夕立と君と僕
さっきまで晴れていた空から水が降りてくる。
「・・・夕立」
一言呟くと、隣の君が「本当だ!」
なぜかテンションの高い君の声。
僕は今日傘を持っていないことを思い出し、雨宿りできる場所を探す。
キョロキョロとしている僕を、君は僕の腕を掴み
「ねえ、一緒に行こう!!」
僕に一言だけいい、走っていく。僕も。
色とりどりの傘の間をすり抜け、走る。
制服のブレザーもびしゃびしゃだ。
ーーーー何分ぐらい走っただろう。
夕立の雨も大分弱まってきて、少ししか降っていない。
すると君が急に立ち止まる。
運動不足の僕は息が切れて、周りなんか見えない。
掴まれていた手を離され、君が指をさす。
「ここ!」
下を向き息を整えていた僕もその場所に目を向ける。
「虹だ・・・」
丘の上から見える景色はとても綺麗で。
そしてその向こうに架かる七色の橋。
久々に見た気がする。
「元気になった?」と問う君。
今日一日元気がなかったということを、君に言われて初めて気づく。
もう一度君の手を、今度は僕からとる。
小さく「ありがとう」と言う。
キョトンとした君を横目に僕は虹を見る。
明日はずっと”元気”でいられそうだ。