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PHOENIX SAGA  作者: 鷹野霞
寒村に潜む狩人
27/494

逃げてみろよ! 後ろからぶっすりと―――

 オウシット。しくじっちまった。

 背後の男から漂う剣呑な気配に舌打ちする。


 ……最初に見たとき、妙だとは思っていたのだ。

 あの野営地にあったテントは三つ。発見した山賊は二人。一人足りない。だがあの野営地が斥候用の拠点として使い回されているなら、たまたま今日は二人組で当番を回しているだけだと思っていた。

 ……考えていれば、この野営地から街道は窺えない。もう一人見張りが街道付近に残っている可能性を考えておくべきだった。


 命のかかっている場所でこんな凡ミスとは。まだまだ素人ということか。


「……武器を捨てて立て。いいか、変な真似をするんじゃねえぞ」


 凶器を首に突き付けて山賊が凄む。錆の浮いた凶器を横目で観察する。形状から見るに片刃の鉈。相当刃毀れしているところから見て、押し付けたところで肉は切れまい。―――もっとも、前後に動かして挽き切るくらいはできそうだが。

 クロスボウを地面に置いて立ち上がる。背後の男は何を思ったのか弩弓を思い切り蹴り飛ばした。派手な音を立ててクロスボウは焚火の近くに落ちる。今まで世話になってきた狩猟用のクロスボウは、衝撃で弓を折ってしまった。音を聞いて、二人の山賊が跳ねるように立ち上がる。


「あ、あああ兄貴!?」

「まだ交代じゃないのに!? って、そいつは一体―――」

「てめえらは間抜けか、クソどもがぁっ!」


 男の大喝が空気を震わせた。片手で背中を押し込まれ、いやいやながら前に歩かされる。

 駄弁っていた男二人は慌てて武器を拾って構えていた。


「俺は言ったはずだな、この場所に気付いたやつは見つけ次第殺せってな! ここを張ってることがわかったら、領兵どもが大手を振ってやってくると! それがなんだ、このざまは!?」

「いやいや、なかなか上手く隠していたと思うが―――」

「てめえは黙ってろ!」

「ぐっ―――」


 思わず失言を漏らしてしまった。鉈の峰で側頭部を殴られ、たまらず膝をつく。

 ……実際、場所取りは結構な好立地だと思うのだが。立ちション野郎が迂闊すぎるだけで。


「……ともかく、運よくこいつを見つけたのはいいが、このままで済むと思うなよ。見せしめは覚悟しておけ!」

「そ、そんな!?」

「兄貴! お願いします、どうかボスに口利きを……!」


 脅しつける兄貴分と縋りつく子分。……なるほど、こうやって恩を着せて上下関係を構築していくのか。なかなかに参考になる。

 茶番じみたやり取りに人心掌握のスキルを垣間見て感心する。―――あーいや、今はそんな状況じゃなかったな。

 どうにもこれは詰んだ感があるが、もう少し足掻くとしよう。三味線は苦手なんだが。


「……まさか、見張り役がもう一人いたとはな。これは、バウンティ氏には不義理になったか」

「あぁ?」


 出まかせを走らせる。案の定兄貴は引っかかってくれた。しかしBounty氏とは、我ながら安直な。


「てめえ、何もんだ? 仲間がいるのか?」

「いるに決まってるだろう。俺はただの道案内の猟師でね。さる賞金稼ぎの旦那に雇われて山に入っただけなんだ。だから他言はしないから解放してくれるとありがた―――」

「訊いてるのは俺の方だぞ!? 余計なことを喋るな!」


 また殴られた。出血したのかこめかみからぬるりとした感触が伝う。痛みに蹲る風を装って身体をやや半身にし、ちらりと背後の男を確認する。


 ……まあ、届かない距離じゃない。


 再び俺の首筋に鉈を付きつけ、男が喚いた。焦燥感が伝わってくる。


「どこだ? 雇い主は何処に行った!? 他にどれだけ仲間がいる!? 応えねえとぶち殺すぞ!」

「正確には雇い主じゃなくて部下の一人だな。ここを見つけてすぐに主人に知らせに行ったよ。お仲間はかなりの数だったから、もう少ししたら囲まれるんじゃないか?」

「ちぃっ」


 目の前の二人があたふたと周囲を見回す。いるわけがないだろうが、馬鹿めが。いたとしても間抜けに見つかる玄人がいるか。

 がら空きでぜひとも狙ってやりたいところなんだが、首の刃物が気になって仕方ない。仕方がないので下準備にとどめておく。

 四肢に力を籠め、魔力を身体に満たしていく。MPバーがじわじわと目減りしていく。

 兄貴は苛立たし気に舌打ちして何かをを罵った。何をだろう。神か、運命か、それとも昔の上司か。


「……領主の差し金か? そうでなきゃこんなド田舎に兵隊が突っ込んでくるわけがねえ」

「さあね。別になんだっていいんじゃないか? そんなこと、これから死ぬ人間が気にすることじゃない」

「てめえっ!」


 激昂した男が鉈を振りかぶる気配。力任せに頭をかち割る気か。無手の男相手に背中をとった状態だ。今の自分が無防備なことにも気づいていないだろう。こちらに反撃の手段はないと。そう思わせるために二回も殴らせてやったのだから。


 気は進まないが、山賊狩りだ―――!



   ●



プレイヤー名:コーラル

種族:人間   Lv:10(↑4)   戦力値:186

HP:105/105(↑20)

MP:53/53(↑11)

SP:110/110(↑2)


攻撃:50(↑19)

防御:54(↑8)

技量:86(↑36)

敏捷:71(↑26)

魔力:48(↑16)

抵抗:52(↑8)

HP自動回復:2/sec

MP自動回復:4/sec(↑3)

SP自動回復:12/sec


水魔法:C(↑)


地形特性:中庸の民


保有スキル

  フィールド:走行Lv4(↑1) 軽業Lv3(New) 登攀Lv2(New)

        水泳Lv13 潜水Lv4

        鑑定Lv2(↑1)

        夜目Lv5(↑1) 気配察知Lv2(↑1) 追跡Lv2(↑1)

        隠密Lv5(↑2)

  学術:天文学Lv3 薬草学Lv2(New)

  生産:工作:Lv10(Max) 加工Lv10(Max)【生産基礎技能修了】以後非表示

     皮革Lv3(New) 解体Lv3(↑2)

  耐性:水属性耐性Lv2

     酸耐性Lv1 毒耐性Lv2 麻痺耐性Lv4

     疾病耐性Lv1 耐寒Lv8

     睡眠耐性Lv6 渇水耐性Lv1 飢餓耐性Lv2

  戦闘:片手武器Lv9(↑1) 長柄武器Lv8(New)

     格闘Lv5 噛み付きLv2

     クロスボウLv6(↑3)

     剛体Lv2 身体強化Lv2(↑1)

  魔法:魔力操作Lv6(↑2) 魔力放出Lv1(New) 魔力変換Lv2

     魔力感知Lv3


称号:えべっさん


Exp:0

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