとなんだかさっきまでアンバランスだった俺達の存在感?が少し落ち着いたようなそんな感じがした。
(いや、僕達はお互い瀕死だったんだ。それがカミキのおかげで助かったって思えば……それよりサリュ? この合体は何が原因なんだ? 何か道具を使ったみたいだけど。)
そういやそうだ。リンゴにボールペンを刺したらなぜ「合体」するんだ? アレクがサリュに聞いてみると、
(これは……まず神木様が日本から「こちらの世界」に来た際に幾つかの道具が「互換性変換」されて全く別の性質を持つ物質に変化しました。スマホの質問形AIである私がこうして喋っているのもその変化のせいです。)
やっぱりここは別世界か。そして「互換性変換?」とやらが起こったらしい。
(その変化した道具の幾つかは……こちらの世界でいわゆる神話級や幻想級、少なくとも伝説級のアイテムへと変化しています。水のペットボトルが「聖杯」となったのも、唐揚げ串が「グングニル」となったのも。)
あの無茶苦茶なのはそのせいか。
(カミキ。君の記憶が少し僕に共有されたおかげでわかったんだけど姉さんを助けてくれてありがとう。姉さんはデーモン族の策略のせいで死ぬ所だったみたいだ。)
(いや、うんまあ、困ってる人がいたら助けるのは当たり前だろ?)
(そうだね。僕もそう思う。でも、本当にありがとう。)
こうやって通じ合うとアレクと合体している事の違和感が少しづつ解消されていく。最初は少し気色悪くも感じたが気が合いそうだとわかるとむしろ1人じゃないと安心感を覚えた。
ただ俺個人としては出来る限りこの異世界から出たい、元の場所に帰りたい。しかし今は俺の体は俺1人のものでは無いから、りあえずこのアレクとは揉め事が無いようにしたいと思った。
てか、アレクって謎の女の弟って事は……アレクも吸血鬼?
ー
なぜかカミキと言う人間と合体して僕は九死に一生を得た。カミキは日本というおそらく異世界から来たらしい人間で、これまたよくわからないがなぜか神話級のアイテムを持っていた。
で、僕は立ち上がろうとしたが。
(あれっ?)
(おっと?)
僕はというより僕達はずっこけた。これは僕が左足を出して立とうとしたのに対してカミキは右足を出して立とうとしたせいだ。
「あおたっ!」
しかもそれぞれが別の言葉を言おうとしたからか変な言葉になった。
(これは……案外……同じ体ってのは動くだけでも大変そうだな。アレク。左半身は俺。右半身はアレクが動かすとかに分けるのはどうだ?)
(うん。やってみようか。)
早速やってみた。が、すぐにこけた。半分だけ力を入れるというのが上手く出来なかった。バランスが取れないから片方だけっていうが無理だった。
(難しいな。じゃあ下半身は俺、上半身はアレクってのは?)
(うーん。それこそ逆に難しそうじゃない? 僕は少しも体を動かさないからカミキだけ動かすのは?)
(そうだな。そうしてみよう。)
カミキだけに任せてみると。
(おっ、ちょっと自分の体じゃない感じがするけどなんとか動ける。……てか、この体ってアレクのものか。)
今の僕達の体は100%僕アレクの体だ。カミキと合体したと言っても混ざったわけではないらしい。僕の体に「カミキの体が入って」合体したという事なんだろう。
(サリュ? もしかして俺の体って消滅した?)
(いえ。スイッチする事が出来ます。神木様の体に変化するようイメージして下さい。)
(イメージか……)
ポワン。
少し体が光ると僕の体が変化した。カミキの体に変わったようだ。しかも体だけじゃなくて服もカミキのものに変化していた。
(服も変わるってすごいな。)
(神話級アイテムですから。)
初めて体験するけどやっぱり神話級アイテムの効果は凄まじい。
(おっ、自分の体の方がやっぱり動かしやすい。背格好は似てるけど筋肉が違うからかな? やっぱり慣れた体の方がいいな。)
そう言ってカミキは何か格闘技のような動きを見せた。武器を持たず素手で戦う軍団を持つ国が大陸の端にあるって聞いた事があるけど……カミキはそういうのが得意なのかな。
(今度はアレクが動かしてみてくれよ。俺は動かないようにするから。)
(わかった。)
カミキの体を試しに動かしてみる。確かに自分の体じゃないからか少し動かしにくい。ここはスイッチしてみよう。
(スイッチ。)
すると体がポワンと光って元の自分の体に戻った。慣れた自分の体に。やはりこっちの方が動かしやすい。
(なあ、サリュ。「合体解除」は出来るか? それぞれ自分の体に戻りたいんだけど。)
(あっ、僕もそう思う。)
僕達の傷は治ったのだから戻れるものなら戻りたい。だけどサリュから返ってきた答えは無情なものだった。
(現状は元の状態に戻す方法がありません。カミキ様の持ち込んだアイテムの中にそのような機能を持つ物はありません。)
(まじか……じゃ、俺達、一生このままか?)
