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雨夜月に抱かれて 第一部 初恋編  作者: 冬鳥
2010年12月23日。愛知県西尾市の須和新汰。そして原点。始まりの過去へ。
31/40

いつまでも君のことを

@

頬を赤く染めあげる葉月の表情がオレンジ色の灯りで淡く照らされている。


悠理はこの先、生き続ける限り忘れないその一点の現実があることに気付いた。

悠理はこのときこの場所で

この世のなかで変化しない確実なるなにかを感じた。この世界で複雑に絡み合う幾重のなかにある光に包まれた一つの真実がある。葉月から渡されたキーホルダーの感触がこれからの彼にすべての希望を与えてくれることになるだろう。悠理はここにある自分の存在はきっと誰よりも幸福なのだとすら思った。このとてつもなく広い世界で葉月と出逢えたことはきっと神様の恩恵なのだと感じた。


母が頑なに信じる神様とやらはこの世界にいるのかもしれない。


悠理は生きていく静なる喜びと同時に、動なる喜びも心に生まれた。

毎日叫びたくなるような衝動のようなものすら生まれた。


僕は葉月が好きだ!


ねえ葉月。

いま君はなにをしてる?なにを思う?

寂しくない?辛くないかな。

なにがあっても必ず僕が葉月を守るから。

僕は必ず強くなるから。



悠理の初恋は永遠の恋となったのだろうか。








現在の二日前。12月25日。


新潟県新発田市。


彼が乗る車は動きだすことなく新発田市の街中に留まっていた。全身を包み込むのはデジャブの香りというべきか、決してこれは心地良いものではない。たえず吐き気を誘う香りといえるのだろう、彼はこの不快感から解放されるべくゆっくりと左腕を伸ばしダッシュボードを開けた。なかにあるのは布に包まれた物だった。


僕は馬鹿だ


彼は自嘲気味に笑ってみせる。


まだこれを肌身離さずもっているのだ。自分が壊れてしまいそうになったときにこれを手のひらに乗せることが救いとなる現実世界!

僕はまだあの人を深く思い続けているのだ、それはもう浮き上がることは絶対にできない深海にいるのだ。

もう一度あの人が見たい、その願いだけを抱きこうして僕は死人となり待ち続けている。

ほんと馬鹿だと思う。


これは…このキーホルダーは自らを戒める物でもあり奮い立たせるものでもあるのか。


あれからどれだけの年月が経ったのだろう

いますべてを偽り続ける自分がいる。 

長い年月によって色褪せてしまった五重塔のキーホルダーを握りしめる掌はただただ冷たかった。


君は僕のなかにずっといる。


頬にあてる。

ひんやりとする感覚が失せていく。

自分を拒絶する冷たさ。

弱さを嘲笑う


僕は動くよ。



彼はキーホルダーを布に入れて再びダッシュボードにいれた。

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