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4話:冒険者になりました。

ここから短編の第二部です。

 今私は森の奥で魔物と対峙していた。


「フレア!」


 私の魔法でオーガが倒れる。オーガと言うのはデカい鬼のような魔物のことで駆け出し程度じゃ相手にならないぐらいには強い。


 「凄い……」

 「終わりですね、あとは素材回収して戻りますよ」

 「あ、はい」


 冒険者になり三か月が経ったが今のは昇級試験。これで私のランクはBランクへと上がった。

 ランクはEからスタートで一番上はS。三か月でここまで昇りつめたのは、私の実力があれば当然のこと。昇級試験はそんなすぐに受けれるものではないが、私の学校時代の実績と校長先生のツテで早いペースで試験を受けさせてもらっているのだ。


 「凄いですね~突如現れた彗星の魔女スターウィッチなんて言われることはありますよ~」


 素材を回収しているギルド職員が話しかけてくる。Bランクのアニマだ。


 「フフッ、これぐらいは当然よ」


 正直Sランクレベルだと自分は自負しているが、Sになるには強さだけでは駄目なので色々と実績を作る必要がある。Sランクは数えるほどしかおらず、貴族や王族ですら敬意を払うぐらいだ。というのもSランクになった時点で、ギルドの上の職につくし素行に問題のある者は基本的にはなれないからだ。


 「Aランクに昇格する為の試験の大まかな日程も組んでおきますね~」

 「お願いね~」


 私の身分や立場からして組むパーティは限定されてしまっており、このアニマは私の良きパーティ仲間だ。


 「なんかずるいです~」


 アニマがジトっとこちらを見る。


 「何が?」

 「だってアンナさん綺麗で強くて優しい完璧超人なんだもん~嫉妬通り越して天上の存在だし」

 「フフッ、私はそんなんじゃないわ~私より強い人なんてたくさんいるだろうし」

 「何言ってるんですか~アンナさん私が知る中では一番ですよ~」


 前世の魔法学校には校長と主席の二人以外は、星一つ簡単に滅ぼすようなのはいなかったけど三席だった男は人間として最強と呼べる奴だった。私がどんなに努力をしても追いつかない……人間として最強を名乗るならあの男ぐらいの力がないと駄目だ。


 「世界は広いわよ~」


 ギルドに帰ると酒場にいる男達がこちらに来る。


 「おおっアンナか~試験は合格したか?」


 声をかけてくるのはBランクのバルカス、奥さんには頭が上がらない凶漢な男だ。


 「ええ、これであなたに追いついたわ~」

 「ハハッ、早いな~まぁ当然だな」


 バルカスは私がギルドに来た一番最初に突っかかってきたが、決闘であっさり倒すと私を認めてくれた。その後はまとめ役でもあった彼が、私を変な目で見る奴らの取り締まってくれた。今では大きく信頼を寄せているうちの一人だ。


