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PHOENIX SAGA  作者: 鷹野霞
プロローグ
6/494

悲しいマラソン

   ◆



 ―――Now Loading...

 スキルの習得は、それを行う際の環境が過酷であればあるほど得られる経験が大きく、その成長も顕著である。



   ◆



『水泳』Lv2

類別:フィールド 関連ステータス:技量 敏捷

水泳時の消費スタミナを10%軽減する

立ち泳ぎ時の消費スタミナを20%軽減する

水中での移動速度が上昇する



 リスポーンしました。現在大体四十数回目の死に戻りであります。


 普通に報告できる自分が恐ろしい。いい加減慣れたということだろうか。

 お陰様で水泳スキルが1上昇し、それに伴って技量と敏捷が1ずつ上がった。

 ……そこに至るまでにHPとSPがそれぞれ4上昇し、防御が20にまで上昇しているのですが。このままだと本当にステータスが100を超えるかもしれません。

 体感的にそろそろ次のレベルアップも近い気がする。


「なるほどねぇ……」


 先ほどまでロード画面で表示されていた文言に、誰にあてるでもなく相槌を打つ。当然泳ぎながら。

 過酷な環境下での鍛錬―――というところで心当たりがあった。今回の水泳スキル、習得がやけに早い。走行スキルの習得が4時間かかったのと比べて雲泥の差だ。

 それもそのはず、毎回毎回溺れ死ぬ地獄の扱きのごとき鍛錬である。その分得られる経験が通常の数倍だったとしても不思議ではない。

 死に戻った際HPとSPが全快し、回復時間を待つ必要がないというのも大きいだろう。


 そんなこんなで現状の俺のステータスはこんな感じだ。



   ●



プレイヤー名:コーラル

種族:人間   Lv:2(↑1)   戦力値:13

HP:34/34(↑9)

MP:10/10(↑10)

SP:59/59(↑5)


攻撃:9(↑2)

防御:20(↑12)

技量:11(↑4)

敏捷:16(↑4)

魔力:9(↑2)

抵抗:9(↑2)

SP自動回復:5/sec

地形特性:中庸の民

保有スキル:走行Lv1 水泳Lv2(New)


Exp:0


   ●



 敏捷型からタンク職への転向である。船上を駆けずり回った苦労は何だったのか。

 ……恐らく防御値の上昇は、今まで受けてきたダメージ量と関係があるのだろう。溺死が防御力とどう関係があるのか疑問だが、ダメージは受けているわけだし……


 そんなことをつらつらと考えているとSPが尽きた。

 みなさんしばらくのお別れです。さようながぼぼぼぼぼ―――



   ◆



 ―――Now Loading...

 敵を倒したところでレベルは上昇しない。レベルが上昇するのは鍛錬によってスキル・ステータスのいずれかが上昇し、それに伴って経験値を得た時である。



   ◆



 リスポーンしました。百回目から先は数えていない。

 あれからかなり時間がたったのだろう。夜が明けて朝日が眩しい。


 そして報告です。水泳スキルがLv5に到達しました。これでSP自動回復と合わせると、ちょうど消費と回復が拮抗するのか立ち泳ぎ状態でのSPの減少がみられなくなった。

 つまりこの辛く苦しい血を吐くような溺死マラソンを、俺はとうとう踏み越えたことになる。

 あとはSP自動回復量が増加するか、水泳スキルが上昇してSPの収支がプラスになるのを待って、ようやく俺はこの遥かな海へと泳ぎだすことが出来るわけだ。


 ……ちなみに方角や潮流の問題は解決していない。だって毎回死に戻って2分以内にまた死んでるんだぜ? 気にしてる暇すらねえよ。

 色々と問題は山積しているが、その一つは潰すことが出来た。次の一つだって努力次第できっと解消できるはず。


 どうだ見ろ運営! 俺はやれてるぞ! お前の卑劣な罠にもかかば―――


≪経験の蓄積により防御値が上昇しました≫

≪経験の蓄積により耐酸スキルを習得しました≫

≪スキルレベルの上昇により、抵抗値が上昇しました≫

≪レベルアップしました。任意のステータスに2ポイント加算してください≫



   ◆



 ―――Now Loading...

 この世界の生き物には戦力値が設定されている。戦闘によって経験を積む場合、彼我の戦力値差に従いボーナスあるいはペナルティが発生する。



   ◆



 リスポーンしました。決して挫けたりしない。


 ……しかしなんなんだろうね、あれ。でかい鮫だったよ。真下から丸呑みにされて海水と一緒にもみくちゃにされた後、胃酸で跡形もなくやられた。

 さっきのロード画面にもあったようによほど戦力値差が激しかったんだろう。耐酸なんて言う見たこともないスキルが生えた。


 ログで確認してみると……HAHAHA、見なよジョージ、『メガロドン』戦力値700だってよ。およそ五十倍の相手なんだからそりゃいい経験にもなるさ。


 ……初っ端の海域にいていいバケモンじゃねえだろそれ……!


 オーケー落ち着け。この問題についてはすっぱり諦めるのが一番だ。だってこんなの勝ちようがない。あれは大量の漁船と捕鯨用の銛でもって挑むべきものであって、海女さんプレイの対象にしちゃいけない。

 ここは逆に考えて、溺れる苦しみを省略して死に戻らせてくれたんだと思えばいい。ありがとうメガロドン! いつか根絶やしにしてくれる。


 それはともかく、あの別格は置いておくとして何らかの生物に襲われた際の自衛手段は欲しいところだ。


 インベントリを確認してみる。容量わずか10種類の中にあるのは、数日分の携帯食料と低品質の回復薬、そして剥ぎ取り用のナイフのみ。


 ……詰んだか? いや、まだまだ。



   ●



剥ぎ取り用ナイフ 品質:- 耐久:-

攻撃値:1

倒した生物に突き立てることで効果を発揮する。

その生物から素材を1種類得ることが出来る。



   ●



「たとえ1でも無いよりましか―――ってあ痛ァ!?」


 噛まれた。脚を。何に?

 海面を見下ろす。そこには50㎝程の大ぶりな魚が俺の脚に食らいついているところだった。

 おいおい思いっきり歯が喰い込んでるじゃないか。動脈を傷つけたのかみるみる出血して辺りの海面が赤く染まっていく。


 迷っている暇はない。インベントリからナイフを取り出し、人食い魚の腹に突き込む。へいへい痛いかお魚さんよ。腹から出てる赤い血はお前さんのかい? それとも俺から吸い取ったもの? はよう死ねや。


 十回も殴りつけたあたりで魚は絶命し、ナイフの効果で切り身となってインベントリに収まった。……人食い魚の肉を食うのはできれば最後の手段にしたい。

 けれど足の出血が止まらない。というか傷口から海水が入るたびに激痛が走る。それを示すかのようにHPが減少していき、



   ◆



 ―――Now Loading...

 スキルには複数のステータスに影響を及ぼすものがあるが、その多くは習得に多大な努力を伴う。



   ◆

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