名前の魔力
コートの襟を立てても、寒くて仕方なかったのに、一転してTシャツにパーカーでも暑い初夏の陽気がやってきた。分厚いコートの奥に隠されていた腰周りには冬の遺物がまだたんまりと存在しており、焦ってエクササイズを始める傍ら、
「こんな陽気で桜花賞まで桜は散らないでいてくれるのかしら」と、毎年同じ心配をしている。
買い忘れないようにと、totoの予約購入をしたら、今回の分はすでに予約が締め切られていることに気がついたけれどすでに時は遅し。買い忘れてしまった分は、wIN5にまわそうと思う。
買うつもりはなかったのだけれど、中日新聞杯に手を出し、玉砕。中山牝馬ステークスは前にいけそうでハンデの軽いクイーンリヴィエラとサンシャインから人気どころへ流す三連複にしようと思う。ちなみに、最近予想は好調のしんがり君は、
「一番十四番と、五枠の二頭」らしい。ちょっとも予想が被らなかったので、期待している。
しんがり君に、競馬のエッセイを書いていることを話して、
「なんか面白エピソードないの?」と聞いたけれど、
「ないね」と一蹴された。昨年末の馬券がしんがりばかりだという話はもう書いたというと、
「なんで書いちゃうのよ」と笑っていたが、ちょっとすごい的中馬券をとって、この場に登場したいらしい。彼のアドレスにはノーリーズンのつづりが使われている。
桜へ直結するフィリーズレビューは、
「固そう」だからという理由でしんがり君はやらないそうだ。人気上位三頭で決着してしまいそうな気もするが、穴っぽいところを探す。
ダートで地方GⅠを勝ってきたサマリーズは気になるところ。唯一走った芝で、ハナを切った上でのあがりは悪くない。ナンシーシャインもそうだ。
人気上位のメイショウマンボとその相手に悩む。
タンスチョキンが気になる。どうしても気になる。こうやって書きながらいいところ、選べる理由を探してしまう。
「GⅠを勝つような馬名じゃない」と娘にはいわれそうだけれど、だからなおさら気になる。娘のその一言で蹴ったテイエムプリキュアを思い出す。秋ではあるけれど、まさかのティコティコタックが頭を過ぎる。オレハマッテルゼを追い続けていたというおじさんの顔が浮かぶ。
四十年前からキラキラネームの私は、ほとんど苗字を呼ばれたことがない。そしてその名前のお陰ですぐに覚えてもらえるけれど、その名前のイメージから本来の私とは全く違うイメージを抱かれることもしばしばある。
しかし、馬は自分の名前を知らない。
いや、知っているだろうけれど、それによって人生を、いや馬生を左右されることはない。キラキラネームをつけたことで左右されるのはオッズだけだ。
こうやって気になって買わないと来るだろうし、それはそれは悔しいことなので、WIN5をやめてこちらにまわそうと思う。
億万長者の夢は見られなくても、私の箪笥貯金は増やしてくれるかもしれない。




