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11 衝撃


「ずっと、リリと結婚するつもりだった。だから、リリを他の男に渡すつもりは無い」


キースの言葉に、暫くの間…思考がストップした。

頭の中に鐘の音と共に、優雅な音楽まで響いてきた。

結婚式でよく歌われる賛美歌だ。


結婚…するつもりだった?他の男に渡すつもりはないって…!

それって…それって、告白なの?プロポーズってやつなの?!

そういう意味で受け取っても良いの…?


「キース…」


愛しいその名を口にして、無意識の間に抱きついていた。

キースの背中は、まわした両手が届かない程に広い。

温かなその体温に、たまらなく胸が苦しくなる。


もう一度、キスをして…互いに微笑みあった。

幸せ過ぎて、頭の中が真っ白だった気がする。


それから副隊長室の片付けを二人でして…

明日からの訓練内容を確認し、今後の予定を立てた。


「ジレルダ隊長、明日の第五部隊との訓練での球追いの練習試合は、午後からということでよろしいでしょうか?」

「…ああ」

「では、第三部隊のチーム編成も考えておいて下さい」


今日一日、色々びっくりしすぎて。

何も考えられないというか、考えていないというか。

脳が機能していなかったのかもしれない。

何事も無かったかのように普通に仕事をしてしまった。

キースが微妙に困惑した表情を浮かべていた気がするが…

慣れって恐いもので、私はあんまり思考が働かない中でも、凄くテキパキと仕事をこなしていた気がする。


淡々といつものように業務をこなし、気がつけば夜だった。



あー今日は疲れたーとお風呂に入って、自室で寛ぎながら、明日の予定表を眺めていた時…

私は突然、はっと思い出した。


「あれ、私…キースに告白された?!」


多分、人って衝撃が大きすぎると、

ちゃんと脳に伝達が行き、それをきちんと理解するまで時間がかかるんだと思う。

あまりの衝撃で思考が止まっていたのかもしれない。今、ようやく動き出したのか。

私の場合は衝撃が大きすぎて理解するのも、思考が動き出すのも…どうやら半日かかったらしい。


「どどど、どうしよう…」


そう言えば、キスもしちゃったんだっけ…!

記憶すらむちゃくちゃだ。今更、キスしたことを思い出して、一人で赤面する。


そして、慌てて鏡の前に向かった。

女は愛されると綺麗になるって…聞いたから!

でも相変わらずごっつい!

何これ、何も変わってない!


「…こんな女のどこがいいんだろ…」


魅力なんて何も無いのになぁ。

やっぱり強い女が好きなのかな…

「結婚するつもりだった」とは言われたけれど、「好きだ」とは言われていない。

強い子を残すには、強い女と結婚したいとか?

キースの家って、代々騎兵隊に所属しているとか聞いたから、そりゃ強い子が欲しいだろう。


いや、いいんだけどさ。

キースの妻になれるんだったら、何でもいいんだけどさ。

子孫繁栄の為、君の遺伝子が魅力的って言われても構わないけどさ。

この際、愛が無くてもいいやって思ってしまってるんだけどさ。

愛人が一人、二人いようが許しそうとか思ってしまってるんだけどさ…


なんだろう…

それって、かなり空しい気がする。


「今度…聞いてみようかな。私なんかのどこがいいの、って…」


強いところ、って言われたら…また筋肉トレーニングを頑張ろうかな。

でも、考えれば考えるほど、空しさが大きくなっていく気がした。


覚悟を決めるには、まだ少し時間が必要かもしれない。





次の日。

廊下を音を立てず、こっそりと歩く。

昨日、色々とあったので、どうも顔を合わせるのが気まずい。

隠れるように私は自分の執務室である副隊長室の扉の前にやってきた。


ここまでキースと顔を合わせなかった。

ちょっと安堵し、扉に手をかけた。

心を落ち着けてからじゃないと…キースと顔を合わせられない。


はあー、と溜息をつきながら部屋に足を踏み入れると…


「リリ、おはよう」


副隊長室の壁際に置かれている小さなソファに腰をかけ、キースは優雅にお茶を飲んでいた。

薔薇の柄のティーカップがとても似合う。

キースには大輪の花がとても良く合う。特に、薔薇のような美しい花が。

あまりにキースが爽やかに微笑むもんだから…ちょっと眩暈を覚えてしまうぐらいだった。


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