006(勝負の誕生日)
次の日の朝、ミヤビお嬢様は家族、従者達から祝福を受ける。従者達は、パン、パン、パン、パンとクラッカーが鳴らした。
「誕生日おめでとうございま〜す!」
「ありがとう。ニコル、みんな」
メイド達が、デコレーションされたチョコレートケーキを運んできた。火が着いた20本のキャンドルが刺さっている。
ミヤビお嬢様は「ふー!」とキャンドルの火を息で消す。すると、みんなが、パチパチパチパチと拍手をする。
「ミヤビ。大好きな、チョコレートケーキよ」
「ありがとう、ママ」
ミヤビお嬢様はケーキにガブリとかぶり付く。
「甘くて美味しい〜」
「ミヤビお嬢様、そろそろ支度を」
「忙しいわね、ニコル。でも分かってるわよ。みんな、私の部屋から出て。着替えるわ」
家族と従者達は、邸宅の玄関に集まる。ニコルはミヤビお嬢様の部屋の外で待つ。すると、キンキがニコルに詰め寄る。
「ニコル。妹をどうするつもりだ? 何を考えてるんだ?」
「キンキ様。私はただ、ミヤビお嬢様のためを考えてるだけですよ」
「狙いは福富家の財産か?」
「私には畏れ多い財産です。手にしたところで、遣い方を知りません」
「ふん! すぐに尻尾を掴んでやる」
「お兄様、どうしたの?」
ミヤビお嬢様が着替えて部屋から出てきた。ユルふわの巻き髪でヒマワリ柄のワンピースだ。
「いや、何でもないんだ。バッチリ決まってるじゃないか」
「お兄様。ニコルの胸ぐらから手を離して。喧嘩してもニコルには勝てないわよ? リーチが違うわ」
「気を付けろよ」
そう言い残し、キンキは去っていった。
ニコルと二十歳のお嬢様は邸宅を出て、敷地中央のガレージに行く。途中で従者達や家族がフラワーシャワーをする。きらびやかなものだ。
ニコルはガレージからR32スカイラインGTRを出して、ミヤビお嬢様をエスコートする。ニコルとミヤビお嬢様はシートベルトをして、出発した。
「小金持ちを蹴散らすわよ。ニコル」
「御意」
ニコルの車の後を2トントラックが着いてきている。福富家所有の車だ。ミヤビお嬢様の誕生日プレゼントを運んできている。
そして、ニコルとミヤビお嬢様は、古びたガソリンスタンド風のギャンブル場に着く。
場所にはタツヤとその関係者が居た。マイケルはまだ来ていない。