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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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## 91話 最強の右腕の夜明け

## 91話 最強の右腕の夜明け


夕方の炎の鍋亭。

営業前のひととき、2階の食卓には、いつものメンバーが揃っていた。


父さんと母さん。

それから、もうすっかり馴染んだレノ。


テーブルの真ん中には、大皿に盛られた大量の食事。

ちょっと遅い、家族の夕食だ。


「……ひとまず、話し合いだけで済んでよかったな」


父さんが、パンをかじりながら言った。

昼の組合長室でのやり取りを、ひととおり話していたところだ。


「ガラワ組の連中が凄んできたって聞いたときは、どうなることかと思ったぞ」


「うん。正直、あの空気は二度と味わいたくないね」


俺もスープを飲みながら、小さく息を吐く。


「でも、『金貨500、3カ月で用意する』なんて……」


母さんが、ちょっと呆れたように、でも心配そうに眉を寄せた。


「あんた、本当にそんな大金、用意できるの?」


「……正直に言うと、今のままじゃ無理だね」


「リバーシの利益だけだと、3カ月じゃどう考えても届かない。

だから、これからサント酒造のみんなと一緒に、ウイスキーの売り方とかを詰めていくしかない」


「大丈夫なの?」


母さんの声は、さっきより少しだけ低い。


「ガラワ組なんか待ってくれないわよ。

『払えませんでした。ごめんなさい』で済む相手じゃないんだから」


「……分かってる」


スプーンを置いて、顔を上げる。


「でも――きっと大丈夫だと思ってる」


「どうして?」


「サントエールのウイスキーが、本当に美味しいから」


言って、自分で少し笑ってしまった。


「ベック爺さんだって太鼓判押してくれたし、

サント酒造のみんなが本気で動いてくれるなら、3カ月で形にするのも、不可能じゃない」


〈……あとは、俺がちゃんとやり切れるかどうかだ〉


そう言うと、父さんがふっと笑った。


「まぁ、やるって決めたんだもんな」


「うん。『行けるところまで行く』って決めた」


母さんはまだ心配そうにしていたけれど、完全に否定することはしなかった。

スープを一口飲んでから、小さくため息をつく。


「……もう、あんたの『こういう顔』のときは、止めても無駄なのよね」


「分かってるなら、安心して見ててよ」


「安心はできないけど、信じてはるわよ」


母さんが、少しだけ口元を緩めた。


そのタイミングで、向かいに座っていたレノが、そっと姿勢を正した。


「……あの、ライムさん」


「ん?」


レノの真面目な声に、自然と視線が集まる。


「少し……話をしても、いいでしょうか」


「もちろん」


レノは一度だけ息を吸い込み、言葉を選ぶように口を開いた。


「正直に申し上げます」


かすかに、あの日と同じ言い回しだった。


「最初にお会いしたとき――俺は、ライムさんのことを『ただの子ども』だと思っていました」


「……まぁ、実際5歳の子どもだけどね」


そう返すと、レノは小さく笑って、それからすぐ真顔に戻った。


「でも、『ただの子ども』として見ていたのは、確かです。

姉からの手紙をもらって、『一度会ってみろ』と言われたから来た。

それだけでした」


「俺は、これまで『バルドさんに恩返しをすること』だけを考えて生きてきました」


レノの声が、少しだけ柔らかくなる。


「俺と姉を拾ってくれて、育ててくれて、剣を教えてくれて。

俺は、その人に『一生をかけて仕えたい』と思っていました」


父さんと母さんが、静かに耳を傾けている。


「だからこそ、『軍に行け』と言われたときも、その通りにするつもりでした。

『勧められた道だから』、

『そう言われたから』」


レノは、俺を見る。


「そんなときに、ライムさんに言われたんです」


「『誰かに言われたからそうするなんて、つまらない人間はいらない』と」


あの日、自分でもなぜか突き放すような言い方をした。


〈でも、レノには刺さったんだな〉


「正直、そのときは胸を殴られたような気分でした」


レノは、少しだけ苦笑する。


「『言われたから軍へ行く』つもりだった俺自身を、真っ向から否定されたようで」


「でも、そのあと――登録商会の話を聞いて。

リバーシのことを聞いて。

ベックさんのところで、新しいウイスキーの話を聞いて」


目線が、父さんと母さんに、一瞬だけ向く。


「みんなが得をする形を考えて、世界の仕組みを少しずつ変えていこうとしている姿を、間近で見ました」


その言い方には、少しだけ熱がこもっていた。


「サント酒造の件もそうです。

自分たちだけが助かるんじゃなくて、サントも、ガラワ組も、炎の夜明けも、全部が得する形を組み上げて……

それを、真正面からぶつけた」


〈まぁ、ガラワ組はだいぶ得してるほうな気もするけど〉

〈あっちには銅山の運営という試練が待ってるし、トータルではバランスは取れているはず……多分〉