(いえ、元に戻れる可能性はゼロではありません。「合体を解除」する神話級アイテムがこの世界に存在する可能性。またはカミキ様が「新しいアイテム」を持ち込む事で神話級アイテムへと変化する可能性があります。)
(合体を解除する神話級アイテム? そもそも神話級アイテムなんて国宝ものだからウチみたいな辺境領では聞いたことが無いな。あっても王都の宝物庫だし僕じゃ手が出せないと思う。)
(とすると、俺が持ち込むという事になるか。この世界に来るのに通ってきた洞窟まで戻れれば……。サリュ。その洞窟の場所ってわかるか。ここから近い?)
カミキが言うには日本という異世界を結ぶゲートは洞窟らしい。その洞窟まで戻れれば日本という所からアイテムを持ってこれて、神話級アイテムになると。
(カミキ様。現在地はあの洞窟の場所からはかなりの距離があるためルート検索は使用できません。近辺まで行く事が出来れば可能となります。)
洞窟の周囲の雰囲気はカミキと記憶を共有するためか具体的なイメージが頭の中に浮かぶ。でも僕にはその場所の見覚えが無かった。
(その場所は……僕も心当たりが無いや。スプリングバニア領の外れかまたは別の場所かも。あと今僕達がいる場所も正直わからない。でも寒いからウィンタバニアの領だとは思う。だから暖かい方角、おそらく南に行けばウチの領にも近づいて集落なんかがあるかも。)
(ふむふむ。じゃ南に行ってそれで人里を探すか。)
(そうだね。人里でも見つかればそこ経由でウチに連絡が取れる。何にせよ、まずはウチに帰りたい。)
(わかった。……そういやアレクは領主の息子だったな。アレクは吸血鬼……なのか? 吸血鬼ってのがよく分からなくて。)
吸血鬼がわからない? カミキは吸血鬼を知らないのか? 異世界人だからかな。
(僕は吸血鬼だよ。もしかしてカミキの居た世界に吸血鬼は居ない? 人族だけとか? デーモン族も居なかったり?)
(そうだな。吸血鬼やデーモンなんてのは居ないな。魔法や呪いなんて物もないし神話級とやらのアイテムもない。人族だけの世界だよ。)
へー。人族だけの世界か。なんか面白そう。
(吸血鬼は人族と違って「特殊な能力」があるんだ。血統ごとに様々だけど姉さんは魔法に特化した能力だったりね。)
(なるほど。姉ちゃんの魔法はすげえ威力だったもんな。じゃあアレクはどんな能力持ちなんだ?)
ズキッとした。
(いや、僕には何も無い。能力なしは珍しいんだけどね。)
(ふうん。……ま、そういう事もあるだろうな。じゃ、アレクは吸血鬼社会で大変だったんだな。)
(……まあね。あと、吸血鬼は人族に対して偏見とか差別意識を持ってるのも少なく無いから注意してね。ウチでの所は無いけど身分があったりするから。)
(おっ、そうなんだ。アレクはどうなんだ? 人族に偏見はあるのか?)
(カミキ。わかってて聞いてるだろ。君に注意するくらいなんだ。そういう偏見は僕には無いつもりだ。)
(ごめんごめん。忠告、助かるよ。)
カミキはたまにお調子だけど話せる人間っぽい。異文化人なんてのと会うのは初めてだけどカミキは気さくな奴で付き合いやすいくて良い奴だと思った。
(アレク様。お言葉ですがあなたに吸血鬼としての能力が無いと言うのは間違っています。)
(えっ? サリュ。それってどう言う事?)
サリュがなんだかおかしな事を言う。僕に吸血鬼としての能力が無い事ははっきりしてるのに。もう色々と諦めはついているというのに。
(アレク様。想像ですが、おそらく神木様と合体した事でその能力が発現しました。その特殊能力に名前を付けるならば
……「ゲーマー(オープンワールドアクション風)といった所でしょうか。).
げーまー? おーぷんわーるど? どういう意味の言葉だろうか?
(ゲーマーか。オープンワールド風という事は……)
僕にはよくわからないがカミキはその言葉に心当たりがあるらしい。
と、急に視界の周りに「黒い縁」のようなものが現れた。どこを向いても黒い縁がついてきて視界を少しだけ狭めている。なんだこれは?
(これは……まさかムービーシーンか? 何かが起きるかもしれない。気をつけろ! アレク! 周囲の警戒だ!)
えっ? 何? むーびーしーんって? と思っていると確かに遠くから何かが迫っているのを感じた。これは……魔法攻撃を発する時のパルス信号だ! こちらに向けて!
