012(特別扱い)
ニコルは必死に状況説明をする。状況証拠だけではないかと。しかも、観客なら誰でもお酒が飲めるシチュエーションだったと。
しかし、ミヤビお嬢様は警察署へ連行されてしまった。他の被疑者は自室待機を命令される。
ニコルはミヤビお嬢様と一緒にパトカーに乗り、従者としての務めを果たす。
取調室でミヤビお嬢様は糾弾される。対応してるのは、上司に頭を叩かれた新米刑事だ。ニコルも同席して、ミヤビお嬢様をフォローする。
「よくも、僕に恥をかかせてくれたね? 金持ちだか、お嬢様だか知らないが、人を殺したら牢屋に入るのは当たり前だよねえ」
「お嬢様が殺したという直接証拠は?」
「ないよ、そんなもん」
「まあ、働き蟻は消耗品だから、交換が必要ね」
「ナメるなよ、お嬢ちゃん」
「あなた、名前は?」
「自白したら教えてやるよ」
「事件に協力してあげようとしてるのに話にならないわ。ニコル、帰るわよ」
「御意」
ミヤビお嬢様は席を立つと、新米刑事が立ちはだかる。
「帰す訳ねえだろ」
「退いてもらいますよ、お巡りさん」
ニコルが2人の間に入り、新米刑事の手首を捻る。腕を背中に回し、肩の関節をきめる。
「イタタタタ! 公務執行妨害で逮捕だ!」
ウィーンと取調室のドアが開く。上司の刑事が入ってきた。
「すみません! 福富家のお嬢様。部下がまた無礼を働いたようで」
「先輩! 金持ちだからって何でも許されるんですか!?」
「ああ、そうだよ。特別扱いだ。杉山、お前には10年早い事案だったな」
「ご苦労様。さあ、今度こそ帰るわよ、ニコル」
「御意」
「お待ちください! 特にニコルさん」
ニコルは新米刑事の杉山をサブミッションから解放してやると、走って逃げていった。
「何でしょうか?」
「自他殺不明の事案。福富家の従者としてどう視てますか?」
ニコルはまず、ミヤビお嬢様を自宅に帰してもらうように、お願いをする。しかし、ミヤビお嬢様は事件に横やりを入れたくてウズウズしていた。
ニコルと二十歳のお嬢様は、またパトカーでボディービル大会の会場へ戻る。
ニコルは理解ある刑事、鮫島に被疑者不明で各被疑者の自供さえ取れれば、事件は解決すると言った。そのためには、ミヤビお嬢様に仮の被疑者になってもらうしかない。
ミヤビお嬢様はノリノリで引き受けてくれた。