「俺は、ずっと――『バルドさんに仕えたい』と思っていました」


レノが、はっきりと言う。


「その気持ちは、今も消えていません。

俺と姉にとって、バルドさんは『父であり恩人』ですから」


母さんが、少しだけ目を細めた。


「でも、今はそれと同時に、こうも思っています」


レノは、まっすぐ俺を見る。


「『この人のもとで働きたい』。

『この人の隣で、世界がどう変わっていくのかを見たい』」


〈……〉


胸の奥が、じん、と熱くなった。


「だから――」


レノは椅子から立ち上がり、俺のほうに向き直って頭を下げた。


「俺を、炎の夜明けで働かせてください」


その言葉は、はっきりとした声だった。


「俺は『ライムさんのもとで働きたい』」


「これからの炎の夜明けには、『護衛』が必ず必要になります。

ガラワ組。銅山。

どれも、綺麗事だけでは済まない話です」


レノは拳を握る。


「剣を握る人間が、ただ相手を倒すためじゃなく、誰かを守るために動く。

俺は、そういう役目を担いたいと思っています」


一呼吸おいてから、もう一度。


「必ず、役に立ってみせます」


部屋の空気が、しんと静まり返った。

父さんと母さんも、黙ったままレノを見ている。


〈ノーラさんが言ってた『バルドさんに恩がある』って話〉

〈あれは、ただの断り文句じゃなかったんだな〉


姉弟そろって、本気でバルド支部長を尊敬していて。

それでも――そのうえで、こっちに来たいと言ってくれている。


〈こんな人材、喉から手が出るほど欲しいに決まってるだろ〉


なのに、しばらく言葉が出てこなかった。


代わりに口を開いたのは、父さんだった。


「……ライム」


「なに?」


「うちの息子が、こんな『物騒な護衛』を雇ってもいいかどうかは、親としては悩むところなんだがな」


父さんはそう言いながらも、どこか楽しそうに笑った。


「50人でもすぐに制圧できるんだろ?」


「あ、はい。それは……」


レノが、少しだけ言いよどむ。


「頼もしいじゃないか」


父さんは、はっきりと言った。


「うちの息子は、気づいたら街全体を相手に商売を始めてるようなやつだ。

その隣に、剣を握ってくれる人間がいてくれるなら、これほど心強いことはない」


母さんも、苦笑混じりにため息をつく。


「もう……。

レノくんが本気でそう言ってくれてるなら、私から言えることはひとつだけよ」


「怪我だけはしないでね」


「はい」


レノが、まじめに頭を下げる。


2人の親の視線が、最後に俺へ向いた。


〈……よし〉


「――じゃあ、俺からも言わせて」


椅子から立ち上がり、レノのほうに向き直る。


「レノ」


「はい」


「『働かせてください』なんて、そんな言い方しないでよ」


一度、息を吸い込む。


「俺のほうから――『お願いします』」


「炎の夜明け商会の『俺の右腕として』。

これからも、一緒に働いてください」


レノの目が、かすかに大きく開いた。


「……いいんですか」


「うん。俺には、レノが必要だ」


はっきりと言い切る。


「サント酒造の話も、ガラワ組の話も、銅山の話も。

どれも、俺ひとりじゃ抱えきれないことばかりだ」


「でも、レノがいてくれたら――

『剣が必要な場』でも、『数字が必要な場』でも、『情報が必要な場』でも、

隣に頼れる人がいるって思える」


「それに」


少しだけ笑って付け足した。


「『世界を変える』って言い出して、ひとりで突っ走るなんて、かっこ悪いだろ」


レノは、ゆっくりと笑った。

それは、これまで見たどんな表情よりも、素直な笑顔だった。


「……

分かりました」


深く、深く頭を下げる。


「炎の夜明けの――レノとして」


「ライムさんの右腕として。

命が続く限り、お傍で剣を振るわせてください」


胸の奥で、何かがカチッとはまった気がした。


〈サント酒造との協力〉

〈ガラワ組とのJV〉

〈銅山の出資〉


どれも大きな収穫だ。


でも――。


〈一番の収穫はこの『最強の右腕』〉


そう思うと、不安よりも、不思議と楽しみのほうが大きくなっていく。


「よし」


俺は両手を広げる。


「じゃあまずは、『金貨500の作戦会議』からだな」


「はい」


レノが、少しだけ肩の力を抜きながら答える。


父さんが、呆れたように、でもどこか誇らしげに笑った。


「本当に、うちの子はどこまで行くんだか……」


〈行けるところまで、行く〉

〈俺は、ひとりじゃない〉

読んでいただきありがとうございます!

気づけばもうすぐ1万PV!ありがとうございます!


最強の右腕レノ加入!

イメージは一般家庭で家庭教師や塾なしに東大にいき、首席で卒業。最難関の省庁の花形部署に新卒で配属。しかもイケメンでいいヤツで強い。チートですね。これから活躍してもらいます。

引き続き楽しんでもらえたら嬉しいです。


このまま5話更新でいいでしょうか?

ペース早すぎないか少し心配ではあります。

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