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1話:婚約破棄

ども~

短編をちまちま書くより連載版で書こうと思い投稿しました。

 私は不幸だ……なんでそんな不幸かと思うと私は一度死んだ時の前世の記憶があるからだ。

 私の名はアンナ・ヴィルヘルム、子爵家の令嬢だ。

 亜麻色の長い髪にパッチリとした目、ピンク色の唇……私は自分でも美しい方だと自負している。

 そんな私は前世でも貴族の令嬢でそれなりにモテていたが、同級生で最強の魔導士と呼ばれた人を怒らせた。

 原因の詳細は省くが、その魔導士はそれがきっかけで世界を滅ぼした。私はその原因を作ったことのバツとして、直接的かつむごい死にかたをした。

 それだけならまだしもその記憶や痛みや来世に引き継ぐという呪いをかけられ転生した。

 しばしば見る悪夢はその男に殺された時の夢だ。私はその件については、悪いことをしたというのを心の底から実感していない。なぜならそれをしたことで起こった悲劇も、それによって男が世界を滅ぼすなどとは夢にも思わなかったからだ。


 「そ、そんなことがあっていいのですか!?」


 私は唖然とした、今私は婚約していた伯爵家の一人息子との婚約が破棄になったのを知らされたのだ。

 最初に会ったのは七年前、私が十一歳の時だ。

 美形で将来を約束されたような人で、私自身若い時から苦い記憶と戦ってきただけに凄く嬉しかった。何度も会いキスもしたし将来を約束した。仲は良好だったと思うだけにその理由が信じられなかった。


 「ああ……今先方から連絡がきたんだ……」


 父のカール・ヴィルヘルムが申し訳なさそうな声で言う。


 「私はジムと愛し合ってました!将来も約束していましたしこれは何かの間違いじゃないのですか!」

 「ざ、残念ながら本当なんだ……ジム君はシャンデリラ伯爵の令嬢と子供を作ってしまったみたいなんだ……」


 ジムは一体何を……この私というのがいながら別の女に手を出していたというの……


 「これはジム君から届いた手紙だ……」

 「貸して!」


 中を見るとジムの字で書かれた物だった。

 内容は要約するとこうだ。君のことは好いていたけど君と出会う前からずっと恋焦がれていた者がいて、そっちの方も器用に進めてて子供作ったと……なるべく私を傷つけないようにか変に配慮されたその文は私を余計に苛立たせた。

 

 「ふざけないで!この……このっ!」


 手紙をくしゃくしゃにして破り捨てる。

 ジムは言うならばたた二股野郎……私の純情を弄んだクズ……キスまでして今度を君を奪いにいくなんてそれっぽい発言までしていただけに私の怒りは収まらず、今なお体の中で燃え続けている。

 前世でも酷い死に方して今もこの有様……一体私はどれだけバツを受ければいい……


 「抑えてアンナ……気持ちは凄くわかるわ……」


 母のメロームが私を必死に宥める。こんな惨めな思いをした娘を見たくはなかっただろう。

 私も悲しい……昨日までは幸せ一杯の私とそれを祝福する父と母がいた。だが今は惨めな私とそれを慰める父と母に転換したのだ。


 「しばらく学校を休んでもいいわ……今はあなたが自身を保つことが大事だから……」

 「そ、そうだ……わしもいい相手を探すから……」


 ジム以上の相手はそう簡単にみつからない……うちは子爵家だけに身分の高い家の相手を見繕うのは中々に難しい。

 ああ絶望だ……学校では魔法が低レベルな今の世の中に合わせて周りに合わせているので、とても退屈な日々を送っていた。

 楽しみはジムと何かしらのやり取りをすることだった。だがそのやり取りをすることはもうない。するつもりがないというのが正しい……とにかくそういう心情だった。


 

 ◇



 今日は寝る前からとても嫌な予感がしたがそれは嫌な形で的中した。街全てを氷付けにしたあの男がこちらを見ている。


 「何故こうなったか……お前は理解していないのかもしれないな……」


 まただ……怒り狂うこの男が私を匿った者達全員の命を奪い私に迫る。


 「お前を殺したところで前のような日々は戻らない……お前を殺すのは私のエゴ……俺をこれ以上暴れさせない為にもその命を刈り取らせてもらおう!」


 この後表現できないほどの苦痛を味わい呪いをかけさせられた。何度も見ても慣れることができない。そんな私の呪いだ。



 ◇



 あの悪夢が明け、目が覚めるとすっかりジムへの未練は消えていた。ただ自身の想いを踏みにじった怒りと悲しみは残っていた。


 「おはようございます」

 「お、おはよう」

 「おはようアンナ」


 心配そうな父と母が精いっぱいの笑顔を向けてくれたのがただ痛い。だがもう踏ん切りはついた。


 「そんな顔をしなくても大丈夫ですわ。学校も行きますわ~」

 「大丈夫なのか?」

 「ええ、いつまでもクヨクヨしてはいけませんわ」


 まだ完全に立ち直ったわけではないけど、いつまでも二人に心配をかけるわけにはいかない。

 食事を済ませ馬車に乗る。ジムにはお幸せにって言っておけばいい。

私は家から馬車で十分圏内のところにあるルナール魔法学校に通っている。魔法成績は真ん中ぐらいを装っている。というのも私のいた前世と同じ世界かも疑問なぐらいに魔法のレベルが下がっているわけだが、あまり強いとこを見せるのは得策ではない……結婚に響くからだ。

貴族の間では女性は女性らしくというので自身より強い女性とは婚約を結ぶ男性はいないからだ。私の強さを見せれば誰も貰い手がいなくなってしまうだろう。


「頑張れ私……捨てる神あれば拾う神ありよ……」


前世で私を殺したあの男が私にいった言葉だ……あの男の言葉ということがなければ好きな言葉ランキングトップ五に入るだろう。

 校内に入るとまず気になったのは私への視線だった……貴族たちは噂好きの下賤な生き物、私の婚約破棄のことも知っているのだろう。

 笑いたきゃ好きなだけ笑えばいい……私はそんなことじゃ決して折れない。


 「おはようございますわ~」

 

 教室に入ると私を見てクスクス笑う声が聞こえてきた。それを無視して席に座るとクラスメイトのマーレが話しかけてくる。


 「おはようアンナ、取られた気分はどうかしら?」

 「噂が早いのね、なにか用かしら?」

 「あなたが今どういう心境なのか聞きたくて~」


 うるさい虫だこと……虫は無視するのが安定ね。


 「別に普通ですわ、つまらない返答でごめんなさいね~」

 

 確かに昨日は悔しくて死にたいぐらいだった。でも一夜明けると未練はさっぱり消えていた。あれだけ入れ込んでいただけに悔しかったはずだがそこは自分でも不思議だ。


 「つよ~い、だけど伯爵家に捨てられたあなたは大きな後ろ盾も失ったし、その強がりもどこまで続くのかしら~」


 嫌味たらしいマーレの声を聞き心底うざかった。だが今は耐えた……こいつに今何か言ったところでなんにもならない。

 ただ惨めに見えるだけなのだから……


最初の方の話は短編で書いていたやつですが微妙に変えています。

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