表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

09 真実とは


「リリは本当に勝手だ」


キースが少し怒気を含んだ声色で続けた。

さっきも「勝手だ」と言われた気がする。私の記憶が正しければ…!

勝手って…いやもう、身に覚えが無さ過ぎて。


何がそんなにいけないのか。

私なりに努力してきたのに。

努力が全て裏目に出たのは知っている。


女らしくも無くて、綺麗でも無いし。

料理や裁縫より、馬の上で剣を振り回すのが得意で。


弱い女は嫌いって、そう言われたから…

努力して強くなったのに。

キースの隣に立ちたかったから、だから頑張ったのに。

方向性は間違ってたかもしれないれど…


それでも…!

勝手だ、なんて責められるほど、何かいけないことをしたというのだろうか。


情けない。

ただ、情けなくて…涙が一粒落ちた。


「…リリ」

「勝手って…私が、何をした、って…言うの…」


何もしていない。

責められるようなことは、何も。


「リリは、知らないんだろう」

「…何を」


涙を拭って、キースの顔を見る。

少し困ったように眉を寄せているキース。

いつも堂々としていて、綺麗で素敵なキース。

こんな困ったような表情は、あまり見た事が無い気がする。


「許婚を一方的に解消された俺の気持ちも、それからの俺の気持ちも…全部だ」

「一方的…?キースだって、何も言わなかったのに」

「確かに…あの時は何も言う事が出来なかった。後になって悔いた。ただ…許婚の解消は、リリの意思だったのかを確認したいと思った。だが…騎兵隊でも避けられた」


徐々に歪んでいくキースの顔。

何か苦しい思いを噛み潰すかのような…そんな印象を受けた。


もしかして…私がキースとの許婚解消を…望んでいたように思われていたりするのかな…?

勘違いでキースを苦しめていた…の?

許婚自体、キースにとっては同情とか恩とかから来ている「仕方が無いもの」だと思っていた。

親同士が勝手に決めたことだし。

いや、私はキースのことが大好きだけども、キースは私のことなんて、好きじゃないんだと思っていた。


弱くなくなって、嫌いな女では無くなっただろう。

でも…好きな女ではないのだと。


だから、あっさり許婚解消を受け入れたのだと思っていた。

私はその悲しさから逃げる為に、キースを避けていた。


知らないんだろう…


そう言われて、初めて気づく。

私の「知っているキース」は、私の想像の中だけ。

本当のキースの思いは、確認もしなかった。

ずっと、恐くて逃げていた。


「…違う。許婚の解消は…私の意志じゃない」


キースも同じなのかもしれない。

キースが「知っている私」も、真実の私では無いのかもしれない。


もしも。

可能性があるなら。

何だって良い。

どんな可能性だって構わない。


「キースは…どうなの…?」


教えて…欲しい。

今度は、逃げないから…


私が知らないキースの気持ちを、教えて欲しい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