通勤ラッシュの貧乳巨乳論争
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
電車は進む、時は進む、成長は進んでいく……。
朝という憂鬱な日を浴びながら、目のクマですら化粧の一種と言わざるおえないのが、社畜の姿かもしれない。欠伸一つ余裕でつける満員電車の中、工藤友こと、友ちゃんは会社へ向かう。
満員電車の苦労さなど、社畜にとってはなんのその。似た者同士が隣にいりゃあ、どこも同じだって諦めがやってくるさ。
だが、どうしても友ちゃんにとって許せない存在がいる。途中の駅でよく乗車してくる……
「くっ……」
女子高生、女子中学生、女子大生……などなど。自分だって、そうして時を使ってこの社畜となった人だ。そーいうのに未練がないってわけじゃないが、また無邪気に夢を持つ少女に戻りたいときはあるさ。
そんなこともある。しかし、それは2割程度で8割は別のことである。屈辱と敗北感を、若さ誇れるこの時代で抱いてしまうものがある。
満員電車、押し寄せる人の波で伝わる、
さ、さ、最近の子は、胸の発育がいいんだね……。
ギュ~~ッて、押し固められた満員電車で伝わる、同性からの柔らかい感触。その割に自分はペタンッとしたもんが相手に伝わって、女?みたいな反応すらもない。悪いとも思っていない、当たってんだよ状態なのにだ。
そんなときだ。そーいう時だ。
「ちょっと!どこ触ってるの!」
「え?」
女子高生がいきなり、友ちゃんの手首をつかんだ。
「お尻触ったでしょ!痴漢め!」
「はぁ!?」
当然ながら。ハッキリと言うが、友ちゃんは女性である。ちょっと顔付きが男っぽくて胸がまったくないから、男装したらまったく気付かないだろうが。女性なのだ。
もう一つ先の駅で降りる予定なのに、痴漢だと訴えてきた女子高生のせいで降ろされる友ちゃん。
「駅員さん!この男、私のお尻を触ったんです!」
「違うって!ただ当たっただけでしょ!!」
やられたという気持ちがあって、冷静じゃなかった。この女子高生。名は御子柴。友ちゃんがよく見てみると、この御子柴。ずいぶんと短いスカートを履いて、自分には大人っぽさに、極め付けの巨乳という。嫉妬と怒りが増しそうな容姿を持っていた。
「つーかねっ!あたしは女だ!!」
「はぁっ!?」
痴漢するのは男だろ!普通!そんな常識を叫んだ!そして、自分は一体何を言っているんだ!って超、屈辱を味わった。対応した駅員さんもポカーンとした表情をするんじゃない。
そして、極め付け
「乗っていたのは女性専用車両じゃない!!」
どうしてそこに男が乗っている!?間違えたくらいしかありえないし!なんで男と勘違いする。
「……………」
御子柴は手で口元を抑え、4秒ほど考える。この間がすっごくムカついた友ちゃん。よく見たら、胸がちょっとふっくらしてるとか考えてるとか?あ?この巨乳は
「そうね、確かにそうだった」
信じてねぇ表情で自分のミスを言うんじゃねぇ!!
「ズボン履いてたから男に見えました!」
御子柴のこの時の感情。めっちゃ恥ずかしかった。超勘違いしてしまった。
しかし、その感情から2秒後、こんな貧乳とボーイッシュな女性がいること事態がオカシイと神に訴えたいし、本人に言ってやりたかった。なんてクズな女……。
どんな言葉を受けても、友ちゃんにとっては侮辱罪に等しいものだ。朝のイライラも相まって、御子柴に叫んだ。
「調子に乗ってんな!!間違えたら謝罪だろ!!」
対応している駅員は、まるでウチの上司が怒った時と重ねた。この人、ホントに女なのかな!?
「あたしは急いでるの!勝手に痴漢扱いするせいで、また電車に飛び込まなきゃいけないでしょ!!」
「ごめんなさい!これでいいでしょ!!」
御子柴だって、友ちゃんと同じである。痴漢されたと思ったから電車から降りてしまった。
しかし、友ちゃんはこの御子柴の態度及び、羨ましい胸に物凄い嫉妬を抱き、暴言を吐いた。
「お前等のその乳!デカいから満員電車だと邪魔なのよ!」
「がっ……」
「ぶっ……」
「痴漢されたくねぇーんだったら、スカート履くな!ジャージで出勤しろ!パンツ見せたい思考でミニスカにするな!!パンツとスパッツを常備しな!」
この人、ホントに女性かな!?
しかし、御子柴も友ちゃんの言葉にヒートアップは議題は、やっぱり、胸だ!!
「あんたのペタンコ胸はクッションの役目になってないのよ!固くて固くて、ぶつかると痛いくらいよ!!」
言い過ぎだろ!
「バーカ!スマートな胸の方が収納スペースが多くて、多くの人を乗せられるのよ!脂肪を切り落としてこい!電車だって脂肪分重くて辛いはずよ!!」
「私が乗っていたのは女性専用車両です!!貧乳は色気の欠片もないんだから、どこに乗っても変わらないんだから、女性専用車両に乗るな!!女性専用車両だって満員だから!」
「色気は胸だけじゃありませーん!若い女子高生は頭の中、お花畑ですねーー!女性のステータスを外見で決める男なんか付き合わないし!お前が若いと言えるのは2年ぐらいの間よー」
「あーー!?あんた、彼氏いんの!?いるの!?ねぇ!顔も、胸も、お尻も、服も、……とても女に見えないんですけどーー!婆か男にしか見えないんですけど!」
「お前みたいな性格悪そうな奴には、彼氏はできても、結婚はできねぇしー!ちなみに彼氏はいましたーーー!残念ですねーー!」
「か、過去形!?セフレ的な、アレをカウントです!?」
早朝の言い合い。色々な人がいる中、こんな会話をしていて恥ずかしくないのか。この2人……。
「よく考えなさい!!世間はね、便利なものほど小さく、薄くなるの!あんたが持ってるケータイ!電車も装甲が薄くなってるし!バスだってスッキリした構造になって、人を乗せやすいようにしてるの!!物がそう変わっているからこそ、人だって価値は小さいものほどに輝きを抱くの!!」
友ちゃん、熱弁。
「貧乳ブームは必ず来るのよ!!胸サイズを調整できる代物が発明されたら、巨乳から貧乳はできないだろうけどね!!貧乳から巨乳なんて余裕だしー!」
「はっ!?そんなのできるの!?恥ずかしくて作ってるの!?」
「貧乳の夢じゃなくて、胸を愛する男達の夢よ!!貧乳好きなのが多いだけ!それにね!」
馬鹿じゃないってくらい、貧乳を好意的に正当化する宣誓。
「好きな人の好みに合わせて胸を調整する!!男が持つ理想であり、それが貧乳にある可能性よ!!!貧乳をバカにすんな、巨乳女!!」
アホだ、こいつ、アホだ。
御子柴。あまりの発言に巨乳代表(仮)として、言葉を失いかける。
しかし、
「俺は細工された胸に興味は抱けねぇっす」
心もとない駅員さんの発言に、友ちゃん。御子柴に対する怒りを駅員に暴力という形でぶつけ、この場を丸く収めるのであった。
当然だが、社畜だから会社には遅刻しなかった。