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幼なじみが犬になったら、モテ期がきた件  作者: KUMANOMORI
3章 混線×混戦

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えぐられて



 食事もたけなわになって来た頃、

「もっと食べてよ、本田さん。何だったら俺があーんしても良いよ」

 と穂波君が、自分の分のおかずを差し出そうとしてくる。

「け、結構です」

「じゃあわたしがあーんしよっか。ミサ、あーん?」

 まほりが穂波君の言葉にのっかり、ブルーベリーゼリーを差し出してくるが、その目が半開きで恐ろしいことになっている。

 もはや気力で起きている感じだ。


「まほり、少し寝てから部活戻ったほうが良いんじゃないかな……」

 ただ、折角なのでブルーベリーゼリーは一口もらう。

「そうだねー」

 と言いながら、目をあけたまま魂が抜けるようにして眠ってしまう。

「ま、まほり……こわいな」

 わたしは、まほりの指からスプーンを離すと、ケースの中にしまう。

「パンチ効いてますね、さすが椎名さんだ」

 火恩寺君がまほりを尊敬の眼差しで見ている。

「コンパクトに眠れていいね」

 穂波君も、微笑ましいものを見るかのようにしてまほりを見る。

 そんな様子を見ていると、まるで、家族でピクニックに来たような錯覚をする。

 何日か前には、こんな風になるとは思いもしなかった。

 わたしは穂波君を同じ部活のメンバーだと知らなくて、火恩寺君のことを忘れていたんだから。


 そんなやり取りをしていると、近づいてくる靴音がして、

「本田さん。ここにいたんだねー」

 背後から声がかかる。

「うん?」

 振り返ると、そこには戸田さんがいた。

「どうしたの?ひょっとして、わたしのこと捜してた?」

「そうなの。ちょっとだけ、本田さんに相談があって」

 わたしが尋ねると、戸田さんは少し沈んだ顔つきでそう言った。

「相談?いいよ?」

『……』


 戸田さんは、周りの面々を見渡すと、

「少し、来てもらってもいいかな?二人きりで話したいの」

 そう言う。

 他の人には聞かれたくないことなのかな。

「分かった。いいよ」

 と返事すると、

「穂波君、火恩寺君、まほりをお願いしてもいいかな?」

 二人の声をかけた。

「分かった。部活に間に合うように起こせばいいんだよね」

「了解しました姐御、しかしお気をつけて」

「ありがとう」

『ミサキ。俺も一緒に行く』

「え?」

 テーブルの上から飛び降りると、幸太郎はわたしの足もとにやって来る。

「戸田さん、犬が付いて来たいみたいなんだけど……」

「ワンちゃんなら、いいよ。それじゃ行こう?」

 戸田さんは幸太郎を一瞥すると、わたしを促すようにして歩き始めた。




 戸田さんについていくと、実技棟の廊下へと入っていくことになった。

 生物室や化学実験室、物理実験室、それぞれの準備室のある1階の階段から、2階へと上がっていく。実技棟では多くの文化部が活動しているはずだ。

 いつもこの辺りを通ると、上の階から軽音部のギターやベースの音と、吹奏楽部の金管や木管の音が混じって聞こえるのだ。

 今も個別練習の音が少しだけ漏れ聞こえている。

 階段を上がり終わり、家庭科室や茶室などの並ぶ廊下を少し行ったところで、戸田さんはある教室の戸を開けた。


 そして資料室、とかかれたその部屋の中へと促す。

「お先にどうぞ、本田さん」

「うん」

 促されるまま中に入ると、幸太郎を通し、戸田さんは最後に中に入ってきた。

 そして、戸田さんは戸を閉めると、後ろ手で鍵をかける。

『え!?』

「え!?」


 どうして鍵をかけるの、と思う間もなく、

「ごめんね、本田さん……」

 素早く間合いをつめてきた戸田さんに、みぞおちをぐいっとえぐられた。

「ぐ、ぐぇっ!」

 うそ、今日のわたし、こんなのばっか……。

 涙に曇る視界を置き去りにして、わたしは本日二度目の気絶をした。

『ミサキ!』

 そんな幸太郎の呼び声を聞きながら。



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