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PHOENIX SAGA  作者: 鷹野霞
決断を迫る者
403/494

天は我々を見放した

 一面に銀世界が広がっていた。

 昨夜、半島を襲った猛吹雪が明け方にようやく止み、薄く照り付ける陽の光が雪を表面だけ解かしていく。雪の吹きつけるまま凍り付いた木は大きくたわんで固まり、まるで今もなお風を受けているかのように昨夜の光景を残していた。


 交易都市ハスカールの南西にある、やや開けた街道である。

 半島全体が雪で閉じ込められるこの季節、街道を通る行商などはめっきりと数を減らす。文字通り通行が困難となるのだから仕方がない。

 通るとしても厳重な装備に身を包んで案内人に取り縋って気息奄々としているのが精々だ。苦労して雪の隘路を突破しようとも、それに見合う見返りは精々東辺海航路を突破して大陸へやって来たエルフたちに出会う程度。それに、たとえエルフと出会えたとしても優先的に南方の交易品を得られるわけではない。目敏い商人は雪の季節になる前に交易都市に拠点を構え、東辺海から船が到来するのを目を皿のようにして待ち構えているのだから。

 それも二月の半ばともなれば目ぼしい品など大抵売り切れている。今さら大陸の商人が雪越えを果たしたところで、得られるものはあまりにも少ない。


 そういう理由で、雪で半島が閉ざされる間はこの街道はもの虚しい無人の野と化す。半島に生息する狼たちも、厳寒の日は食糧を巣穴に溜め込んで穴熊を決め込むほどだ。

 一面に敷き詰められた銀の絨毯には足跡ひとつ残されず、汚れを知らぬまま雪解けを待つのが常だった。



 ――――その銀世界の一角で、ささやかな異変が起きた。



「……バフ」


 ぼこり、と白い景色を盛り上がらせ、その下から何者かが姿を現した。

 白い狼だ。銀細工のように透き通った毛並みに金色の瞳を爛々と灯した、馬ほどの大きさもある巨大な白狼だった。


「オウ……」


 狼は雪の中から身を起こすと、身体に纏わりついた雪の塊をぶんぶんと身を震わせてふるい落とした。人間臭い仕草でいかにも煩わしげに鼻を鳴らすと、耳をぷるぷると振って雪を払い落す。

 ひとしきり体の雪を落とした白狼は、その場にぺたんと尻を降ろした。ぽんぽん、と尻尾が雪を叩き、視線は自らが潜んでいた雪の跡に向いている。


「…………」


 じっと見つめる。自分が腹這いになっていた場所に何かがあると言いたげに。


「…………」


 数分経った。

 白狼は呆れた仕草で欠伸を一つ。耳の後ろを器用に後足でガシガシと引っ掻いて――



「――ぶっふぉぉぉぁあああ!?」

「オン!」



 爆発したように巻き上がる雪の柱。ぜんまい仕掛けのように跳ね起きて大きく息をつく男が一人。

 待ちかねた目覚めに狼が元気よく吼えた。


「豆乳が! 納豆が! 充填豆腐が!? 異端狩りがやってくる! 俺の顔に藁納豆を押し付けて食うか窒息するか選べって……!?」

「グゥ……?」

「まさかの時のイソフラ宗教裁判! 島豆腐は安楽椅子代わりにはならないって言ってるのに何で聞かないかなあ!?」


 ひどい夢を見たらしい。立ち上がった男は錯乱気味に意味不明な言葉を撒き散らすと、神経質そうに身体に纏わりついた雪の塊を叩き落とす。こびり付いた白い物体が他の『何か』に見えたようだ。

 ひどい風体だった。一晩中雪の中で蹲っていたせいで寒さに顔は青黒く変色し、唇は罅割れて血が滲んでいる。白狼の腹の下でぬくぬくとしていてさえ、この季節の雪は人間には苛酷だった。


「……信じられん。カボチャ豆腐食えってけしかけた当人が、南瓜ばっか食ってないで大豆も食えって迫って来た。そんなもんこの大陸にねぇよ畜生。――お前、大豆が生えてる場所とか知ってる?」

「フン?」


 そもそも、そのダイズとやらがどんなものなのかすら狼の知識にない。

 生まれた時から一緒にいるのだから、白狼が何を知って何を知らないかなんてこの男が一番よく知っているはずなのに。


「……あぁ、うん。だよなぁ……知ってた」


 無邪気に首をかしげる白狼を前に男は深くため息をつき、改めて大きく腕を広げて伸びをした。一晩中雪の中で埋もれて凝り固まった全身の関節がバキバキと音を立てる。


 ――猟師コーラル、半島への帰還である。



   ●



プレイヤー名:コーラル

種族:人間   Lv:56(↑2)   戦力値:887

HP:322/322(↑10)

MP:150/150

SP:137/137(↑10)


攻撃:234(↑10)【-70】

防御:228(↑4)【-70】

技量:318(↑8)【-70】

敏捷:275(↑8)【-70】

魔力:248(↑7)【-70】

抵抗:240(↑11)【-70】

HP自動回復:8/sec

MP自動回復:9/sec

SP自動回復:15/sec


水魔法:A 光魔法:B

闇魔法:C


地形特性:中庸の民


保有スキル

  フィールド:疾走Lv10 耐久走Lv9(↑1)

        軽業Lv18 登攀Lv14

        騎乗Lv5(↑1)

        水泳Lv14 潜水Lv4

        鑑定Lv7

        夜目Lv16 遠視Lv12(↑1)

        気配察知Lv17 追跡Lv16

        残影Lv2(↑1)

  学術:天文学Lv4 薬草学Lv8

     地政学Lv5 経済学Lv6

  生産:採集Lv8

     皮革Lv13 解体Lv15(↑1)

  耐性:水属性耐性Lv14(↑1) 火属性耐性Lv12

     地属性耐性Lv2 光属性耐性Lv8

     酸耐性Lv1 毒耐性Lv13(↑2)

     麻痺耐性Lv15 幻惑耐性Lv7(↑1)

     疾病耐性Lv8(↑1) 耐寒Lv16(↑1)

     耐熱Lv12

     睡眠耐性Lv11(↑1) 渇水耐性Lv1

     飢餓耐性Lv2

  戦闘:短剣Lv12(↑1) 片手斧Lv6(↑1)

     片手剣Lv4(↑1) 片手鎚Lv1(New)

     二刀流Lv6

     両手斧Lv8(↑1) 両手剣Lv3

     長柄槍Lv9 長柄鎚Lv9

     長柄杖Lv8

     格闘Lv12 噛み付きLv5

     関節技Lv5(↑1) 組打ちLv4(↑1)

     クロスボウLv17 狙撃Lv3(↑1)

     速射Lv4 騎射Lv3(↑1)

     投擲Lv11(↑1)

     暗殺Lv11 強襲Lv7(↑1)

     重装Lv10 軽装Lv11

     防御Lv12 受け流しLv14

     剛体Lv12 身体強化Lv13

     雄叫びLv8

  魔法:魔力操作Lv15 魔力放出Lv13(↑1)

     魔力変換Lv8 魔力感知Lv14

     瞑想Lv8(↑1) 同調Lv9

     召喚Lv1 憑依Lv1

     破邪Lv1

  軍事:統率Lv9(↑1) 指揮Lv9(↑1)

     教導Lv5(↑1) 鼓舞Lv3(↑2)

     罵声Lv1(new)

  特殊:死力Lv9 狂戦士Lv9

     明鏡止水Lv6(↑1)


契約獣:ハティ・ロータ【ウォーセ】


称号:えべっさん


Exp:6

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