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俺のスキル名が中二病すぎて長すぎるせいで発動しづらい

作者: 下空 想太郎
掲載日:2026/03/20

下空しもぞら 想太郎そうたろうです。

ローファンタジー作品です。

宜しくお願いします。

 その日、世界は終わりかけた。


 東京の空が、裂けたのだ。


 黒い亀裂の向こうから現れたのは、人ならざるもの――モンスター。


 銃弾は弾かれ、戦車は踏み潰され、戦闘機は空中で引き裂かれた。


 人類は、無力だった。


 絶望が世界を覆い、日常は次々とモンスターたちに破壊されていった。


 しかし三日後。


 世界中の空に、声が響いた。


『我は神である』


 姿は見えない。ただ、声だけが全人類の脳内に直接語りかけてくる。


『汝らに力を与える。抗え』


 次の瞬間、一部の人間に“何か”が刻まれた。


 神の恩寵――スキル。


 それを持つ者たちは、モンスターに対抗できる存在となり、こう呼ばれた。


 新たな人類──ニューマン、と。


 ◇


「うおおおおおお!! 《烈火斬》!!」


 炎をまとった一撃が、巨大な猪型モンスターを焼き裂いた。


「すごい……!」


「さすが健吾!」


 歓声が上がる。


 クラスメイトの中心で、健吾がドヤ顔をしていた。


 俺――相沢悠斗は、その光景を少し離れた場所から見ていた。


「……いいな」


 思わず呟く。


 シンプルで、かっこよくて、誰でも呼べるスキル名。


 ああいうのが普通だ。


 それに比べて、俺のは――


「悠斗、お前もニューマンなんだろ? やれよ」


 健吾が声をかけてくる。


 周囲の視線が集まる。


「……いや、俺はいい」


「なんでだよ?」


「……ちょっとな」


 言えるわけがない。


 俺のスキル名が──


 《“我こそは終焉なり”と宣いし全宇宙完全崩壊無限断罪剣 アイ・アム・ジ・エンド・オブ・オール・ユニバース・デストラクション・インフィニティ・ジャッジメントソード》


 ──だなんて。


 長い。

 イタい。

 しかも英語付き。


 そして最悪なのが――


 発動条件。


 “スキル名を大声で正確に叫ぶこと”


 無理だろ。


 こんなの人前で言えるか。


「もしかして使えないのか?」


「ハズレスキルじゃね?」


「ニューマンなのに?」


 笑い声が、じわじわと刺さる。


 でも、いい。


 恥ずかしい思いをするくらいなら、役立たずでいい。


 そう思っていた。


 ――その時までは。



 ニューマンたちはチームを組み、組織的にモンスターの討伐に当たるようになっていた。


 そんなある日。


「なんだよ……あれ……」


 現れたのは、明らかに格が違う存在だった。

 黒い鎧に身を包んだ騎士型モンスター。


 その一歩で地面が砕ける。


「みんな、下がれ!!」


 健吾が叫び、《烈火斬》を放つ。


 だが――

 あっさりと弾かれた。


「嘘だろ……!?」


 他のスキルも通じない。

 氷も雷も、まるで効いていない。


「ぐああああああッ!!」


 振るわれた剣の一撃で、健吾が吹き飛ぶ。


「健吾!!」


 そして仲間たちが次々と倒れていく。


 このままじゃ――全滅する。


 ――逃げるか?


 頭の中で、いつもの自分が囁く。


 俺は戦えない。

 こんなスキルを与えた神が悪い。


 だから仕方ない。

 仕方ないんだ……。


 ――本当にそうか?


 守れないのは仕方ない?

 違う! 逃げてるだけだろ、俺は!


「くそっ……ふざけんなッ!!」


 気づけば、倒れた健吾の前に立っていた。


「悠斗……?」


「……一回だけだ」


 手が震える。

 心臓がうるさい。


「聞くなよ」


「は?」


「絶対、聞くなよ!!」


 無理だとわかっていても、そう言わずにはいられなかった。


 そして――


 大きく息を吸う。 


 恥ずかしい?

 イタい?


 そんなの、どうでもいい。

 俺が、仲間を守る!!


「“我こそは終焉なり”と宣いし──」


 言った瞬間、空気が凍りついた。

 周囲から白い目で見られている気がする。


 やめろ。

 聞くな。

 でも、止めない。


「全宇宙完全崩壊無限断罪剣――」


 もう引き返せない。


「アイ・アム・ジ・エンド・オブ・オール・ユニバース・デストラクション・インフィニティ・ジャッジメントソード!!」


 ――静寂。 


 次の瞬間。


 世界が、終わった。

 いや、正確には“俺の世界が終わった”。 


 俺の手に現れたのは、黒く歪んだ剣。

 それは存在そのものを拒絶するような、異質な力。


 一振り。


 ただ、それだけだった。


 黒騎士が──

 音もなく、消滅した。


 その後。


「…………」


「…………」


「…………」


 沈黙。


 誰も、何も言わない。

 いや、言えないのだろう。


「……なに、今の」


 ぽつりと、誰かが呟いた。


「い……いや、その……」


 顔が、熱い。

 頼む……頼むから触れないでくれ!


「名前!!」


 健吾が叫ぶ。


「今の名前、なんだよそれ!!」


「聞くなって言っただろォォォ!!」


 俺は絶叫した。


 ◇


 その日を境に、俺の評価は一変した。


 “最強クラスのニューマン”。


 そう呼ばれるようになった。


 だが――


「悠斗! もう一回あれ頼む!」


「断る!!」


 無理だ。

 精神がもたない。

 恥ずかし過ぎる。


 だけど──

 もしまた、仲間が危機に陥ったら―― 


「その時は──」


 小さく呟く。


 その言葉が、

 どれだけイタくても──

 どれだけ長くても──


 それでもいい。


 仲間を──

 大切な人達を──


 守れるなら。


「……何度でも言ってやるよ」


 俺は、仲間のために振るう。


 《“我こそは終焉なり”と宣いし全宇宙完全崩壊無限断罪剣 アイ・アム・ジ・エンド・オブ・オール・ユニバース・デストラクション・インフィニティ・ジャッジメントソード》を。

最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
なんだか、すごく爽やかな青春の1ページみたいな気分で読みました。 変身モノの変身シーンめ決まり文句を大声で言いますが、本当にやれと言われてら、かなりの葛藤がありそうですものね。なんとなく恥ずかしさは想…
ま、まあ、中二病黒歴史ノートの自作ポエムじゃないだけまだセーフたから。 しかしカノウモビックリ(略)ササキリモドキみたいのならまだいいけど、ローレンス・ワトキンズ氏のフルネームみたいなのじゃなくてよ…
 悠斗のスキル名は厨二病っぽい、という以前に長過ぎて覚えられそうにない、と思ってしまいました。私など、好きな薔薇の品種名「アストリット・グレーフィン・(以下略)」でさえ、いつも最後まで正確に言い切れた…
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