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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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## 7話 儲けのカラクリと父の壁

## 7話 儲けのカラクリと父の壁


テトを仕込みに戻し、俺は今日の最後の任務に取り掛かった。

母さんから言い渡された、開店前の店の前の水撒きと掃除だ。


井戸から小さな桶に水を汲み、店の前の石畳に撒く。5歳の体には、これだけでもなかなかの重労働だ。


それが終わると、分厚い木の扉を押し開き、店内の掃除に移る。


炎の鍋亭は、このロンドールの飲食店としてはなかなかの規模だ。

入ってすぐのカウンター席が10席ほど並び、その向こうに厨房がある。

そして、ごつごつした木製のテーブルが10卓。詰めれば50人は入れるだろうか。


俺は濡らした布巾で、そのテーブルを一つ一つ丹念に拭き上げていく。

最近、西の鉱山が景気がいいせいか、うちの店も連日忙しい。

昨日も、鉱山労働者らしい体格のいい男たちが、夜遅くまで飲んでいた。


「ライム。真面目にやってるか」


厨房の奥から、低く、よく通る声がした。父さん――ゴードンだ。

大きな肉の塊を解体しているところだった。


「やってるよ。もうすぐ終わる」


「……ふん」


父さんは、俺がテーブルを拭く手元をじっと見ていたが、やがて意外そうな声を漏らした。


「お前、まだ5つだろう。いつの間にそんな手際を覚えた。テトの奴よりよっぽどマシだぞ」


「え?」


〈……まずい〉


言われてみれば、そうかもしれない。

俺は前世のバイト経験の癖で、布巾をこまめに洗い、一定方向に拭き、効率よく汚れを落とす作業をしていた。

普通の5歳児なら、水遊びのようにビシャビシャにして終わりだろう。

父さんの鋭い目は誤魔化せない。


「……父さん」


俺は、父さんの意識をそらすため、思い切って話を振った。


「うちの店って、儲かってるの?」


「……なんだ急に」


父さんは、肉を捌く手を止め、怪訝な顔で俺を見た。


「最近、忙しいだろ? 母さんも計算が合わないって頭抱えてたし」


「……まあな」


父さんは、ぶっきらぼうに答える。


「客が増えてるのは確かだ。この場所が良かったんだろう。

テトや給仕の連中、それに俺たち家族が食っていく分には、困らん程度には稼げてる」


〈やっぱりな〉

その言葉に、俺は確信した。


「……でも、忙しい割に、あんまり余裕がある感じはしないね」


「……小僧が知ったような口を」


父さんはそう言って、再び肉に包丁を入れた。


〈図星か〉


たぶん、父さんも母さんも「減価率」なんて考えていない。

仕入れた食材の原価がいくらで、それにいくら乗せればどれだけ利益が出るか。

そんな計算、破天荒な母さんにできるはずがないし、腕はいいが職人気質の父さんがやっているとも思えない。


忙しくなればなるほど、食材の仕入れも酒の仕入れも増える。

売上は増えるが、出ていく金も増えるから、手元に残る「儲け」は見た目ほど増えていないんだ。


「そういえば父さん、さっきテトに手伝ってもらって、ベック爺さんの酒樽、返してきたよ」


「ああ、ご苦労」


「ねえ、あの店のお酒って、いつから飲めるの?」


「……お前、本気で言ってるのか」


父さんがジロリと俺を睨む。


「15歳になるまでは夢のまた夢だ。くだらんこと考えてないで、掃除を終わらせろ」


「はーい」


〈15歳か……長いな〉


すべてのテーブルを拭き終わり、俺は布巾を片付けた。


「父さん、掃除終わった!隣のクララのところに遊びに行ってくる!」


「ああ。夕飯までには戻れよ」


店の扉を開け、俺は隣の洗い屋へ向かう。


〈さて、どうするか〉


道すがら、俺は父さんへの“プレゼン”の内容を組み立てていた。


〈父さんは職人だ。ただ『儲かる』と言っても動かない。

『マルタさんと契約した』なんて事後報告したら、ぶっ飛ばされるのがオチだ〉


狙うべきは、父さんの「余裕がない」という、あの言葉。


〈父さんの負担を減らす。そして、今ある売上の中から、確実に手元に残る金を増やす〉


つまり、「コスト削減」と「利益率の改善」だ。

あの頑固な親父を説得するには、5歳児のわがままではなく、具体的な「数字」を見せるしかない。

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