004(孤児だったニコル)
福富カンサイは豪快な人だ。正にカジノ王。腕力と知力に優れ、身内にも他人にも優しく厳しい。孤児だったニコルを一人前の従者に育て上げた。そんなカンサイを、ミヤビお嬢様もニコルも尊敬している。
ミヤビお嬢様はニコルを従え、福富カンサイが手掛けるカジノホテル、マードックのカジノホールに入る。カンサイはペントハウスに帰った。ミヤビお嬢様はプレゼントに期待してる。
ミヤビお嬢様はスロットマシンの椅子に座り、電子マネーで500円を賭けて遊ぶ。
カジノホテル、マードックは盛っている。ベガスシティ1位2位を争うくらいに。
「ニコルもやりなさい」
「弱りましたね。腕時計型ウェアラブル端末をメイドルームに忘れてしまいまして」
「ベガスシティでウェアラブル端末を持ってないのは、従者かスッカラカンよ。って、ニコルは従者だったわね」
日本でギャンブルが認められている地区、ベガスシティは入場に1万円を支払い、腕時計型ウェアラブル端末を借りる。それに電子マネーをチャージして、ベガスシティの各アクティビティに遣う事ができる。ベガスシティの住民は、電子マネー、SNS、メール、通話に使えるウェアラブル端末を無料で支給されていた。ミヤビお嬢様は携帯電話を愛用している。
「私は、賭け事が苦手でして」
「何言ってるの。ニコルはネット対戦ゲームでバカ勝ちして、稼ぎまくってるじゃないの」
「私の唯一の趣味兼副業です」
ピカピカ! ミヤビお嬢様が軽く当てたようだ。
「500円が8万円になったわ。帰りましょ」
「御意」
もう薄暗い。ニコルは車の助手席を開けて、エスコートする。カジノホテルに横付けされたR32スカイラインGTR。カメラ小僧が、携帯電話のカメラ機能でパシャパシャと撮っていた。
「坊や、パパラッチなの?」
「違います! 近くで轢き逃げがあったから、警察に協力しようと。それにしても凄い車です」
「少年、好きなだけ撮るといい」
「ありがとうございます!」
ニコルとミヤビお嬢様はシートベルトをして、ニコルはエンジンをかけ、発進させる。
「この車ってそんなに価値があるの?」
「お嬢様、マニア垂涎の代物です」
「私は車には疎い。でもこの車は好きよ」
「ありがとうございます」
「明日は忙しくなるわよ。最高の誕生日にしてやるわ」
ニコルの運転で、ミヤビお嬢様は福富家に帰ってきた。