と視界の端に「避けろ!」と文字が表示された。何だこの文字はと考える暇もなくその通りに僕は横っ飛びで避けると……
ドガン!
ちょうど僕達がいた場所に大岩が降ってきた。これは土属性の中級魔法ロック・シュートか。
「おおっと。今のを避けますか。」
黒い体をした存在が空から舞い降りて来た。悪魔のようなツノ、翼の生えた存在だ。直接見るのは初めてだけど……こいつはデーモン族だ。若い人間の女を抱えている。その人間の女はみすぼらしい格好をしている。意識は無いようだ。
「おやおや? あなたは確か死んだと報告を受けてるアレク・ウィードじゃござんせんか。吸血鬼の、同族の温情で殺さなかったか……もしくは裏切り者の体をして我々を裏切ったのか……。」
「誰だ!?」
「おっと、挨拶がまだでしたね。私はデーモン族のペガッサと申します。一応、生きてるか確認に来たのですが。」
どうやら僕の生存確認に来たらしい。
(敵か!? サリュ! 何か武器か逃げるための道具はあるか!)
(ございます。ですが使う必要は無いと考えます。)
使う必要が無い? どういう事だ?
(神木様、アレク様。貴方達は今は中途半端に合体している状態です。真に合体をすれば目の前のデーモン族は御するには容易い存在です。)
(真に合体? どうすればそうなれるんだ?)
(2人同時に真に合体すると念じて下さい。2人の意識を一つにして下さい。)
((真に合体……))
そう念じると僕の体がポワンと光って変化した。
顔はわからないがちょうどカミキと僕とを足して割ったような姿形、服装になった。
「む? 何ですか? それは? 変身しました? 吸血鬼の能力は何も無いって聞いてたんですがね。嘘を教えられてたって事はやっぱり私は裏切られてたってわけですか。」
真に合体。
これまでは2人の意識は別々だったのが肉体を含めて1つの意識になった。2人の間には考えの違いや体の違いが無い。1人となったとしても葛藤や迷いなどといったものが何故か無かった。
((この状態は……すごい。俺達が混ざって理解し合って何倍もの力になってるのがわかる。))
しかも思考能力、身体能力、五感、体の使い方、技などが単純に2人を足し算で足した様ではなく掛け算で乗じたようなパワーアップを感じる。
「ペガッサ。俺は生きている。どうするつもりだ。逃してくれるか?」
「まさかまさか。そんな臨戦態勢を取ってるくせに。わかってるでしょう。殺しに来たのですよ! さあ、始めましょうか!!!」
そう言ってペガッサと名乗るデーモン族は抱えていた女を放ると臨戦態勢を取った。
(神木様、アレク様。3分以内にはケリをつけて真に合体を解除してください。そうしないと戻れなくなる可能性があります。御武運を。)
((わかった!))
ペガッサとの殺し合いが始まった。
カミキ×アレクは武術の構えを取った。
「変身する吸血鬼なんてのは初めて見ました。身体強化とかちょっと特殊な魔法が使えるとかは知っていますが……ところで武器は無いんですか? 魔法は? まさか素手?」
「ああ。お前を倒すにはこれで十分だ。魔法なんか使わずにお前程度は倒せる。」
あまりにもあっけからんと答えるカミキ×アレクの態度にペガッサはカチンと来た。
「……そうですか。苦しまずに殺してやろうと思っていましたが、気が変わりました。……血反吐吐かせて嬲り殺しにしてやる! XXXXXXXXXX!」
ペガッサは魔法を繰り出してきた。高速の氷の槍を何本も飛ばす魔法。
俺はそれを危なげなくもギリギリで避ける。避けた氷の槍は木に深々と突き刺さる。頭や心臓に当たれば致命傷となる威力だ。
だが今のカミキ×アレクには当たらない。
もともと高かったアレクの吸血鬼としての身体能力に加えカミキの運動神経が加わりその相乗効果で超人とも言える体となっていた。
「ほう。これくらいは避けるか! では、これはどうです! XXXXXXXXXXXXXXX!」
ペガッサは次に切り裂く風の円盤の魔法を出した。しかも直線では無くカーブを描いて四方八方からカミキ×アレクを攻め立てるブーメランのような風の魔法だ。
だがカミキ×アレクは正面からの魔法、側面、死角からの後面からの攻撃を全て避け切った。高速でしかも10や20では済まない数の風の刃を。
「なっ!? 後ろに目でもついてるんですか!?」
驚愕するペガッサ。
「知ってるか? 魔法というのは全て固有の音波を持っている。それを一定方向に発するんだ。」
「……知りませんでした。だから、どうだと言うのです!」
能無しだったアレクが必死で身につけた技術。
それは魔法を耳で判別する事。魔法学院の研究のツテから魔法には固有の音波を持っている事が教えてもらった。その事実から全ての魔法の音を必死で聞き分ける特訓なんてするのはアレクだけだった。
そもそも魔法が使える者はまずバリアの魔法を覚えるし魔法がからきしの者は戦いになんて赴かない。アレクはそのどちらでもない道を選んだ。
「お前の魔法は今の俺には何の問題にもならないって事だ! ペガッサ!」
そう言って俺は間合いを詰める!
