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PHOENIX SAGA  作者: 鷹野霞
雪山を行く狼連れの傭兵
42/494

賢人会議

 ――回線が確立されました。接続を開始して下さい。


「はいよはいよーと。それじゃまぁ第……何回目だっけ? まあいいか。とにかく五年毎くらいに開催してる定例会、はじめるよー」


「おー」


「888888」


「相変わらずノリの軽い……」


「まあいいじゃん適当で。――えーと改めまして開始を宣言します。司会進行はみんなのアイドルレヴィちゃんがやっちゃうよ、喜べ野郎ども。んじゃまあ出欠をとるから返事をするように。みんな自分のコードネームは覚えてるなぁ!?」


「うぇえええええいっ!」


「ひゅーひゅー!」


「zzzzzz」


「(`・ω・´)」


「……このノリ、本当に続けねばならんのかのう……?」


「久々に参加したが、レヴィがやるといつもこうなのか……?」


「残念ながら苦情は受け付けておりません! ――さーいつも通り一二三席は欠席……じゃねーな。一体どうしたのさゴブリンは?」


「第八紀だからな。この時間帯は仕事を終えたプレイヤーが増える頃だ。できるだけこういった寄合には顔を出しておいた方がいいと思ってね」


「相変わらずかったいなー。そんなのなんとなくでいいじゃん。十席と十一席だって最近無断欠席多いし。つーかあいつらは絶対これのこと忘れてるね」


「レヴィ――あぁ、ここでは蛇か。……とにかく、先に進めよう」


「はいはい進めますよ、と。――四席蛇はあたしねー。……五席、雪だるま」


「ノ」


「六席、鶏」


「(`・ω・´)」


「……その顔文字、流行ってんの?」


「(´・ω・`)」


「――七席、天使」


「出席してますわ」


「八席、骨」


「来たのである」


「九席、ポルター」


「異議あり! 儂だけ変な風に略すのはやめんか!」


「ちっ、年寄りが。……いいじゃんよー別に略したってさー。だってポルターガイストって言いにくいっしょ? 実のところあたしはポルちゃんでもいいと思ってる」


「おのれさらに略す気か! 普通に死霊とか亡霊とか呼べばいいではないか!」


「論外である! 我輩がただの骨で妥協しているのに、貴様にそんなカッコいいコードネームなど名乗られてたまるか!」


「それは仕方なかろう! 貴様など見るからにただのみすぼらしい骨じゃろうが!」


「愚弄であるな? 愚弄であるな!? 我輩怒ったのである! 表に出て剣を取るのである!」


「上等じゃ消し炭にしてくれる!」


「あーはいはいわかったから静かにねー。ポルちゃんの新しいコードネームは次の定例会の議題にするから、各自考えてきてねー。――で、次の十席はいつも通りお休みで、十一席は…………何やってんの、あのワン公?」


「蝶を追いかけて走り回っている。難しい話は分からないから、終わってから結果だけ聞くと言っていた。……多分、結果も理解できないと思うが」


「あのあほ犬はもう……少しはハチ公見習えっての。――まあいいわ。とにかく出欠が取れたんで定例会を始めます。プレイヤーがやってきて半年以上経つけど、各自報告する異変とか起きてる? どこからともなく神聖っぽい石碑が生えてきたとか、ありもしない勇者伝説が蔓延し始めたとか、いかにも後付けな預言の書が発見されたとかさー」


「各種族のコミュニティに紛れ込んでみたが、その手の伝承は見当たらなかったな。以降も警戒は続ける」


「あたしんとこも海底神殿出現なんて展開はなかったよ。クトゥルフネタだと鉄板なんだけどね」


「kskst」


「(´・ω・`)」


「あんたら二人とも面倒だからって適当に流してんじゃねーよ。……あとで抜き打ちでそっち行くからね? 何か変なことがあったら怒るからね!」


「ノシ」


「(^^ゞ」


「樹海や聖地を巡っていますが、特にこれといって妙なものはありませんね。気になるものがあっても、過去のプレイヤーの遺産だったりしますし」


「右に同じである。古戦場を回っているのであるが、どれも我輩が払える程度の瘴気しか発していなかったのである」


「骨に祓われる瘴気って一体……。あーわかった。あんたの場合斬り払うって意味ね。了解了解」


「瘴気島を見て回っているのじゃが、特に大したアンデッドはいないのう。むしろゴブリンの勢力が拡がって人間の村を襲っているようじゃが、これはプレイヤーが関係してそうじゃし」


