ネーミング
久しぶりに母とお茶をした。
その昔、母は梅田のWINSの近くでウエイトレスをしていた時期がある。昼から勤務だった母は、金曜日の夕方に土曜日に仕事がある常連さんたちからメインレースの馬券を買ってくることを頼まれていたらしい。
まだポケベルも携帯電話も、もちろん馬番連勝馬券もない時代だ。「武」も「福永」も、「豊」でも「祐一」でもない、その父親世代だった。
当の本人は、パチンコですら自動ハンドルになったときに、
「自分でやってるんではない」とやめてしまうたちで、競馬には全く興味がなく、今でも宝くじを買って大きな夢をみているのが楽しみという程度で、その宝くじも末等以外の当せんを聞いたことがないくらいのくじ運しか持っていないのだが、梅田のWINSでは常連だったらしい。
しんがり君が、引き出すことすらできない口座で競馬をやり、時にはレースすらみないというと、
「それは馬券ファンなんやね。それで買った馬券は一着三着とかなんやろ?」と笑っていた。
ワイドと複勝でしか買わないことをいうと、
「ゲーム感覚やねんなぁ」と、インターネットゲームの達人となっている弟の話をはじめた。
後でしんがり君に、母のその話をすると、
「うーん、馬券ファンというより、予想ファン?
金額がどうであろうと、やっぱり買った馬券が外れるのは悔しい」と笑っていた。母には、買った馬が一着としんがりであることは伏せておいた。
中山記念は、そのしんがり君が点数を減らすために切ったダイワファルコンとアンコイルドの二頭を軸に流したけれど、シルポートは買っていなかった。
阪神競馬場は、「阪神」と名がつくけれども、最寄り駅は「阪急 仁川駅」で、阪神カップはGⅡで阪急杯はGⅢである。私は面白くなって、しんがり君に話したのだが、
「へえ」の一言で流された。馬券はその両方取れればいいな、とサンカルロ、武豊騎手騎乗のエピセアロームから流したけれどだめだった。武豊騎手への「買うと来ない」ジンクスは破られなかった。
こうして二月の収支はひたすらマイナスへ転じた。来週からは、春のGⅠへの匂いがぷんぷんしだすけれど、今週も雪が降りそうだ。
「競馬場の回数券、まだあるの?」としんがり君に聞かれた。まだまだあるけれど、特に期限があるわけではない。
「もったいないから暖かくなったらいこうね」といわれた。出不精の私を外に連れ出すには、それが一番と思ったらしい。どんなに高いヒールを履いていても、競馬場では一言も「足が痛い」といわなかったことを思い出したのだろうか。
「ダービーにはいく」
本当は一人で行きたいけれど、特別な入場券を買うから回数券はつかわないけれど、それは黙っておいた。
それからしんがり君。関東以外の地理に疎いのはわかるけれど、「関門橋特別」は「せきもんばし」ではなく、「かんもんきょうとくべつ」と読みます。




