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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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## 57話 リバーシの商流会議

## 57話 リバーシの商流会議


クララの「KOMおわりです!」の合図で、炎の鍋亭の会議は一旦お開きになった。


椅子の軋む音と、挨拶の声が一斉に立ち上がる。


「それじゃあ、ライム君。組合長には、旅程とおおまかな話、ちゃんと伝えておくわね」


エリーナさんは軽く手を振って店を出ていった。


「坊主」


今度は、どすっと大きな影が目の前に落ちる。カチさんだ。


「今度、工房に顔を出してくれ。見せたいもんがある」


「見せたいもん?」


「この前の蒸留器だ。試作1号ができた」


「本当!? 明日にも行きます!」


〈マジか。もうできたのかよ〉


「楽しみにしとけ」


そう言い残して、カチさんもラークさんを連れて帰っていった。


その間にも、テトとヤトは洗い屋組と話をまとめて店を出ていき、

エッタさんとミナは「さて、ランチの仕込みに戻るわよ」と厨房に消えていく。


ハインズさんとサクラさん、クララも「じゃあまたね」と手を振って帰っていった。


残ったのは――テンドーさんと、マルタのおっちゃんだ。


「その……ライムさん」


テンドーさんが、少しだけ改まった声で口を開いた。


「もし時間があるなら、この後、リバーシの販売の件で、少し話をさせてもらってもいいかな?」


「もちろんです」


俺は即答する。


「今日は突然来ていただいて、本当にありがとうございます

こちらこそ、ぜひお願いします」


「がっはっは。面白かったぜ、さっきのKOMってやつもな」


マルタのおっちゃんが、ニヤニヤしながら椅子に腰を下ろした。


「リバーシの話、俺にも聞かせろよ」


「おっちゃんがいてくれると、本当に助かるよ」


俺は笑って、テーブルの上にリバーシ盤と、コマの入った布袋を置き直す。


「じゃあ――改めて、さっき会議で話した通りなんですが

リバーシの件で、正式に打ち合わせをお願いします」


「はい」


テンドーさんが、少し身を乗り出した。


「昨日、クララちゃんに『明日説明会だから来てね』って言われてね

まずは、うち――テンドー商会――のことを、きちんと説明させてもらってもいいかな」


〈クララ……どこまで話してるんだ〉


気になるが、結果的にテンドー商会の事情を聞けるなら、それはそれでありがたい。


「はい。お願いします」


「まずは――」


テンドーさんは、指を組んでテーブルに置き、ゆっくり話し始めた。


「今日は、本当に素晴らしいキックオフだったよ

うちが店を立ち上げた頃のことを思い出して、ちょっと興奮しちゃった」


「き、恐縮です」


「それで、リバーシなんだけどね」


目がきらりと光る。


「これは、本当に素晴らしい遊具だ。ぜひ扱わせてもらいたい

その前提で、うちのことを少しだけ」


テンドー商会の話は、簡潔だったが、要点がまとまっていた。


「うちは、ここロンドールの本店と、領都エステル、それから王都に支店がある

全部で3店舗だね。扱っているのは、主に道具類――」


「道具類?」


「うん。マルタ薪屋の木工製品

カチ鍛冶屋の金属製品を中心に

洗い桶や物干し、厨房の鍋や包丁、工具類も

炎の鍋亭さんにも、何度か厨房道具を納めさせてもらっているよ」


「製品は一級品だよ」


マルタのおっちゃんをちらりと見て、テンドーさんが苦笑した。


「腕のいい職人と組んでるからね。でも、よくある種類の製品でもある。ライバルが多くて苦労もしている

そこで――リバーシを、うちの看板商品のひとつにしたい」


