008(怒りのハイキック)
ニコルは電話をかける。
「もしもし、こちらは福富家のミヤビお嬢様の従者、ニコルですが」
「ニコル君。どうしたね?」
「ガソリンスタンド風の建物に例のターゲットが居ます」
「了解した。部下を送る」
ニコルが古びたガソリンスタンド風の建物に戻ると、警察官が数人来ていた。
「お嬢様、何事ですか?」
「いきなり、警察が来たわ。私が聞きたいくらいよ」
「お嬢様、お酒はどれに致しましょう? 数種類買ってきましたが」
「ビールをちょうだい。初めてのタブは自分で開けたい」
「御意」
ニコルはレジ袋から缶ビールを取り出して、そのままミヤビお嬢様に渡す。
カチッ、カチッ…………カチャッ。
「開いた〜。初めてのお酒」
「福富家のお嬢様、飲んでる場合か? アンタが一番少ないぜ」
「こっちにも隠し玉があるのよ」
ニコルはミヤビお嬢様に聞く。
「お嬢様、現状は如何でしょうか?」
「私が50億円、マイケルって人が60億円、タツヤって人が75億円よ」
「そうですか」
「ねえ、ニコル」
「なんでしょう?」
「ニコルの車も私の物にしない?」
「ダメですよ。焼け石に水です」
マイケルは意を決してタツヤに話し掛ける。
「その20カラットのダイヤモンド、見せてくれないか?」
「ダメだ。これは大切な物だからな」
「そうかい。お巡りさん、このダイヤモンドに付着してる血液を鑑定してくれないか」
「事件の匂い…………タツヤさん、ちょっとお借りしますよ」
「待て待て待て! 血がなんだって? そんなもん付いてる訳ないじゃん」
「それなら、見せていただけますね?」
「おっ、おお…………」
タツヤは半ば強引に取り上げられる。綺麗なダイヤモンドの指輪だ。
「ふ〜む。血液は……」
「なっ? 血なんて付いてないだろ?」
「どこでこのダイヤモンドを買いましたか?」
「えっ? その〜。闇市だよ、闇市……」
ダッ! タツヤはダッシュして逃げる。ニコルの車を盗み、逃げようとするが、タツヤはニコルのハイキックでノックアウトされた。
「取り押さえろー!」
警察官がタツヤを制圧してワッパをはめる。すると、1台のパトカーがガソリンスタンド風の建物に付けられた。
「ニコル君、例の犯人はコイツかい?」
「はい」
マイケルはタツヤに詰め寄る。
「このダイヤはな。娘の物なんだ!」