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PHOENIX SAGA  作者: 鷹野霞
プロローグ
9/494

辿り着く先

 ディール大陸の北東の果てに、コロンビア半島という地域がある。

 命名は第二紀に探索を行ってこの地を見つけたプレイヤーで、由来は明白。大陸東側面からにょきっと伸びた半島が、北方に向けて高々と伸びているさまがガッツポーズに見えたためである。

 由来を知らないNPCですら、『力こぶ半島』と言われれば大体は通じる。


 王都のある南方海岸線の正反対、ド田舎中のド田舎といえるほど大陸の端に位置し、特徴的な形状をしているコロンビア半島だが、内容的にもこれ以上はないほどの特徴を二つ有している。


 一つは半島のさらに北部、いわば前腕部中央以北が、未だ人間の支配の及んでない未開地であり―――大陸で3か所しかない、ドラゴンの棲み処であるという点。

 彼らは半島の手首部分にある活火山に居を構え、王者として君臨してきた。彼らの主食は山麓に棲む魔物や人間の飼育する家畜、あるいは人間そのもので、ことあるたびにドラゴンと人間は衝突を繰り返してきた―――といえば聞こえはいいが、実際はドラゴンの圧倒的な火力を前に、人間たちが一方的に蹂躙されてきたという方が近い。

 この関係は第五紀初頭の征服王時代、ある契約が人間とドラゴンとの間に交わされるまで続くことになる。


 もう一つの特徴は―――これも先の話とも大きく関係するのだが―――この半島を治めるミューゼル辺境伯が、強力な竜騎士団を有しているという点である。


 竜騎士団が編成されたのはやはり第五紀初頭。ドラゴンと心を通わせる、という傍から見れば無謀としか思えない条件ゆえに、それまで一世代に数人程度だった竜騎士が、前述の契約がきっかけで数十人にまで規模を膨らませたことが設立の発端であったとされている。


 ―――本来、こういった過剰な戦力は、王朝勢力図の要所に少数ずつ配置し、各所に睨みを利かせるのがセオリーである。

 いくらドラゴンの生息地がコロンビア半島だからといって、そこに住まわせ続ける必要はない。ドラゴンたちの強靭な生命力は、好みの問題があるとしても住む場所を選ばない。言ってしまえば半島は休息や繁殖の地と割り切り、竜騎士たちを大陸各地に巡らせることもできたはずだ。


 しかし、当時の王朝はその選択肢を取らなかった。

 時の征服王が何を考えて竜騎士をひとところに纏め留めたのか、それを知る術はない。もう300年も前の話であるし、彼は理由を述べることなく若くしてこの世を去った。はるか遠く西方の砂漠に覇業を阻まれ、失意のうちに現地の疫病に蝕まれたのだ。王の理想を知るはずの当時の辺境伯ですら、沈黙を保ったまま一生を終えた。


 覇道の第五紀と歴史に記されているものの、その実態を今に残すものはあまりにも少ない。エルフやドワーフたちは己の領域に引きこもり、当事者は記録を公開したがらない。ゴブリンたちはそもそも歴史を綴ることを知らないし、リザードマンの集落には、乏しい文献に人間とエルフを罵る文言が書き散らかされているのみである。


 歴史の闇と深い雪に閉ざされ、ミューゼル辺境伯率いる竜騎士団は今なおコロンビア半島を守り続けている。



   ●



 コロンビア半島の東側、二の腕のひじ近くの辺りに、一つの村がある。


 どこにでもあるような小さな寒村だ。立地的には北西に山、南西に林、東に荒れた海。平地は乏しく農作物は自らが食べていくので精いっぱい。

 特産物は強いて言うなら近海で採れる魚や昆布。たまに見つかる真珠は臨時収入だ。

 最近は奇跡的に不作が起きていないが、もし何か災害があれば数人の犠牲者は免れない。

 特筆すべきことはない、この半島では珍しくもない、年に一度の税を払ったら余力も尽きるような村だ。


 そんな村に、ある日異変が起きた。


 時化の日だった。

 灰色に曇る空に荒れる海。海が望めるといっても漁村というわけではない。東の海は見ての通り穏やかとはいいがたい様相を年中崩さないし、沖合に現れる魔物はただの漁師の手に余る。

