あかるい都市計画:新たな商品を導入しよう
経済学には『代替財』という概念が存在する。わざわざこんな風に改まって説明するまでもないことだが、一応解説だけはしておこう。
代替財とは平たく言えば、ある商品に対して代替物たりえる一面を持った商品のことだ。
絹ごし豆腐に対する木綿豆腐、地下鉄に対する路線バス、カレーうどんに対するカレーパスタ。……厳密には微妙に違うけれど、これはこれで使う分には妥協できるかな――と、大まかな視点で見ればひとくくりにできてしまう。そんな性質の財のことを指す。
もちろんこれはあくまで一面的なものだ。木綿豆腐は冷奴にしづらいし、路線バスは渋滞に影響を受け、カレーパスタはそもそも好みの問題がある。というか言っておいてなんだがパスタは無いだろうパスタは。
根本的には別物であるという前提がそれぞれに微妙な差異をもたらし、それぞれの独自化にいたるのだが……それはまた別の話。
さて、話題を戻そう。
この代替財の効果だが、最も代表的なものとして『そのカテゴリの寡占性、独占性を弱める』というものがある。
ぶっちゃけた話、価格を吊り上げづらくなるというコトだ。とあるメーカーが味にあまり差異が無い食パンの値段を二倍に上げたところで、コストに見合わないと消費者に判断されれば別のメーカーの食パンに需要が移る。それを知っているからこそ食パンメーカーは不用意に価格を上げることができないという寸法である。
これは課税による価格変化にも適用される。麦に対して税を課した場合、値段が上昇した麦よりもお値打ちな米の方に需要が移り、米の値段は上がりつつ麦農家は苦渋の決断で値下げを敢行。一見関係のない食糧二品はこのように影響しあって均衡を得ることになる。
すなわち、代替財の存在は価格に対する需要の弾力性を上昇させる効果を持つわけだ。……え、弾力性って何だって? ぐぐれ。
――――さて、代替財について一通り説明を終えたところで本題に入ろう。
ここ数年の話だ。あの忌々しいカボチャ騒動が収束したのち、半島ではカボチャ栽培が推奨されるようになった。
何しろほぼ手入れ要らずの穀物で、庭に植えておけば三か月で夜中のニルンルートばりに発光し始める不思議植物である。おまけに栄養価も高く、これさえ食卓に並べておけば栄養失調と無縁でいられるときた。日々内職に励み副業に余念のない農家の皆さんが目をつけないわけがない。
道端を覗けば小柄なカボチャ、庭先を見れば中くらいのカボチャ、畑に目を向ければ大きなカボチャと、外を出歩けばカボチャを見ない日は無いほどに栽培されまくった。
村の掲示板にはカボチャ料理のレシピが貼り出され、開催されるカボチャ料理コンテスト、栽培したカボチャの大きさを競う大会までぶち上げられ、何なら全部カボチャでいいやと麦農家からカボチャ農家に転向する暴挙をかます農民まで出る始末。
世はまさに大南瓜時代。茄子とキュウリは一体どこへ、おのれパンプキン……!
…………失礼、取り乱した。
本題は……なんだっけ? あぁそうだ、代替財とカボチャの関係だった。
かくして空前のカボチャブームを巻き起こしている半島農家ではあるが、当然それによる弊害も出始めて来た。
――麦価格の下落である。
片手間で生産でき、腹持ちがよく保管が効く上に糖度が高いカボチャは、農家が日々の主食として採用するに足るポテンシャルを誇っていた。かといって片手間生産であるがゆえに主産業である麦栽培に影響が出るわけでもなし、単純にカボチャ栽培分だけ食費が浮く計算となる。
カボチャが食卓に並ぶ分、押し出されるように可処分な麦は増加するわけで。商人に売りに出して野菜や調味料その他小道具にする麦が半島全体で増加することになる。
これがいわゆるカボチャ効果――カボチャ単体ならまだしも周りの食糧まで道連れにしやがる小癪さよ。
千歯扱きだの竜肥だのを頭を捻って考案しているこちらの事情などお構いなしに、あのカボチャはこの半島に農業革命をもたらしたのだ。
供給量が増えた以上、当然麦の値は下落する。つまり年貢を売って金銭に替えている辺境伯領行政も、税収減は免れない。