 「みんな、我らがアンナがBランクになったぞ!未来のSランクに乾杯だ!」


 バルカスの掛け声と共にみんなが声をあげ拍手が響き渡る。


 「フフッ、みんなありがとう~これからもよろしくお願いします」


 頭を軽く下げるとみんなから応援の声が聞こえる。最初は貴族というので尖った感じで接してくるのが多かったけど、自ら酒の席に入り話をして打ち解けたのだ。

 貴族と違って変なプライドがないから話しやすいし、やはりこっちの道に進んでよかったとしみじみ思う。


 「アンナさん、ギルマスのとこに報告いこうか~」

 「ええ」


 ギルドマスターをしているAランク冒険者のヴィクターに報告し、正式にBランクとなった。


 「これからも頼むぞい」

 「ええ、任せてください」

 「それとこれから学校の方にいく予定はあるかい?」

 「はい、今日は講義があるので」

 「ならこれを校長の奴に頼む」

 「了解したわ」


 封書を渡されたので受け取る。

 確か二人は古き友だったわね。校長も若い頃はそこそこ強かったなんて聞いてるし。



 ◇



 「アンナさん~」

 「あらカリム」


 三つ下の後輩で男爵家のカリムだ。私が教えている生徒の一人で私のお気に入りだ。


 「ヘヘッ、今日もお出迎えです」

 「フフッ、いつもありがとう」


 カリムは私のことが大好きで、私も半ばその気持ちに応えているのでこういう関係だ。私とデートをするために日々鍛錬をしている。


 「今日こそアンナさんから一本とって念願のデートを……」

 「フフッ、どうかしらね~」


 まぁそろそろ加減をなんて思うのだが負けるのも癪だ。頑張りを見てデートでもしてあげようかなんて思っている。


 「先に校長室に用があるの、ちょっと寄って来るわね」

 「はい、では教室でお待ちしております」


 カリムと一時別れ校長室に向かい中に入ると、かつての同級生で王国魔法師団主席入団したプリムがいた。


 「ア、アンナ……」

 「あらプリムじゃない、どうしたのかしら?」

 「わ、私は校長先生に卒業生であり、現役魔法師団主席入団者として講演を頼まれここに来たのですわ」


 そういえば卒業式で必死に自分が主席入団だっての強調していたわね。


 「そうだったのね~」

 「ふん、いつかあなたをぎゃふんと言わせてあげますわ。なんなら今パワーアップした私の力を……」

 「フフン~私はいつでもオーケーよ~」


 シャドーボクシングをプリムに見せつける。


 「い、今はまだ辞めておきますわ~」

 「フフッ、まだあんたが偉そうな口叩くのが早いわね~」


 プリムは悔しそうな顔でこちらを見るがこれでも関係は随分マシになったものだ。というのも一月前、魔法師団のメンバーが私に教えを請いたいというので同級生のプリムがその交渉役となったのだ。プリムは最初決闘をして、負けたら奴隷のようにこき使うとかほざいたのでボコボコにすると事情を話した。断ったら泣きついてきたので仕方なく受けたのだ。

 出向いて教えている時は、真剣に教えを乞いてきたので教えてあげると、あなたって実はいい人なんて言うものだからきつくシメた。


 「ムキッ、またあなたに教えてもらってリベンジしますから覚えてなさい!」


 いや、そこ私に教わらないでリベンジしなさいよ……

 プリムがそのまま校長室を出ると校長がそれを見て笑う。


 「仲良くなったのう~」

 「いやどこがですか?」

 「前に比べたら遥かにそう思うぞい。まぁ奴もやっと認めることができるようになったということじゃのう~それで何か用かな?」

 「これをヴィクターさんから」


 手紙を渡すと校長はそれを黙読する。険しい顔を見せるあたりあまりいい話ではないのだろう。


 「ふむ、取り合えずありがとう。ヴィクターには連絡は早めにと伝えてくれないか?」

 「わかりました」


 校長室を出てそのままカリム達高等部一年生に講義をする。前より私に質問してくれる生徒が増えて凄く嬉しい。カリムだけは面白くなさそうな顔だけど、そんなカリムにはデートをちらつかせて頑張らせている。


 「アンナさんの実戦講義もできれば欲しいです!」

 「そうね……校長から要望があったわ」


 ここでの講義も不定期になりがちだ。週一は確保して教えているが、これ以上コマを増やすとキツイのも事実。いつも自分の講義は午後の一番最後のコマにして、講義後少し残って実技も教えているのだ。


 「是非お願いします!」


 みんなからそんな感じで嬉しいけど中々難しい。教員の為の教育や、教え方なんかも私のを伝授しているが中々浸透しないのも現状なのだ。もう何年もそのやり方で教えていると新しい方法を覚えるのが難しいのだろう。


 「ごめんね、今教員に向けて私の指導法を伝授してて、それを浸透させてる時期なの……だからそれは少し難しいわ」

 「そうですか……」

 「まぁ講義後の居残り実技訓練は今日もやるから参加する人はよろしくね!」



 ◇



 居残りの実技訓練まで終わるともう夕方前、そろそろ暗くなるかと言う時だ。


 「アンナさん!」

 「待ってたわカリム」

 「勝負しましょう!」

 「ええ」


 勝負を始める。カリムはメキメキと力をつけているし毎週の楽しみだ。


 「行きますよ!」


 呪文を唱え始めた。


 「アクアハリケーン!」


 いきなり第五位階魔法か、腕を上げたわね。


 「エアロバースト!」


 同じ第五位階だがこっちは無詠唱、この世界のこの時代の魔法レべルだが、無詠唱に関しては壊滅的に酷い。特に第四からの無詠唱はほぼいないといっていい。


 「サンダーショック!」


 第三位階魔法だ、カリムもやっとこのレベルの無詠唱は習得してくれたのだ。


 「上達したじゃない~」

 「アンナさんのハートを射止めて結婚するためですからね!」


 全く真顔でそんなこと言われると恥ずかしいわね。でもそんなカリムの純粋な気持ちは凄く嬉しい。


 「フフン~そんなこと言って私を動揺させようたって無駄よ~」


 カリムの低位階の無詠唱魔法を避け間合いを詰める。


 「アイスショック!」

 「うっ……」


 倒れたカリムにそのまま乗っかると降参したのでそこで勝負はついた。


 「また駄目か……」

 「フフッ、でもいい線言ってたわ~」

 「それじゃまだまだです……」


 ムスッとするカリムの手を引っ張り上げる、少しご褒美をあげるとするか。


 「ねぇカリム、明日私オフだからデートしましょう」

 「えっ……」

 「待ち合わせは……」

 「ちょっ……ちょっと待ってください!」

 「何で?」

 「いいんですか?だってデートはアンナさんから一本取ったらって……」


 顔を真っ赤にしているカリムは相変わらず可愛いものだ。


 「ええ、それともデートしたくない?」

 「し、したいです!お願いします!」

 「よろしい、それじゃあ明日の朝にこの学校の門の前にしましょう」

 「は、はい!」


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