春の嵐
先週、最後の出勤を終えた明け方、家に帰ってくると、
「お帰り」という労いのメモの横に、
「しんがり君の予想」というメモがおいてあった。酔っ払いであり、昼過ぎまで眠るであろうことが確定していた私は、更新も飛ばすつもりだったので、片目でみた。確か、「ガルボ」と書いてあった。大阪杯は、エイシンフラッシュとトウカイパラダイスだったか。
酔っ払いついでに、しんがり君をたたき起こし、ヤキソバを作ってもらって一口も分けてやらず完食してから眠ると、案の定発送時刻だった。またも、トリガミだったらしくぶつぶついっていた。自ら「しんがり君」を名乗ってしまったが、結構予想は当たっているのである。悔しい。
余談になるけれど、私は今週、新発売されたロト7を一口だけ買って末等を当てた。そういえばtotoの末等も当たっていた。しんがりというよりは、ぎりぎり掲示板というところだろうか。このまま二度とロト7を買わなければ、六百円の勝ち逃げとなるが、結局、初めて当たった番号を買い続けてしまうのだろうな、と思う。
今はまだ夜型がまだ治っておらず、結構長いお昼寝をしている。それでも前よりは時間があるから予想もしっかりするのではないかと自分に期待していたが、家のことをして、しんがり君が帰ってきてからは「かまってちゃん」の彼の面倒をみているとほとんど時間はないままだった。競馬から離れていた二、三年が、私を予想から遠ざけたのはいうまでもない。
競馬の世界で二、三年といえば完全に世代が代わっている。知らない馬も多いし、知らない騎手も多い。ルールまで変わっていることもしばしばで、時によってはレースの内容や開催時期が変わっていたり、レース自体が存在しなくなっていたりする。こちらにもまだリハビリが必要なようだ。
しんがり君は、私が晩御飯の食器を洗っている間、シンクの近くに設置されている自分のパソコンでせっせとネットで出走馬やその情報を調べている。なんやかんやとくっついてくるのなら、たまには食器くらい洗って欲しいものだが、如何せん、現在無職の身。働かざるもの食うべからず、なので黙って食器を洗いながら画面を盗み見するのだが、寄る年波か、一気に目が悪くなったので全く見えない。しかたなく、考えていることがすべて口から漏れているしんがり君の言葉を聞くのだが、考えていることなので支離滅裂。諦めて新聞を買って来てもらうことにする。
世代交代のもっともは、ブライアンズタイムの死だろう。二十八歳まで現役の種牡馬でいるとはすごい。GⅠウィナーの産駒もさることながら、重賞勝ちの産駒に親しみを感じる。マコトスパルビエロくんは、前回のエッセイにも登場しているはずである。
「サンデーもいなくなって、あと何がいるの?」
しんがり君が嘆いていたが、タニノギムレットという後継がいるではないか。ノーリーズンと同じ年なので忘れているのだろうか。
事故が原因であることがとても残念だけれど、牧場の方たちが一番残念だと思う。冥福を祈りたい。
さて、今週からクラシック。春の嵐であるからしんがり君の「お出かけしたい病」も治まってくれているだろう。新聞を買って来てもらってじっくり吟味したい。余りにも早かった桜前線の北上と、これからの嵐でサクラのない桜花賞になってしまうのではないか、などと心配しているけれど、しんがり君は、
「ぬれずに新聞を持って帰ってこられるか」ということを心配していた。
何よりもまず、無事の開催を願いたい。




