036(ニコル、大人、5歳)
意外にも、ショウの戦績はランクSだった。10万キル9000ダイ。強い。
「私と稲葉さんとゼータ。ニコルとキンキお兄様とショウの2チームに別れて、模擬戦ね」
ニコル達は装備を確認する。ステージは軍艦島だ。時間は10分。
『3、2、1、スタート!』
ニコルは、スナイパーライフルを構えて、突撃したキンキを援護する。ショウも突撃した。
ミヤビお嬢様も突撃してくる。両手にアサルトライフルを持って。前線は乱打戦になった。
ニコルは狙撃ポイントを転々として、キンキとショウをフォローする。ミヤビお嬢様と稲葉はキルできるが、ゼータには1発も当てれない。スパーン! ニコルは、ゼータにキルされた。狙撃だ。
――模擬戦が終わった。チームニコルとチームミヤビお嬢様は、15キル対25キル。やはり、ゼータが居るか居ないかだけで戦局は大きく変わる。6人はステージに残り、感想戦をする。
「ゼータ、強すぎ! スタメン固定ね」
「分かった。ニコルもスタメンにしてくれ。強い」
「恐縮です」
「じゃあ、ショウとキンキお兄様が、控えになってもらうわ」
6人全員は納得して、フィールドに戻る。
「じゃあ、俺は一旦ログアウトするよ」
「稲葉さん、待って」
「どうした、ミヤビちゃん」
「リアルではどこに居るの?」
「今、軽井沢の別荘からログインしてる。今日中にベガスシティのマードックへ移るよ」
「来たら、連絡してね。ディナーでも一緒に」
「分かった。楽しみにしてるよ」
ミヤビお嬢様はターゲットを絞る。飢えたハイエナのように。
キンキ以外は皆、ログアウトする。キンキはまた武者修行をやる。
ニコルはメイドルームで向精神薬を2錠飲み、福富家のバーへ行く。
従者の1人がバーテンダーを務める。ニコルの先輩で年配の使用人だ。
「ニコルは非番だね? 何を飲む?」
「サンドイッチとウイスキーをロックでお願いします」
ニコルはサンドイッチをかじり、ウイスキーを飲む。
「ニコルは幾つになった?」
「5歳ですよ」
「またか…………20代半ばだろ」
「閏年の2月29日生まれなんで、正確には5歳。数え年で25年です」
「それなら、25歳と言ってくれ。紛らわしい」
ニコルが2月29日生まれというのは、会話のネタだ。