「速い!? グゴフッ!!!」
ペガッサの腹に肘鉄を決めた。その衝撃にペガッサは吹っ飛び体を思い切り木に打ち付けた。
「クッ! このッ!」
ペガッサの身体能力も悪くはない。さらに間合いを詰め寄るカミキ×アレクに手の爪を振るい、針のついた尻尾で刺してくる。だがパワー、スピード、全てがカミキ×アレクに劣っていた。
そしてカミキ×アレクはその全ての攻撃を避けつつその尻尾を掴んで空中に放り投げた。
「オラァッ!」
「クウウッ!」
ペガッサは空に放り出された。が、数十メートル上空に放り出されたペガッサだが背中の翼を使い何とか空中で姿勢を整える。
「はあ、はあ。これは……ちょっと私の手に負えない相手かしらね。」
ペガッサも相手との大きな力量の差に既に気がついていた。
「これは逃げるが1番ですね。でもあいつは馬鹿ですね。空も飛べないのに。私を空に放り投げて。ヘヘッ。」
ここは飛んで逃げようとペガッサが思ったその矢先。
「それが油断って奴だよ。ペガッサ。」
「何!?」
ペガッサの後ろから声がした。カミキ×アレクが空中に立っていた。カミキが持ち込んだものの一つ、登山用靴。それは「互換性変換」を経て「空歩」「噴射移動」を可能にする伝説級アイテムへと変化していた。
カミキ×アレクはペガッサの翼をガシッと掴む。
そうして背負い投げの要領で翼を投げさらに回転を加えてペガッサを振り回した! 空中で浮遊力を失ったペガッサは振り回されながらどんどん落下していった。
「グッ! グッ! クソッ!」
自慢の魔法も翼も牙も爪も尻尾も使えない。回転しながらペガッサは落下して……落下して……落下して……
ゴガッ!!!!!
ペガッサは大岩に頭を打ち付けられた。重力と回転の力と大地の力。万物の万有の力をあまねく使う技。神木流古武術の目指すもの。カミキが特訓の果てに身につけたもの。
ペガッサは絶命した。
するとペガッサはシュウウウウウと音を立ててチリとなり消滅した。
((倒したみたいだ。真に合体を……解除))
ポワンと光って俺達は元の姿に戻った。
(ふう。……ははっ、すごいな俺達。)
(いや、カミキの技が凄すぎでしょ。あんな体の動かし方はサーカスでも見た事がない。コブジュツって凄い。)
(それを言うならアレクの身体能力も高すぎ。耳も良いし。あと何だよ。魔法を聞き分けるって。よく分からんけど分かった感覚だったぞ。)
(まあ、たまたま魔法研究者と知り合っただけだよ。)
俺達は勝利に酔いしれた。
(でも凄いね。真の合体の効果。)
(ああ。お前がとんでもなく姉ちゃんの事が好きすぎる事がわかっちゃったぞ。)
(姉さんを好きで何が悪い! それよりカミキのエロ本、エロDVDの隠し場所もこっちは全て把握してるんだからな! カミキの姉に見つかってそれを机の上に置かれて家族に見つかった恥ずかしい過去も知ってるんだからな!」
真の合体の副効果として。
相手の事が過去の記憶も含めてわかりすぎると言うのがあった。
(なっ! それを言うのは無しだろ!)
(お互い様だよ。)
俺達が戯れていると、
(アレク様。ゲーマーレベルが上がったようです。「アクションシーン発生確率アップ」「仲間数+2」「拠点作成」「拠点レベル5」「アイテムクリエーション(武器)」「アイテムクリエーション(防具)」「アイテムクリエーション(薬)」「アイテムクリエーション(爆弾)」「アイテムクリエーション(料理)」が解放されました。)
(ゲーマーレベル? まるでゲームみたいだな。)
(レベルって何? あ、いやカミキと記憶を共有したからわかるけど僕の能力って変だよ。こんな能力は聞いた事がない。
(アレク様の吸血鬼としての能力は王家レベルでかなり特殊のようですね。」
とここでペガッサの連れていた女に動きがあった。
「うう……」
ペガッサが連れていた女性はまだ息があるようだ。この人を起こして話を聞こうか。もしかしたら近くにこの人の住む場所があるかもしれない。
とりあえず話を聞いてみよう。