どうしてこうなった… 1
なぜこんなことになっているのか。
原因は一週間前のことだった。
「瑞樹、ケーキ食べたくないか?」
親友の獅子原 綾人が真剣な顔でケーキ店のチラシを机に広げる。
瑞樹は甘いものが好きで中でもケーキが大好きなのだ。
そのため綾人がよく瑞樹のためにこうして情報を集めてくるのだ。
「今日はどこのケーキがおすすめなんですか?」
「ふふふ、なんと今近くのデパートで全国ケーキフェアをやっているんだ!」
そういって机に広げたチラシの一枚を手に取って瑞樹の目の前に突き出す。
手に取ってりじっくりと見る。
種類の豊富なチラシを上から見ていくと下の方に大きな文字で『女性限定』と書かれていた。
「ねぇ、綾人。これ女性限定って書いてあるんだけど…」
「ん?そこまでは見てなかったな。でもいいだろ。お前には妹がいるんだし買ってきてもらえば」
「妹はケーキが嫌いなんだけどなぁ」
ダメ元でお願いしてみよう。
机に広げられたチラシをまとめてカバンに入れて立ち上がる。
「それじゃ帰ろうか、チラシは貰っておくよ」
「チラシを置いていかれても俺が困るだけだっての」
なんてやり取りをしながら校門へ向かう。
下駄箱の前で靴を履き替えてると綾人が思い出したかのように突然話し始める。
「そういや、今年の一年にランクSに近い科学魔術師が入学してきたらしいぜ」
科学魔術師。魔術をデバイスを用いて発動させるタイプの魔術師のことでこの世界で最も多くいる魔術師のことである。
科学魔術師以外にもいるのだがデバイスで高速発動ができる現在では生粋の魔術師は減ってきている。
ランクはFからSまでの6段階ありSに近ければ近いほど優秀な魔術師である。
そんな優秀な科学魔術師がこの学園に入学してきたなんて一体何年ぶりなのだろうか…。
そんなことを思いながら返事をする。
「ランクSって…僕たち凡人には届かないね」
「まったくだ、それにバケモノみたいな強さらしくて中学の大会では一度も被弾しなかったらしいぜ」
綾人の『バケモノ』という単語に一瞬だけ瑞樹が嫌な顔をするがすぐにいつもの顔に戻る。
「それは確かにものすごい子だね」
震えそうな声をどうにか抑えて返事をする。
そのまま歩いて校門を出る。
二人はお互い空を見て誰もいないことを確認する。
「よし、誰もいねーな。それじゃ俺はお先に失礼するわ」
綾人はそういうと魔力を集中させ飛行魔術をデバイスから発動させる。
そのまま浮いたかと思うと勢いよく飛び去って行った。
瑞樹たち魔術師は正式な認可を受け免許をもらうことで外での魔術行使が認められる。
理由は多発する魔術犯罪を止めるためなのだがそれ以外のところで使ってはいけないとは言われていないので大体の魔術師はこのように移動を魔術で行う。
それでも最低限のルールのようなものは守っているが。
「僕もそろそろ帰ろう。妹ももう帰ってるだろうしケーキ買ってきてもらえるようにお願いしないと」
もう一度だけ周りに誰もいないことを確認して魔力を集中させ飛行魔術を直接発動させ瑞樹も自宅の方へ飛んで行った。