いやまぁ、増えた分だけ売る量も増やせばカバーできる範囲ではあるのだが。幸いなことに港町から帰還したオスヴァルト卿が王都との不戦条約を結んできてくれた。
半島の南方、平原部と湿地帯の境にある要塞都市ニザーンは兵士や工業品で成り立っていて、常に食糧を外部からの輸入に頼っている。主な輸入元だった西の穀倉地帯がロドリック王子のゴダイヴァ占拠によって準戦闘地域になってしまった現状、半島産の麦をニザーンに売り込むのは良案といえた。
――さてさて、あぶれた麦も買い手がついてひとまずはひと安心。しかしマルサスの人口論によれば、半島全体の食糧生産量が増加したならば、それにつられるように人口も増えていく未来が待っている。
増える食い扶持、足りない田畑、山がちな半島では新規開拓も望み薄で、どこぞの職工に就職するにしても職人が持てる弟子の数にも限りがある。
と、いうことで。
ミューゼル辺境伯軍独立歩兵大隊『鋼角の鹿』は、その規模をこれまでの三倍の1500人――連隊規模にまで拡大することを決定した。
部隊再編に伴い古参のほとんどは中隊長以上に昇進し、改めて幹部士官として教育を受け直すことになる。これまで俺やエルモや副団長やらでちまちまと座学を主導していたのもあり、再編はそれほど長くかからない見通しだ。
……え、うちの猟兵? 生憎と現状維持の中隊編成です。魔法が使えて足が速くて腕がたつ兵士なんてどこからも引っ張りだこ状態で、むしろうちから引き抜かれないように手を回すのに苦労したくらいである。むしろ今年は新規入隊皆無になるのではあるまいか。
そんなこんなで敵さんに動きが無いぶん、内戦やら内部の改革やらに手いっぱいだった716年が終わろうかという12月。
―――――急変の号砲が鳴ったのは、はるか南方からだった。
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プレイヤー名:コーラル
種族:人間 Lv:57(↑1) 戦力値:898
HP:332/332(↑10)
MP:150/150
SP:137/137
攻撃:239(↑5)【-50】
防御:230(↑2)【-50】
技量:321(↑3)【-50】
敏捷:278(↑3)【-50】
魔力:250(↑2)【-50】
抵抗:248(↑8)【-50】
HP自動回復:8/sec
MP自動回復:9/sec
SP自動回復:15/sec
水魔法:A 光魔法:B
闇魔法:C
地形特性:中庸の民
保有スキル
フィールド:疾走Lv10 耐久走Lv9
軽業Lv18 逃げ足Lv1(New)
登攀Lv14 騎乗Lv5
水泳Lv14 潜水Lv4
鑑定Lv7
夜目Lv16 遠視Lv12
気配察知Lv17 追跡Lv16
残影Lv2
学術:天文学Lv4 薬草学Lv8
地政学Lv6(↑1) 経済学Lv7(↑1)
生産:採集Lv8 採掘Lv1(New)
皮革Lv13 解体Lv15
耐性:水属性耐性Lv14 火属性耐性Lv12
地属性耐性Lv3(↑1) 光属性耐性Lv8
酸耐性Lv2(↑1) 毒耐性Lv15(↑2)
麻痺耐性Lv15 幻惑耐性Lv7
疾病耐性Lv8 耐寒Lv16
耐熱Lv12
睡眠耐性Lv12(↑1) 渇水耐性Lv2(↑1)
飢餓耐性Lv2
戦闘:短剣Lv12 片手斧Lv7(↑1)
片手剣Lv4 片手鎚Lv1
二刀流Lv6
両手斧Lv8 両手剣Lv3
長柄槍Lv9 長柄鎚Lv9
長柄杖Lv8
格闘Lv12 噛み付きLv5
関節技Lv5 組打ちLv4
クロスボウLv17 狙撃Lv3
速射Lv4 騎射Lv3
投擲Lv11
暗殺Lv12(↑1) 強襲Lv7
介錯Lv1(New)
重装Lv10 軽装Lv11
防御Lv12 受け流しLv14
剛体Lv12 身体強化Lv13
雄叫びLv8
魔法:魔力操作Lv15 魔力放出Lv13
魔力変換Lv8 魔力感知Lv14
瞑想Lv8 同調Lv9
召喚Lv1 憑依Lv1
破邪Lv1
軍事:統率Lv9 指揮Lv9
教導Lv5 鼓舞Lv3
罵声Lv1
特殊:死力Lv9 狂戦士Lv10(↑1)
明鏡止水Lv6
契約獣:ハティ・ロータ【ウォーセ】
称号:えべっさん
Exp:37




