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キャラメイクの経験

Your Experience Online

YEO(イェオ)の略称で呼ばれるそれは、20XX年の現在、急速に発展してきている仮想現実(VR)技術の採用によって実現された、プレイヤー自身がファンタジーの世界に入り、行動を起こすことができるゲームである。レベルはなく、HPも全プレイヤーが一律、自身の経験(わざ)だけが頼りになるシステムとなっている。


「これはあなたが経験する異世界の物語」


というキャッチフレーズとともに募集されたベータテストの申し込みには定員をはるかにオーバーした人数が申し込んだ。そして、運よくベータテストをすることができたプレイヤーたちは、口をそろえて「すごい技術」だの「神ゲー」だのとネットを通じて、日本中に伝えて回った。そんな反響を残して、ベータテストは終了した。

そして今日、YEOの公式サービスが開始される。



「くしゅん!…あぁくそっ、スギの木絶滅しろ」


八神 絆(やがみ きずな)は学校からの帰り道、4月でまだまだ現役なスギ花粉に悪態をつきながら、家への帰り道を歩いていた。

その途中、絆はあるものを目にする。

それは、ゲームなどを取り扱っている店の前の、長蛇の列だ。


「あぁ、そういえば今日はYEOの発売日だったな」


それをみて、絆はベータテストに応募した時のことを思い出した。

絆はベータテストに応募し、その権利を運よく勝ち取ることができた。しかしここで一つの問題が発生した。

このベータテストには絆の妹も応募していたのだが、こちらは権利を獲得することはできなかった。

絆はゲームが好きだ、だがそれ以前に妹が好きなシスコンである。

なので絆は高校受験が控えていたこともあり、妹に権利を譲ったのだった。

そんなことを思い出しながら絆は言った。


「まぁ、あれに並んで買おうとは思わんな」


ゲームはしたいが苦労はしたくない。

そう絆は考え、その行列を一瞥して家へ帰るのだった…。



「おかえりおにいちゃん、私と一緒にYEOしない?」

「OKわかったいまからさっきの行列に突撃してくる」


帰宅し、迎えてくれた妹の八神 祈(やがみ いのり)の一言により、絆はすぐさま先ほどの行列へ特攻しようと着の身着のままで家を飛び出そうとしたのだが、


「まってまって!YEOならあるから!」


あわてた祈にすぐさま止められたのだった。



「…ふむ、つまりベータテスト経験者には自身のものとは別に布教用として一つYEOがプレゼントされると」

「そういうこと、だからお兄ちゃんやらない?」

「もちろんやる」


即答だった。

絆としても苦労はしたくないがゲームはしたかったし、受験明けで今まで封印していたゲームをやりたかったし、なにより愛すべき妹からのお願いを断るわけがなかった。


「わかった。じゃあはいこれ」


祈はそういい、絆に黒い首輪のようなものを渡した。


「…祈よ」

「ん?なぁに?」


絆はそれを受け取り、祈に言う。


「妹に兄をペットにしたいという願望があったことを気付けなかったのは悪かったとは思うがここは兄らしくこういうことはいけないというのではなくシスコン(お兄ちゃん)としてその歪んだ願望を受け入れようと思うのでつまりなにがいいたいかというといつでもウェルカムでs--」