そこで、一度区切るように俺の方を見る。


「ライムさんの側から聞きたいことがあれば、遠慮なくどうぞ」


「じゃあ……」


俺は、素直に気になっていたことを聞くことにした。


「テンドー商会さんのお客さんって、どんな人たちが多いですか?」


「主には、お店関係だね」


テンドーさんが指を折る。


「炎の鍋亭さんみたいな食堂や宿屋

洗い屋さん、染め物屋さん、大工や鍛冶屋――職人たちも道具を買いに来る

あとは、一般のお客さんも、それなりに多いよ。鍋や桶、縄なんかは、どの家でも使うからね」


「なるほど」


〈リバーシで遊びたい層――酒場で遊びたい人、家にひとつ遊び道具を置きたい人――は、だいたいここを通るわけか〉


テンドーさんは、にやりと笑った。


「さっき話した3店舗

それぞれの街で、道具を通じていろんな事業者と個人と繋がりがある

炎の夜明け商会の看板商品を扱う店としては、なかなか悪くないんじゃないかな?」


「うちの製品も、ずっと扱ってくれてるからな」


マルタのおっちゃんが、ふん、と鼻を鳴らす。


「木工品の流れは、もう出来上がってる

リバーシも、他の荷と一緒に、そのまま今のルートで動かせるぞ」


〈新しく商流をいちから作らなくていいのは、かなりでかい〉

〈すでにあるパイプに商品を乗せるだけでいい〉


「だからこれは、こちらからのお願いでもあるけれど――」


テンドーさんが、改めて姿勢を正す。


「炎の夜明け商会にとっても、悪くない取引先になれると思う」


〈……やっぱり、この人もしっかり商売人だ〉

押しつけるんじゃなく、お互いに得があるとちゃんと説明してくるあたり、好感度が高い。


「マルタさんも――」


テンドーさんが視線を向ける。


「リバーシの盤も、うちで扱わせてもらえれば嬉しいです」


「もちろんだ」


マルタのおっちゃんは、ニヤッと笑う。


「むしろ、盤も一緒に売ってくれると助かる。うちも販売所って感じじゃねえからな」


「それでね、ライムさん」


テンドーさんが、こちらに向き直る。


「ここからが、提案なんだけど」


「はい」


「うちの取引先で、革製品を扱ってる工房があるんだ

そこで――リバーシのコマだけが入る革袋の梱包と、コマと盤の両方が入る大きめの梱包、その2種類を作ってもらおうと思う」


「2種類の革袋……」


「そう

コマだけの商品と、コマ+盤セットの商品、2本立てで売り出す。どうかな?」


〈……すご〉

そこまで、正直あまり考えられていなかった。


「それは、いいですね!」


素直に声が出た。


「コマだけなら、そこまでお金が出せない人や、既に盤を持ってる人、別の盤で遊びたい人も買えるし

盤とセットなら、すぐ遊びたい人向けの完成品だ」


「でしょ?」


テンドーさんが嬉しそうに笑う。


「で――お金の話なんだけど」


〈きた〉


「うちとしては、卸値に対して3割くらいは利益を出したいんだ

革袋の原価や、店の人件費、場所代もあるからね。どうだろう?」


頭の中で、ざっと数字を引き出す。


〈リバーシのコマの原価は、1セットで銀貨2枚と銅貨5枚(2,500円相当)くらいに見積もってる

そこに袋が銅貨5枚(500円相当)で考えてた……〉


「えっと、袋ってどれくらいかかりそうですか?」


「革袋そのものの原価なら、銅貨5枚(500円相当)くらいで十分だと思う

紐と、刻印を少し入れて、それくらいかな」


〈うちはコマで銀貨2枚と銅貨5枚(2,500円相当)が製品としての原価

そこに袋の銅貨5枚(500円相当)、あとはテンドー商会の梱包と販売手数料……〉


「わかりました」


俺は、腹を決める。


「じゃあ、リバーシのコマ一式は――銀貨8枚と銅貨5枚(8,500円相当)で卸させてください」


「銀貨8枚と銅貨5枚(8,500円相当)……?」


テンドーさんが、少し目を丸くする。