 申し訳程度の小さな舟を保有している数世帯が、凪の頃を見計らって網を投げに漕ぎ出す程度。よく晴れた日は素潜りで海底をさらい、沈没した商船を見つけて小遣いを稼ぐこともある。


 ―――とにかく、その日は誰も海に出ないほど時化の日だった。風も強く、昼下がりには誰もが家に引きこもるくらいに。


 はるか沖にぽつんと黒い点が見えた。高波に阻まれて見え隠れを繰り返すその黒点は、遅々としながらもだんだんと陸地に近づいているように見えた。

 ……遅々として? それは違う。あまりに遠くから見たからそう感じられただけだ。

 海岸に人がいて、黒点の様子を見ることが出来ていたら唖然としただろう。


 ―――およそ一般人に出せる速さではない。尋常でない速度で黒点は大きさを増している。


 次第にそれは陸地との距離を縮め、ようやく形を認められるほどになった。

 人間である。体格からして男であろう。やや崩れたフォームでありながら、波に負けじと猛然と水を掻き、見る間に陸地への上陸を果たしてしまった。


 肩で荒く息をつく。気息奄々、青息吐息といった様相で、今にもぽっくりと昇天してしまいそうな形相だ。身に着けている白の上下は、所々が齧られたようにぼろぼろだ。そして男が動くたびにずっちゃずっちゃと水気を帯びた音を立てる。


 一目見て疲労の極みにあるとわかる男は足を引きずりながら砂地に歩を進め、ようやく力尽きたように―――倒れなかった。


 落ち窪んだ眼をギラギラと輝かせ、すっくと仁王立ちに立ちすくんだ男の形相は異様の一言。

 そして男は大きく息を吸い込み、彼にできる精一杯の大音声で叫んで見せたのである。


「……宇喜多備前中納ご―――もとい、プレイヤーコーラル! リスポーン地点より 泳 い で ま い っガハァ―――!?」


 言い終わるまでもなく白目を剥いて昏倒したが、それは大した問題ではない。

 チュートリアルをありえない事故で省略したプレイヤーが、ようやくディール大陸に降り立ったのである。



   ●



プレイヤー名:コーラル

種族:人間   Lv:6(↑4)(未使用ポイント:8)   戦力値:99

HP:85/85(↑51)

MP:42/42(↑32)

SP:0/108(↑59)


攻撃:30(↑21)

防御:30(↑10)

技量:33(↑22)

敏捷:38(↑22)

魔力:28(↑19)

抵抗:41(↑32)

HP自動回復:2/sec(↑2)

MP自動回復:1/sec(↑1)

SP自動回復:12/sec(↑7)


水魔法:D(New)


地形特性:中庸の民


保有スキル

  フィールド:走行Lv1 水泳Lv13(↑10) 潜水Lv4(New)

        夜目Lv2(New) 

  学術:天文学Lv3(New)

  耐性:水属性耐性Lv2(New)

     酸耐性Lv1(New) 毒耐性Lv2(New) 麻痺耐性Lv4(New)

     疾病耐性Lv1(New) 耐寒Lv6(New)

     睡眠耐性Lv5(New) 渇水耐性Lv1(New) 飢餓耐性Lv2(New)

  戦闘:片手武器Lv7(New) 

     格闘Lv4(New) 噛み付きLv2(New) 

     剛体Lv2(New) 身体強化Lv1(New)

  魔法:魔力操作Lv4(New) 魔力変換Lv2(New)

     魔力感知Lv3(New)


称号:えべっさん


Exp:2

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― 新着の感想 ―
[一言] 本名の時代が古すぎるだろ… なんかの伏線なのかな
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