002(三竦みの戦い)
ガソリンスタンド風な建物は異様な光景だった。ポーカーで金銭を賭けて、20代後半の男が一人勝ちを続けていた。ニコルは反応する。この男は…………。
「お〜い、また勝ちだ。弱すぎるぜ、アンタら」
ニコルはミヤビお嬢様を制止するが、センターのポーカーテーブルの椅子に座ってしまった。
「上限の110万円を賭けるわ」
「お嬢様……!」
「ほう、もしかして福富家のお嬢様? フッ、俺とサシでやるか?」
男は鼻で笑う。すると、中年の白人男性も座った。
「私も一枚噛ませてもらおう」
「カネはあるのか? オッサン」
「110万円だね。あるよ」
白人は札束をドスッとテーブルの真ん中に置いた。
「お二人さん、私に勝てるかしら。私は福富家のミヤビよ」
「私はマイケルだ」
「俺はタツヤ。IT企業の社長をやってる」
周りのプレーヤー達はヒートアップする。
「ミヤビお嬢様! 仇を取ってください!」
「やっちまえ、お嬢様」
「ワシの年金を取り戻してくれ!」
老若男女のギャラリーがミヤビお嬢様の勝利を願っている。
――三つ巴の戦いが始まった。ミヤビお嬢様が仮親だ。ミヤビお嬢様は、52枚のカードをよくシャッフルする。ミヤビお嬢様はベガスシティ産まれ、ベガスシティ育ち。手慣れた手付きでカードを切った。左回りにカードを配っていく。タツヤの手元にJが来た。親はタツヤに決まった。
タツヤはカードを回収して、シャッフルする。そして、テーブルの真ん中、ボードと呼ばれる所に5枚のカードを並べる。残り47枚からプレーヤーのタツヤ自身から左回りに2枚ずつ、マイケル、ミヤビお嬢様にと合計6枚の手札をカードを配る。
ボードには左から、ハートのエース、クラブのエース、クラブの6、ダイヤのK、スペードの9だ。
ニコルはミヤビお嬢様の手札を見る。ダイヤの9とハートの9。スリーオブアカインドが出来上がってる。
「ニコル、どう思う?」
「そうですね〜……」
「ちょっと待ちな、福富家のお嬢様。部外者と相談はなしだ」
「分かってるわ。ストップ」
ミヤビお嬢様は勝負に出る。公算は十分あるからだ。
マイケルの手札はクラブのクラブの7、ダイヤのQ。ブタだ。
タツヤの手札はスペードのエース、ダイヤのエース。フォーオブアカインドだ。
「帰るわよ、ニコル」
「お待ちください。第2回戦をしましょう」