俺のスキル名が中二病すぎて長すぎるせいで発動しづらい
下空 想太郎です。
ローファンタジー作品です。
宜しくお願いします。
その日、世界は終わりかけた。
東京の空が、裂けたのだ。
黒い亀裂の向こうから現れたのは、人ならざるもの――モンスター。
銃弾は弾かれ、戦車は踏み潰され、戦闘機は空中で引き裂かれた。
人類は、無力だった。
絶望が世界を覆い、日常は次々とモンスターたちに破壊されていった。
しかし三日後。
世界中の空に、声が響いた。
『我は神である』
姿は見えない。ただ、声だけが全人類の脳内に直接語りかけてくる。
『汝らに力を与える。抗え』
次の瞬間、一部の人間に“何か”が刻まれた。
神の恩寵――スキル。
それを持つ者たちは、モンスターに対抗できる存在となり、こう呼ばれた。
新たな人類──ニューマン、と。
◇
「うおおおおおお!! 《烈火斬》!!」
炎をまとった一撃が、巨大な猪型モンスターを焼き裂いた。
「すごい……!」
「さすが健吾!」
歓声が上がる。
クラスメイトの中心で、健吾がドヤ顔をしていた。
俺――相沢悠斗は、その光景を少し離れた場所から見ていた。
「……いいな」
思わず呟く。
シンプルで、かっこよくて、誰でも呼べるスキル名。
ああいうのが普通だ。
それに比べて、俺のは――
「悠斗、お前もニューマンなんだろ? やれよ」
健吾が声をかけてくる。
周囲の視線が集まる。
「……いや、俺はいい」
「なんでだよ?」
「……ちょっとな」
言えるわけがない。
俺のスキル名が──
《“我こそは終焉なり”と宣いし全宇宙完全崩壊無限断罪剣 アイ・アム・ジ・エンド・オブ・オール・ユニバース・デストラクション・インフィニティ・ジャッジメントソード》
──だなんて。
長い。
イタい。
しかも英語付き。
そして最悪なのが――
発動条件。
“スキル名を大声で正確に叫ぶこと”
無理だろ。
こんなの人前で言えるか。
「もしかして使えないのか?」
「ハズレスキルじゃね?」
「ニューマンなのに?」
笑い声が、じわじわと刺さる。
でも、いい。
恥ずかしい思いをするくらいなら、役立たずでいい。
そう思っていた。
――その時までは。
◇
ニューマンたちはチームを組み、組織的にモンスターの討伐に当たるようになっていた。
そんなある日。
「なんだよ……あれ……」
現れたのは、明らかに格が違う存在だった。
黒い鎧に身を包んだ騎士型モンスター。
その一歩で地面が砕ける。
「みんな、下がれ!!」
健吾が叫び、《烈火斬》を放つ。
だが――
あっさりと弾かれた。
「嘘だろ……!?」
他のスキルも通じない。
氷も雷も、まるで効いていない。
「ぐああああああッ!!」
振るわれた剣の一撃で、健吾が吹き飛ぶ。
「健吾!!」
そして仲間たちが次々と倒れていく。
このままじゃ――全滅する。
――逃げるか?
頭の中で、いつもの自分が囁く。
俺は戦えない。
こんなスキルを与えた神が悪い。
だから仕方ない。
仕方ないんだ……。
――本当にそうか?
守れないのは仕方ない?
違う! 逃げてるだけだろ、俺は!
「くそっ……ふざけんなッ!!」
気づけば、倒れた健吾の前に立っていた。
「悠斗……?」
「……一回だけだ」
手が震える。
心臓がうるさい。
「聞くなよ」
「は?」
「絶対、聞くなよ!!」
無理だとわかっていても、そう言わずにはいられなかった。
そして――
大きく息を吸う。
恥ずかしい?
イタい?
そんなの、どうでもいい。
俺が、仲間を守る!!
「“我こそは終焉なり”と宣いし──」
言った瞬間、空気が凍りついた。
周囲から白い目で見られている気がする。
やめろ。
聞くな。
でも、止めない。
「全宇宙完全崩壊無限断罪剣――」
もう引き返せない。
「アイ・アム・ジ・エンド・オブ・オール・ユニバース・デストラクション・インフィニティ・ジャッジメントソード!!」
――静寂。
次の瞬間。
世界が、終わった。
いや、正確には“俺の世界が終わった”。
俺の手に現れたのは、黒く歪んだ剣。
それは存在そのものを拒絶するような、異質な力。
一振り。
ただ、それだけだった。
黒騎士が──
音もなく、消滅した。
その後。
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙。
誰も、何も言わない。
いや、言えないのだろう。
「……なに、今の」
ぽつりと、誰かが呟いた。
「い……いや、その……」
顔が、熱い。
頼む……頼むから触れないでくれ!
「名前!!」
健吾が叫ぶ。
「今の名前、なんだよそれ!!」
「聞くなって言っただろォォォ!!」
俺は絶叫した。
◇
その日を境に、俺の評価は一変した。
“最強クラスのニューマン”。
そう呼ばれるようになった。
だが――
「悠斗! もう一回あれ頼む!」
「断る!!」
無理だ。
精神がもたない。
恥ずかし過ぎる。
だけど──
もしまた、仲間が危機に陥ったら――
「その時は──」
小さく呟く。
その言葉が、
どれだけイタくても──
どれだけ長くても──
それでもいい。
仲間を──
大切な人達を──
守れるなら。
「……何度でも言ってやるよ」
俺は、仲間のために振るう。
《“我こそは終焉なり”と宣いし全宇宙完全崩壊無限断罪剣 アイ・アム・ジ・エンド・オブ・オール・ユニバース・デストラクション・インフィニティ・ジャッジメントソード》を。
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