## 40話 リバーシの組合長(こうこくとう)
## 40話 リバーシの組合長
リバーシの盤が入った袋は俺が持ち、コマの詰まった麻袋(20セット入り)はテトに持ってもらって、組合本部へ向かった。
「それにしても」
テトが袋を持ち直しながら、感心したように言う。
「マルタのおっちゃんは本当に抜け目がないよな。あの人、木材だけじゃなく、木材を切り出す山までいくつか持ってんだってよ? 聞いたことあるぜ」
〈テトはどこでこういう話を仕入れてくるんだろうな〉
「自分で切り出して、自分で売る。そりゃ儲かるね!それに板の端材も大量に出て、俺もリバーシを作れるんだけどね」
「なるほどな……元がタダみたいなもんか。やっぱ頭いいよ、ライム坊は」
そんな会話をしながら組合に到着し、俺はカウンターに声をかけた。
「こんにちはー!」
「あら、ライム君こんにちは!」
エリーナお姉さんが笑顔で迎えてくれる。
「今日はクララちゃんは一緒じゃないのね。……ふーん、代わりにテト君と。そういうのもアリね」
「ち、違うよ! 今日は組合長に用事があるんだ!」
「うふふ。はいはい、わかってますよ。組合長室へどうぞ」
組合長室では、アイザットさんが案の定、例のリバーシ盤とにらめっこしていた。
「組合長、こんにちは! リバーシ持ってきたよ! 注文の20セット!」
「おお、ライム君か! よく来た!」
組合長は、子供のように目を輝かせた。
「これで仲間も喜ぶぞ!」
「それとね」
俺は、自分が持ってきた袋から、マルタのおっちゃん特製の「リバーシ盤」を取り出した。箱型で上部にはきれいにマス目が入っており、蓋を開けるとコマが収納できる仕切りがある。
「マルタのおっちゃんが、盤のサンプルを作ってくれたんだ。もし盤が欲しい人がいたら、マルタの薪屋に直接注文してくれって。これは銀貨10枚だってさ」
「おおっ!」
組合長は、その盤を手に取り、目を見開く。
「これは……素晴らしい! 中にコマがぴったり収まるようになっているとは! これが銀貨10枚か。うむ、これは欲しい。本当に、マルタさんはいい仕事をする」
〈組合長は最高の広告塔だ。マルタのおっちゃんも、この人にこのサンプルを持たせれば、他の幹部連中にも盤が売れるって分かってて、俺にこれを持たせたんだろうな〉
組合長は、まるで生まれたての娘を扱うかのように、その木箱を優しく抱え込んだ。
「じゃあ組合長、これが請求書ね」
「ああ、そうだった。確かに。……よし、金貨2枚だ」
俺が金貨を受け取ると、組合長は商人の顔に戻って尋ねた。
「それで、君の『ぷろじぇくと』の方は順調かね?」
「うん! 今日からエリーナさんのお母さんと妹さんが、うちの店に来てくれてるよ。あと、明後日には、馬を受け取りにテトの実家まで行ってくんだ」
「おお、そうか! じゃあ、馬を連れてくるのはもうすぐかな?」
「はい!」
俺の後ろに控えていたテトが一歩前に出る。
「3日後には馬を連れてきますので、馬小屋を使わせてください。荷車もお願いします」
「わかったわ」
同席していたエリーナお姉さんが、手元の羊皮紙に書き込む。
「荷車の方も、3日後には使えるように準備しておくわね」
「ありがとうございます! 詳しくは、組合の馬番の方と話を詰めておきます!」
テトが力強く頷いた。
「あ、それと父さんから伝言」
俺は組合長に向き直る。
「『法人化』の件で、今度ゆっくり相談に伺いたいって言ってた。書類が複雑で助けてほしいって」
「わかった。ゴードンさんにいつでも待っていると伝えておいてくれ」
部屋を出る時、テトがエリーナお姉さんと組合長に、もう一度深々と頭を下げているのが見えた。
〈テトの奴、意外と礼儀正しいな。こういうところはしっかりしてる〉
俺は、今まで厨房でジャガイモの皮を剥いてばかりいた彼に、少し感心した。
「よし、テト! 最後の確認だ。カチさんのところに行くぞ!」
「おうよ、ライム坊!」




