数字の誘惑
今週は二つのものが誘惑をしてきた。
ひとつは収支。
初当たりで三連複をゲットしているので、今月の収支は、新聞代を含めて、630円のマイナスだった。
固い決着でも取り戻せそうな金額である。
しかし、京都はハンデ戦。狙う馬はトップハンデだが、そこそこの人気。軸にする相手を少々穴から、とニシノビューイックとエーシンホワイティで悩み後者をとったが、掲示板に届かず、というところ。もちろん二着馬は三連複の相手に押さえてあった。東京は十番人気、十一番人気から上位へ流すという馬券になり、惨敗だった。
純粋な気持ちで楽しみたい、と思いつつも、そこはギャンブル。収支からの誘惑、オッズの誘惑はつきもので、幾度となく負けては悔しい思いをしている。
「私の収支などと関係ないところでレースは行われている」と自分にいいきかせ、なんとか回避していつもの買い方、いつもの予想でいけた。結果、ワイドで抑えておけば、辛うじてでもプラスに収支で一月を終われたのになどというタラレバはいうまい。
しかし、もうひとつの誘惑には負けた。
それは夢。
これまで、妹が夢に見た馬券であるとか、自分の夢に出演した馬が金杯をとったりであるとか、神様の啓示のような、お告げのようなことが何度かあった。
今回の夢は、競馬の結果を母に聞いている夢だった。用事があって買うことができなかったレースの結果を母から聞いていた。本命は四番。対抗が九番と十一番という予想で、結果は、九番、四番、十一番というなんとも悔しい万馬券という夢だった。
三場とものメインレースのどれをとっても、とんでもない配当の馬券である。しんがりくんに話すと、
「ないね」と一蹴されたが、結局抑えることにした。だって、もしも来たら非常に悔しい。神様からの暗示を受け取れなかったことで罪悪感が残る。今年一年、きっと忘れられない――などと、理由をつけて夢にみた馬券で夢をみた。競馬に絶対はないのだ。結果、収支マイナスに貢献する形となった。
しんがり君は三時間ほど悩んだ挙句、東京のレースでワイドをとり、何十円かプラスになったようだ。結構自信があったというなら、もっと買えばいいのに、と思っていたら、実はすでに口座の暗証番号を忘れて、大もうけしても引き出すことができないらしい。私が東京競馬場を案内するまで、競馬場に足を運んだことがなかったというので、馬券ファンなのかと思っていたら、そうでもないようだ。私の知らなかった競馬ファンのあり方をみせられたようでちょっと感心した。正解など、ないのである。
さて、二千円近くになった収支のマイナスをどうやって回収していこうか。一ヶ月、二千円で大いに楽しんだと思って、みなかったことにすることが、プラス収支への一番近道のような気もする。