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主役は僕(ワタシ)  作者: ティる
主役は僕(ワタシ) 1
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どうしてこうなった…6

「この前はありがとうございます」

屋上に来て早々彼女はそう言って頭を下げた。

「気にしないでいいよ、ぼ…私も許せなかったから」

あの時は必至で周りのことも見えていなかったが飛び出た理由は栞を助けるためだったのだ。

ひとまずひたすらお礼を述べる栞を落ち着かせお昼を食べるように促す。

栞が教室に来た後さらに人が集まってしまいとても落ち着けるような状況じゃなくなってしまったのでお弁当を持って屋上に来るように言っておいたのだ。

お弁当を開けて礼儀よく「いただきます」と言って食べ始める。

瑞姫も残っていたお弁当を食べ始める。

しばらく無言で食べていた二人だったが半分くらい減ったところで栞が口を開く。

「鹿島先輩ってデバイスを使わない魔術師なんですよね」

「ちが…わない。そう私は科学魔術師じゃないね」

危うく否定するところだった。

涼風瑞樹は科学魔術師だが今は鹿島瑞姫なのだ。そして鹿島瑞姫は魔術師としてデータベースに登録されているのだ。

中には実力を隠すためにそのデバイスを使用したりするものもいるのだが。

しかし瑞姫はすでに魔術師としてネット上で人気者になってしまったのだ。今更隠しても意味がないだろう。

「どうやったらあそこまで上手くなれます?」

突然の質問で正直驚いた。

彼女はAランクの科学魔術師として名が通っている。

今更無理をして魔術に手を出す必要がないはずなのだが…

「栞はもう科学魔術師として十分なランクまで上れてるんだし無理に魔術を使うことはないんじゃないかな」

「いえ、例えそうでも使えるようになりたいんです」

そういうと彼女は瑞姫の手を握って言った。

「鹿島先輩、ぜひとも私に魔術を教えてください!」

突然可愛い女の子に手を握られドキッとしてしまう。

「べ、別に私じゃなくても先生とかでもいいんじゃ…」

「嫌です。だって男の先生しかいないじゃないですか」

確かにこの学園の魔術の先生は男しかいない。

科学魔術だと女の先生もいるのだが。

「先生に教わるのが嫌なの?」

「いえ、そうではなく…」

どこか歯切れの悪い返事をする栞。

「じ、実は…その……」

「最後の方聞こえなかったんだけど」

「あたし…男の人が苦手なんです」

栞がか細い声でそう呟いた。

「え、でもデパートでのあの時は…」

強盗に立ち向かったときは強気だったはずだ。

少なくとも瑞姫はそう記憶していた。

「あの時は男の人を全部かぼちゃやスイカだと思っていましたから」

(ほ、ほんとにそうやって男の人を見ている人がいるなんて…)

正直マンガの世界だけだと思っていたが本当にこんなことがあるんだな。

だからと言って栞に魔術を教えていいものか悩んでいた。

科学魔術は誰にでも扱えるようにデバイスというものがあるのだが魔術には相性がある。

その相性が合わないと思いもよらぬ反動が来るのだ。

そのため教える側は細心の注意を払わなければいけない。

「やっぱり…駄目でしょうか」

上目使いで頼まれタジタジになってしまう。

というか僕は男なのだが…今は女として生活してるけども。

「ちょっとだけなら」

結局この上目遣いに耐えられず受けしまった。

勢いで引き受けてしまったが瑞姫は頭を抱えた。

過去のトラウマからいまだ抜け出せない瑞姫。

そんな状態で果たして人に教えられるだけの魔術が行使できるのか、それ以前に魔術を行使できるのか…。

様々な思いがあったが黒江に言われたことを思い出す

(お前もいい加減その過去を断ち切れ。それまでは女として学園生活を送れ)

そうか、これも試練だと思えばいいのか。

それに栞との特訓なら人目は彼女一人。リハビリにはちょうどいいかもしれない。

「それじゃ今週の土曜日学園で特訓しましょう」

「今週土曜日ね」

「はい!それじゃ、また後日時間を決めましょう」

そういって栞は残っていたお弁当を食べしまい始める。

そうしてそのままお礼を述べて屋上を後にした。

一人屋上に残される瑞姫。

お昼休み終了のチャイムがなる。

慌ててお弁当を片付けて屋上を後にする。

「って、土曜日に特訓となると土曜日にもこの格好しなきゃいけないのか」

せっかくの土曜日でこの格好をしなくてもいいと思ったのだが…

しかし引き受けた以上さぼるわけにもいかないので私服をまた楓から借りることにする。

それ以降その日は栞も訪ねてくることもなく瑞樹の女の子学園生活は幕を閉じた。


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