「ーーそんなわけないでしょ!?」


絆は祈に近くにあったソファのクッションを投げつけられた。



「…っていうこと!わかった?」

「おうわかった。つまり祈はお兄ちゃんに首輪をつけてほしいと」

「ちーがーうー!」

「ははは、すまんすまん。説明はちゃんと聞いてたから。ええっと…」


絆は笑いながら先ほど祈に言われたことを復唱する。

絆が渡されたこの首輪のようなものは<リンカー>といって、YEOをするための端末とのこと。

首につけて起動すると、脳からくる命令などを首につけたリンカーが云々カンヌンしてYEOでのキャラクターを操作できるということ。


「つまり科学の力ってスゲー」

「なんかいろいろと省いてるけどそれで問題ないね」


復唱を聞いた祈は合格をだし、説明を続ける。


「それじゃ、いまからキャラを作ってきて、サービス開始はまだだけどキャラメイクはできるから」

「りょーかい。じゃあ今から行くけど意識のない兄ちゃんにいたずらしてもいいぞ」

「そこはするなじゃないの!?…まぁしないけど」

「いや兄ちゃん妹からされることなら大体ウェルカムだから…そんじゃ行ってきます」

「シスコンもそこまで行くと感心するね…行ってらっしゃい」


そういい、絆はリンカーを起動しようとしたのだが…


「…これの起動ってどうやるんだ?」

「…スイッチ入れてリンクスタートっていえば起動するよ」

「え、それってパクリじゃーー」

「ーー早くいきなさい!」

「了解。そんじゃ、リンクスタート」


そして絆は、リンカーを起動した。



「おぉっ、これが仮想現実か」


リンカーを起動した次の瞬間、絆は真っ白な空間に立っていた。立っていた…というよりは浮いていたが正しいだろう。そんなリアルな感覚に絆が感心していたとき、絆の目の前に半透明な板のようなものが出てきた。それにはこう書いてある。


『名前を記入してください。』

「これがウィンドウってやつか。…面倒だしこれでいいや」


絆は半透明な板、ウィンドウに表示されていたキーボードを操り<Kizuna>と打ち込んだ。

そして、今度はウィンドウにこう表示された。


『性別、容姿を決定してください。』


YEOでは性別、容姿を自由に選択することができる。だが、あまりに本来の自分とかけ離れた容姿にすると行動する際にズレが生じてしまうため、大体が性別を変えず、容姿にも自身の姿をスキャンし、多少の上方修正を加えるだけにしている者が多い。絆も、自身の容姿をスキャンして、修正を加えるだけにした。


「ていうか首につけてるのに顔とかどうやって判断してんだろ?」


そんなことを考えながら、絆は容姿を決定していった。

そして容姿が決定した後、次にウィンドウに表示されたことは


『武器を決定してください。』


というものだった。

同時にウィンドウには剣や弓などといった武器が表示され、それらにタッチするとその武器の説明とともに『試しますか?』と問われる。

絆はひとまず、剣を選択し、試すを選んだ。

すると、何もなかった空間に鉄の剣となにやらサンドバックのようなものが現れた。


「ふむ、まぁとりあえず切ってみればいいのか」


どうやら試しはいまだ表示されているウィンドウからやめれるらしく、あらかた剣を振り終わった絆は試しを終了し、次の武器に移った。



「…うん、これが一番いけるかね?」


結局、絆が選んだのは槍だった。槍といっても、漫画などで騎士が使う先のとがったようなものではなく、長めの棒の先に刃がついたものだ。

絆はそれを選び、次に移った。


『これでキャラメイクは終了です。16:00のサービス開始までお待ちください。』


どうやらこれでキャラメイクは終了らしく、こう表示されたウィンドウの隣にログアウトのボタンがあった。

絆はそれを押し、ログアウトした。



「よっこらせっと」

「あ、お兄ちゃんおかえり。どうだった?」


ログアウトし、目を覚ました絆は寝ていたソファから起き上がったところで、それに気づいた祈に声をかけられた。


「あぁ、キャラメイクは終わったぞ」

「そっか…サービス開始まであと1時間くらいかぁ…話とかしてよっか」

「ほいほい」


現在時刻は15:00。雑談をしながら、二人は時間をつぶすことにした。


「そういえば祈」

「ん?なぁに?」

「いたずらしなかったのか?」

「しないよっ!」

アオイ「アオイです」

キズナ「キズナです」

イノリ「イノリでーす」


アオイ「…結局やっちゃった」

キズナ「おいおい、大丈夫かよ?二作連載とか」

アオイ「…どうだろう?」

イノリ「無計画乙!」

アオイ「い、いや、これ土曜週1投稿の予定だからいける」

キズナ・イノリ「「逝ける?」」

アオイ「その漢字やめて!?」

キズナ「まぁ苦しむのオマエだし?」

イノリ「私たち関係ないよね」

アオイ「おのれっ!そんなこというなら本編で君らにあんなことやこんなこーー」

キズナ「--そんなこんなで!」

イノリ「これからYEOを!」

キズナ・イノリ「「どうぞよろしくお願いします!」」

アオイ「あ!セリフとんな!あっ…よろしくおねがいします!」

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