「組合長には、リバーシ1セットを銀貨10枚(10,000円相当)くらいで、って説明してたんですけど

あれは『コマだけ、麻袋に入れた簡易品』のイメージだったので

ちゃんとした革袋入りの製品として出すなら、革袋の銅貨5枚(500円相当)とテンドー商会の利益を乗せて、少し上げても問題ないはずです」


「ふむ……」


テンドーさんは、手元で指を折りながら計算している。


「坊主……」


横からマルタのおっちゃんが、呆れたように、それでも楽しそうな声を出した。


「お前、本当にとんでもないな」


「え?」


「テンドーよ」


マルタのおっちゃんが、テンドーさんに向き直る。


「盤は、銀貨6枚(6,000円相当)でいい」


「……いいんですか?」


「いい。あんなもんは、ただの板にマスを塗るだけだからな

それに、そのうち高級盤も作る予定だ。金持ちはそっちを買うさ」


〈おっちゃん、相変わらず振れ幅がえぐいな〉

〈でも、高級版を用意しておく発想は、マジで大事なんだよな〉


「……分かりました」


テンドーさんは、しばらく計算してから、決意したように顔を上げた。


「では――コマ単体の商品は、銀貨12枚(12,000円相当)

盤とコマセットは、銀貨22枚(22,000円相当)で行きましょう」


「銀貨12枚と、銀貨22枚……」


「うちの仕入れが――」


テンドーさんが、簡単に整理してくれる。


「コマの仕入れが銀貨8枚と銅貨5枚(8,500円相当)

盤の仕入れが銀貨6枚(6,000円相当)

コマだけの場合は、革袋の原価が銅貨5枚(500円相当)くらい

盤セットの方は、もう少し大きな革と箱が必要だから、もうちょっと原価は上がるけど……」


「それでも十分、こちらも利益が出ますし」


テンドーさんは続ける。


「この値段なら、高いけど、その分ちゃんとしてるって印象で売れると思う

正直、これでも安い気がするよ」


「俺も、いいと思います」


俺は素直に頷いた。


〈今は麻袋に入れて、とりあえず売ってるだけのものが銀貨10枚(10,000円相当)

そこから見れば、革袋+ちゃんとした盤付きで銀貨22枚(22,000円相当)は、むしろお得に見えるはずだ〉


〈それに、数が出てくれば、原価も必ず下がる

そうなれば――こっちの利益も、みんなに還元できる〉


「革袋には、ちゃんとロゴも入れてくれるんだよな?」


マルタのおっちゃんが、ニヤニヤしながら聞く。


「もちろんです」


テンドーさんが笑う。


「炎の夜明け商会の紋章が決まったら、革工房に見本を渡しておきます」


〈さっき、ミナが『ロゴ考えたい!』って張り切ってたな〉

〈一回、ちゃんと話を振ってみるか〉


「じゃあ――」


俺は、改めてテンドーさんとマルタのおっちゃんに向き直る。


「コマの卸値は銀貨8枚と銅貨5枚(8,500円相当)

盤の卸値は銀貨6枚(6,000円相当)

コマ単体の商品は銀貨12枚(12,000円相当)、盤セットは銀貨22枚(22,000円相当)で販売

梱包と販売は、テンドー商会さんにお任せする――ということで、間違いないかな」


「こちらは、それで問題ないよ」


テンドーさんがうなずく。


「革工房への話は、こっちで進めておく

紋章のデザインが決まったら、できるだけ早く教えてほしい」


「うちも、それで構わねえ」


マルタのおっちゃんが、ガハハと笑う。


「盤の注文が増えてくれりゃ、うちの若いのにも、いい仕事が回る

炎の夜明けの商売、乗らない手はねえさ」


「じゃあ――」


俺は、二人に向かって深々と頭を下げた。


「改めて、よろしくお願いします」


「こちらこそ」


「任せとけ」


鍋の煮える音と、厨房から聞こえるミナの掛け声を背に、

炎の鍋亭の一角で、リバーシの商流がひとつ形になった。


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