「ふむ、掲示板にいた参謀型のプレイヤーか。……憐れなことだ。彼らに内政を教え込むなど、並大抵の苦労ではないというのに」


「あいつらの頭って消防クラスだしねー。前に試しで『奴隷商って何?』って聞いたら、『ドレーショ……? 知ってるぞ! ふかして食うと美味い奴だ! でも気を付けろ。芋に生えてる芽を食うと腹を壊すからな!』だってさ」


「我が同族のことながら頭が痛い。いやむしろ馬鈴薯を知っていることを褒めるべきか」


「褒めるべきであるな。じゃがいもの蒸かし方を知っているとは先が楽しみなゴブリンである」


「ゴブリンの知能など知ったことではありませんが、80年前のようにいらぬ火種の元にしないでもらいたいものです。――あなたに言っているのですよ、タウンゼイ」


「あれは魔が差した。魔法で苦労している同族を見ると、どうにも世話を焼きたくなる。――それに彼女は逸材だった。少々触りのみを手解きしただけだというのに、彼女独自の技術に昇華させるとは」


「まったく、プレイヤーとは未知の可能性を持っておるわ」


「うむ。……魔法といえば、少々変わったプレイヤーを見かけたのである」


「変わった? プレイヤーで?」


「(。´・ω・)?」


「kwsk」


「治癒の霧、というのであろうか。水と光の複合を詠唱も無しに成立させていたのである。循環させている魔力に関しても実に滑らかなものであった」


「それは確かに奇妙ですね。魔法の概念のない現代日本の人間が魔力を運用するには、詠唱をトリガーにするのが定石のはず」


「『ストーンブリィイイイッツ』! というやつじゃな。あれには笑わせられたわ。……とするとそのプレイヤーは本能的に魔力を感知して操作しておるのか? 魔物が身体を強化するときのように?」


「わからないのである。しかし前例はある。あちら側での武道家や修験者の類はこちらでも魔力を発現しやすかったのである。……コーゾーはよい剣士であった」


「――つーかそれってあたしが見つけた溺死プレイヤーじゃない! なんであんたが半島くんだりまで遊びに来てんのよ!? そっちはゴブリンが行ったんだから他回りなさいよ!」


「……よくわかりましたね」


「当たり前でしょ。あたしが見つけて目印つけて、おまけにそいつがメインで使ってるのが水魔法なんだし、何かやったらすぐにわかるんだから」


「なるほど。――それと、前々から疑問に思っていたのですが、彼についている称号、あれはどういう意味なのですか?」


「『えべっさん』であるか。我輩も最初見たとき意味が分からなかったのである」


「私もそれは奇妙に思っていた。七福神が彼にどう関係しているんだ?」


「おやまあ、我らが誇る賢者様もそちら関係は知らないのかい? まあ、民間伝承の部類だしねえ」


「むぅ。見識不足なのは反省しよう。次に外部に接続したときには更なる飛躍をお見せするとも。――それで、あの称号はどういう意味なんだ?」


「……………………水死体よ」


「は?」


「何であるか?」


「Σ(゜Д゜)」


「水死体?」


「漁師の間ではなあ、海で拾った身元不明の溺死体をえべっさん――蛭子(えびす)とみなして吉兆とする風習があるのじゃよ」


「オウフ」


「(゜Д゜;)」


「身寄りのないプレイヤーが海の果てで溺死し続けている――それでえべっさん。……なるほど」


「溺死体は水を吸ってぶよぶよになるからなあ。なおのこと蛭子という訳じゃ」


「七福神の方ではないのであるか。なるほど理解したのである」


「べ、別にあたしがどんなあだ名つけようがあたしの勝手でしょ!? そもそも悪いのはあんなところで泳いで参ったをやろうとするあいつじゃ――」


 ――警告。回線に乱れが生じています。安全のため接続を切断してください。繰り返します――


「……地脈に異常あり。場所は――ミューゼルか……!」


「馬鹿な。異変はなかったはずである!」


「ふん。運営絡みでなく、他に暗躍するものがいたということじゃろう。恐らくは――――」

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