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気ままな犬と寂しがる猫  作者: K城
Casual dog and Lonely cat~Introduction~
6/7

ヒイロ part#3 異界力

3話



 仕事から帰ってきたご主人様は、僕と遊んでくれた後すぐに寝てしまった。たぶん、仕事でお疲れになったんでしょう。


「お疲れ様です、ご主人様……」


 ご主人様のしていることは、ご主人様にとってなんの得にもならないことです。だけど、ご主人様は世界のために……そして、ご自分のちっぽけな復讐のためにこれを選択しました。

 だから、僕も頑張ります。ご主人様が一人にはならないように。

 そのためにもまず――ご主人様の様子を、すずに報告しないと。



~~~~~~~~~~~~~~~~



 仕事を終えた後は、疲れが押し寄せる。異界力(アルカナ)の行使は、人類の域を超えた御業だから仕方がないと言えば仕方がないのだが。


「……その前に、俺の異界力(アルカナ)がどうなったか確認しておくか」


 自分の中の異杯(サンクチュアリ)にアクセスして、体内の異界力(アルカナ)量を確認する。

 異界力(アルカナ)が無くなると、異杯も異法術も使えなくなる。そうなると、自然に異界力(アルカナ)が回復するまで、戦えなくなるから、それは避けたい。

 ……もっとも、さっきの戦いは大分黒字なのは分かっていたんだがな。


「戦いはじめとは、まったく比べ物にならないくらいの異界力(アルカナ)だな」


 苦笑して、そのままベッドに転がる。


 ――異界力(アルカナ)とは、俺の師匠が教えてくれた言葉で……この世ならざるエネルギーのことを言う。それを俺たちのように体内に異杯を持つ者は、とどめて、そして異法術という形でこの世に非常識な力を顕現させることができる。

 そしてその異法術を使って何をしているかというと……さっきのように、異界門(ゲート)を閉じたり、異界獣(エニグマ)と戦ってそれを排除したりしている。

 異界門(ゲート)というのは、異世界……というか、異界力(アルカナ)地球(こちらのせかい)よりもあふれている世界につながっていて、大量の異界力(アルカナ)が流れ込んで来たり、大きな異界門(ゲート)だと異界獣(エニグマ)がこちらの世界にわたってきたりしてしまう厄介なもののことだ。

 これは出来てすぐに閉じないと、異界力(アルカナ)にあてられて異界力(アルカナ)中毒になって死んでしまう人が出たり、異界獣(エニグマ)に襲われる人が出たり。稀ではあるが……俺のように体内の異杯が反応して、異法術を使えるようになる者が現れて、その力に溺れる犯罪者となってしまったり。

 それを阻止するために戦っているのが俺たちのような異杯者(サンクチュアリ・ガードナー)なんだが。


「……そういえば、師匠はどうしてるのかな」


 師匠とは、十年前のあの日――俺が人生を捨てた日に出会った。

 正確には、人生を奪われた日、か。

 少し自嘲気味に笑みが漏れる。

 今の力があの時あれば――こんなことにはなっていなかったのに。

 何度思ったことだろうか。しかし、時間は戻せない。今まで何度も異杯者(サンクチュアリ・ガードナー)や、異杯の力に溺れた者を見てきたが、時間を戻す能力や、死者を生き返らせる異杯能力(サンクチュアリ・アーツ)を持つ者はいなかった。

 過ぎたことを悔やんだところでどうしようもないのは分かっている。だが、それでも思う。過去を変えられないのか、と。


「やめとこう、辛気臭い。それよりも明日の授業だ。バイト先にすずが来るんだったら……少し楽しみだしな」


 無理やり思考を切り替えて、俺は布団をかぶる。

 そうでもしないと、日常に戻れない気がするから。



~~~~~~~~~~~~~~~~



 ご主人様が寝てしまったので、僕はご主人様のベッドへもぐりこむ。

 ……ご主人様は過去から抜け出すべきだと思うんですけど、どうしようもないみたいですね。


(すずに報告する内容はこれくらいですね)


 ご主人様の日常の象徴――のようですが、どうにも怪しい感じがしてなりません。


 ご主人様は、どうやら異界力(アルカナ)という力を使って戦っているようです。そして、おそらく僕も――その異界力(アルカナ)とやらで強化されているのかもしれません。詳しくは分からないですけど、いくら調べてみても僕と同じ事例がなかなか見つからないからです。

 だけど、その異界力(アルカナ)というものも調べても分からないんですよね。

 ご主人様は怖くないのでしょうか。

 大事な人を奪った未知の力。

 自分の意思に反して戦わざるをえなくされてしまった未知の力。

 そんな力を操って、その力に復讐する。

 ご主人様……貴方は本当に大丈夫なんでしょうか。 

 僕には、貴方の日常の象徴になるしかできません。

 ご主人様の帰る場所となれるように。



~~~~~~~~~~~~~~~~



 翌日、昨日の戦いの疲れにため息をつきながら、俺は大学への道を歩いていた。


(……回復系の異法術を使えればいいんだが)


 怪我を回復させる異界力(アルカナ)はあるし、異杯者(サンクチュアリ・ガードナー)の知り合いにも、疲労を回復させる異杯能力(サンクチュアリ・アーツ)を持つ者はいない。

 異界力(アルカナ)を使うと、すさまじい疲れに襲われる。42.195キロ走った翌日……とまではいかないが、長距離走を行った翌日よりはキツイ。


「くそっ……休みてえ」


 しかし、俺はなるべく友人は作らない様にしているため――仕事のことを誤魔化すのが大変だから――一コマでも休むと、大変なことになってしまう。

 非日常は非日常で大変だが、日常は日常で大変だ。

 ……もう一人自分を生み出せる異杯能力(サンクチュアリ・アーツ)はありそうだが。

 コピー○ボットが心底欲しくなる、日常だった。


 更新が遅くなってしまい申し訳ありません、城です。

 やっとこさテストが終わったので、なんとか更新できました。これからはなるべく更新頻度を上げて行こうと思います。

 では、ご意見ご感想お待ちしております。

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