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幼なじみが犬になったら、モテ期がきた件  作者: KUMANOMORI
2章 蒔かれたよ、変の種
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認識外のイケメン



 やばい、と瞬間思ったけれど、後ろに傾いた体はもう自力では戻らない位置まで来ていて、わたしは背中への衝撃を覚悟した。

 けれど、やってきたのは、トン、と肩を支えられる感覚だった。

「え?」

 そのままふわっと体が引き戻される。

「大丈夫?」

 後ろから声がして、振り返るとそこには、えーと……そう、穂波君がいた。

 クラスメイトの名前がぱっと出てこないのは、ちょっとまずい。

「あ、ありがとう。穂波君」

『あ、カズシ』

「どういたしまして。改めておはよう、本田さん。朝早いね」

 穂波君は柔らかい物腰で、そう笑いかけてくる。

「あー補習でねー」

「おはよー、穂波君。穂波君こそ早いじゃん」

「ああ、椎名さんもおはよう。俺は部活なんだ」

 そう穂波君が言ったので、そういえば彼は何部だっけという疑問が生まれてくる。

 そんなわけで、

「そーいえば、穂波君って何部だっけ?」

 わたしは何ていうことなくそう聞いたわけだけれど、とたん、空気がピタっと止まる。

 穂波君の顔には苦笑いが張り付いている。

「え?何、みんなして……」

『ミサキ、さすがにそれはねーよ……』

「空気ストッパーミサキ……」

 まほりに至っては、そんな変なあだなをつけてくる。

「な、何なの?わたし何か変なこと言った?」

「ごめんね、穂波君。ミサって興味のないものについて感度がものすごく低いから」

「し、椎名さん、それってフォロー?」

 穂波君、わたしの発言以上に傷ついている様子なんだけど……。

「まあ、しょうがないかな。俺きっと、存在感薄いんだよ」

 穂波君の非常に傷ついた様子を見て、ハッとした。

「……まさか、穂波君、同じバスケ部だったり……」

「ははは……」

 穂波君は乾いた笑い声をあげてらっしゃる。

 ……ビンゴだ。

「う、嘘だよ嘘嘘嘘ー。同じ部活なのに知らないわけないよ。1年以上活動してて、全然覚えがないなんてそんなことあるわけないって……」

 取り繕うが既に遅し、

「本田さん、大丈夫だよ。本田さんの本音は良く分かったから……」

 穂波君は呆れた顔でこっちを見ている。

 ああ、やってしまった。

 いくら男子全般に興味ないとは言え、こういうのは良くない。一応自分の周辺くらいは認識しておかないといけないよね。

「まあ、今覚えてくれたなら、それで良いよ」

「ホント、ごめんね……」

『……』

「それより、さっきから少し気になっていたんだけど、その犬って本田さんの飼い犬?」

 わたしの足元へと穂波君の視線が降り注ぐ。

「うん、まあ……そう」

「そうなんだ。かわいいね。撫でてもいい?」

「う、うん」

 と言いつつ幸太郎をうかがうけれど、

『……』

 反応なし。

 穂波君が撫でている間、ずっと幸太郎はそっぽを向いて不機嫌そうにしていた。

 あまりにもあからさまなので、ひょっとしたら幸太郎は穂波君と仲が悪いのかな、と疑ってしまう。

 そんなわけで、感じ悪いよ、と心の声で幸太郎に話しかけると、

『そんなことねーよ』

 と気のない返事だ。

 やっぱり、穂波君と仲悪い線が有力?

『え、カズシ?仲良いけど?』

 今度は別に話しかける気じゃなくそう思うと、勝手に返事が返ってくる。

 何なのかな、このわたしの心の声ばかりだだ漏れ状態。

 仲が良いのに、撫でられて不機嫌って言うのがちょっと理解できなかったけれど、

「この子、良く吠えるね。俺、警戒されてちゃってるのかな?」

 と穂波君が言うので、これ以上心の声を通して話すのはやめることにした。


「ねえねえ3人と――いや2人とも。そうやってなごやかーに戯れてるの楽しそうだけどー」

 まほりが割ってはいる。

「ん?何まほり」

「ち、こ、く」

 わたしは腕時計を見る。

 始業開始2分前。ここから学校まではあとおおよそ5分の距離……。

 そう言えば、周りに生徒が見当たらなくなったと思った。

 とそんな場合じゃなくて!

「は、走るよ、3人とも!」

 と言うが早いか、わたしは駆け出していた。

「わ、ミサ。抜け駆けー!」



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