エピローグ
エピローグ
1975 3/18
今日はクレタ島へ行って来た。
残念ながら僕の〈オーファン号〉ではなくてフェリーで。
着いて驚いた。ミロスと比べると桁違いに大きな島だった!
まずクノッソス宮殿に行った。ミノタウロスを捜したけど、残念、会えなかったよ! ナンテネ。
とはいえ、ここはハイスミスの話題作『迷宮の殺意』を読んで以来、
ぜひ訪れてみたいと思っていた処だ。
全体に枯れた雰囲気だった。
〈墓掘り人〉に勧められた考古学博物館へも行った。
石棺の壁画が素晴らしい! 一見の価値あり、だ。
百合の中に佇む王子はもとより、僕はその背景に痺れてしまった。
周囲の観光客は不思議に思ったに違いない。
何故って、僕は金縛りにあったように立ち竦んでいたから。
あの赤ときたら……
僕の故郷の島の夕焼けの色だ!
島の夕焼けは、世界中、何処でも同じ色なのだろうか?
クレタ人が繰り返し使う〈赤〉の意味がわかったぞ!
あれは夕焼けの色なんだ!
彼等(そして、僕等)島民に染み付いた燃える空の色!
勿論、それは僕らの体内を流れる血の色でもある……
*
そういうわけで、今日はちょっぴりホームシックだ。
僕の島が恋しいや。あの〈赤〉を見たからかな?
今夜ばかりは当地のサモス酒や、ウゾやレチーナなんかじゃなくて
「キール!」と叫びたい気分。
*
クレタ島特産のロゼワインで我慢してる。
帰りのフェリーの甲板で、今、それをボトルごと飲みながら僕は考えている。
いつの日か、愛する人とこんな風に夕焼けの海を眺めながら、
盃を交わす時が僕にも訪れるのかな?
それはどんな人だろう?
ああ、とても待ちきれない……
まだ見ぬ僕等の未来に、乾杯!
《 了 》
最後までお付き合い頂きありがとうございました!
感謝を込めて、本編にまつわる諸々を記しておきます。
☆モデルとした島は存在しますが地名や方角等は変えてあります。
作品の中でたくさん出てくる島の名の中に一回だけ名が出ています。
この島を選んだ理由は現在はホェールウオッチングとXXの楽園として有名だからです。
☆ギリシャの考古学者スピリドン・マリナトス氏は実在の人物、事故死も事実です。
その他、疑問・質問等ございましたらお気軽にお尋ねください!




