6.不自然な自殺
ブォオオオオン!──兄は車を飛ばした。
「後5分で着くからな!」
「そうか・・・って、スピード出し過ぎだろ!」
「五月蠅い!」
キイイイイン!──兄は豪快なドリフトを決め、コーナーを曲がった。
「うお!」
瞳は吹っ飛びそうになった。
「燃えるぜえ!」
兄は体中を燃やしながら叫んだ。
「兄貴、体火付いてっから!」
「黙ってろ!」
キイイイイン!──兄は再びドリフト。その度に瞳は、
「ぎょええええ!」
と、悲鳴をあげる。
「着いたぞ!」
兄は言った。
何時の間に着いたの?──瞳はそんな顔をした。
バタンッ!──瞳は車から降りた。
目の前には、5階建てのアパートが建っている。
瞳達は、そのアパートに入って行った。
505号室の前。
「此処だ」
ピンポーン!──兄はチャイムを押した。しかし、出て来る気配は無い。
兄は再び押してみた。が、やはり出て来る気配は無い。
「開けちゃおうぜ」
「それはまずい」
ガチャ──瞳は扉を開け、中に入って行った。
「入るなよ・・・って!?」
兄は何かを見た。
「死んでるぞ」
瞳は言った。
「見りゃ分かるよ」
「取り敢えず、降ろしてやらないか」
「そうだな」
二人は目の前で首を吊って死んでる女性の遺体を降ろした。
「こいつが香川 喜美子か?」
「ああ」
「おい、遺書があるぞ」
「何?」
瞳は部屋のテーブルに置いてあった遺書を取って兄に渡した。
──遺書
『小渕 孝之、鈴木 千恵を殺したのは私です。首を吊って死にます』
それは、ワープロで書かれていた。
(自殺・・・にしては変だな、この部屋。
首吊りに使った椅子は無いし、部屋には微かに甘い匂いが・・・甘い匂い!?)
その時、小川の顔が瞳の脳裏に過った。
「兄貴、オレは警視庁に戻る!」
「何で!?」
「真犯人が解ったんだよ」
「何だと!?」
兄がそう言った時、瞳は既にいなかった。
「ああっ、遺書が無え!
あいつ持って行きやがったな!?」
警視庁捜査一課取調傍観室。
瞳は息を切らしながらその部屋に入って来た。幸い、小川の取り調べはまだ行われていた。
ガタン!──瞳は取調室の扉を勢いよく開けて中に入った。
「小川っ、香川 喜美子を殺したのはお前だな!」
何この急展開?