003(プレゼント)
「悔しいけど、熱くなったら負けよ? ベガスシティに暮らしていれば、分かるでしょう」
ニコルはタツヤの指の痕に気付く。
「お二方、第2回戦を要請する」
「あんちゃん、何度やっても結果は明白だ。スリーオブアカインドで尻尾を振ったメス犬じゃ」
「次は、それぞれの個人資産がどれだけ集まるか、勝負しましょう。ちょっとダーティですが、勝ったら資産総取りという事で」
タツヤは悩んだ。IT企業を立ち上げて軌道に載せたものの、開発したアプリは今や下火。カネが要る。だからこそ、ベガスシティで一発逆転を狙っている。
マイケルという白人男性は乗り気だ。余程の自信があるのだろう。
「俺はやってやるぜ」
「私もやろう」
ミヤビお嬢様はニコルの提案に困惑していた。いつものニコルじゃない。いつもは安全を第一に考えて動くのに。しかし。
「分かったわ、私もやる。面白そうね」
「では明日、またこの場所で勝負です。お三方、いいですね?」
「福富家のお嬢様の個人財産は頂きだぜ。逃げるなよ? ギャラリーがこれだけ居るんだ。お前らが証人な」
観客は大ブーイングだ。
ミヤビお嬢様は席を立つ。ニコルは先にR32スカイラインGTRに回り、助手席のドアを開けて、エスコートする。それから、ニコルは運転席に座る。
「明日が、楽しみだわ。ニコル、大伯父様の邸宅へ向かってちょうだい」
「御意」
ニコルはエンジンをかけて、シートベルトをし、発進させる。
「ミヤビお嬢様の大伯父、福富カンサイ様の邸宅まで近道しますか?」
「急がなくていいわ」
ミヤビはニコルの真意を探ろうと質問するが、のらりくらりと交わされる。
ミヤビお嬢様の大伯父、福富カンサイはベガスシティの西区にある。カジノホテルのペントハウスだ。福富本家で、福富家の富は全てここから始まった。
カンサイが、カジノホテルのエントランスで待っていた。ニコルとミヤビお嬢様は車を降りる。
「ミヤビ〜、久しぶりじゃな。ニコル、いつも迷惑をかけて済まんな」
「大伯父様、お久しぶりです」
「いえいえ、仕事ですから」
「ミヤビ。明日が、お前の誕生日だな。プレゼントを用意してあるぞ。楽しみに待っておれ」
「ありがとう、大伯父様。呼び出した理由はそれ?」
「そうじゃよ。デッカイ大輪の花火じゃ」