表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/60

## 35話 交渉ツアーと商人の「鼻」

## 35話 交渉ツアーと商人の「鼻」


洗い屋との契約を終え、俺たちは市場へ向かった。時刻は、ちょうど昼の鐘が鳴る少し前だ。


〈父さん、さっきから黙ってるな……〉


隣を歩く父さんは、契約書の羊皮紙と、その前を嬉しそうにスキップするクララを交互に見て、何やら難しい顔をしている。


「……ライム」

「なに?」

「あの『ぷろじぇくと』とかいう言葉」

「うん」

「……あれも、お前がクララに教えたのか?」

「うん、昨日、一回言っただけだよ」

「……そうか。一回言っただけ、か」


父さんは、まだショックを受けているようだった。


市場に着き、まずはマルタの薪屋へ向かう。店の前では、マルタのおっちゃんが威勢よく薪割りをしていた。俺が声をかける。


「おっちゃん!来たよ!」

「おう坊主!こっちはゴードンさん!待ってたぜ!手紙、読んだぜ!」


斧を置いたおっちゃんの視線が、父さんの隣にいるクララで止まる。


「で、こっちの可愛いお嬢ちゃんは?」

「私はクララと言います。洗い屋をやっています!」


クララは一張羅のワンピースで、きちんと挨拶を決めた。


「おお、クララちゃん!アインズんとこの嬢ちゃんか!いやいや、こりゃどうも!どうせカチの旦那とも話すんだろ?さっき話してきた。一緒に話した方が早いだろうから、鍛冶屋に移動するぜ」

「ありがとう!助かるよ!」


相変わらず段取りが早い。マルタのおっちゃんを先頭に、俺と父さんとクララの3人は、隣のカチ鍛冶屋へ移動する。


中に入ると、工房の熱気と共に、カチさんが弟子に怒声を飛ばしている、いつもの光景が広がっていた。


「旦那!例のやつら連れてきたぜ!」

「おう!あっちの客室に入っといてくれ!」


声に促され、俺たちは工房の隅にある来客用の防音室に入る。


「わあ!すごい!」


壁に飾られた武具に、クララの目が輝く。


「かっこいい槍とか斧?がいっぱい!」

「おお、嬢ちゃん。こりゃハルバードっていうんだ」

「ハルバード!かっこいい!クララ使ってみたい!」


〈クララさん、バトルもいけちゃうの……?〉


少しすると、カチさんと弟子のラークさんが入ってきた。父さん、マルタのおっちゃん、カチさん、ラークさん、俺、クララ。全員が席に着き、簡単な自己紹介を済ませる。


「さて、ゴードンさん。こっから始めてくれ」

「はい」


父さんは居住まいを正し、マルタのおっちゃんとカチさんに向き直った。


「本日はお時間をいただきありがとうございます。いつも息子がご迷惑をおかけしております」


深々と頭を下げる父さんに、2人は慌てて手を振る。


「いやいや、とんでもない!こちとら、この坊主のおかげで何十年ぶりに燃えてるんでな。むしろ感謝してるくらいだ」

「そうだぜ、ゴードン!」


マルタのおっちゃんが笑う。


「そんなのはいいんだよ!俺も楽しませてもらってるぜ!」


「……ありがとうございます」


父さんが顔を上げた、その時だった。


「はい!」


クララが、またしてもぴん!と元気よく手を挙げた。


「え?」


父さんだけでなく、マルタのおっちゃんもカチさんも、いきなり手を挙げた5歳児に面食らう。


「ライムが考えた『ぷろじぇくと』はですね……」


クララは、午前中にアインズさんたちへ説明したのと同じ要領で、俺の事業計画の概要を淀みなく語り出した。

馬車を買うこと。テトとヤトが配達をすること。洗い屋が配達から解放され、洗浄を請け負うこと。そして、市場のみんなにお弁当を売ること――。


「…………」


カチさんとマルタのおっちゃんが、完全に固まる。


「コホン」


父さんが2人の硬直を解くように咳払いした。


「……そういう訳でして。マルタさんには、素材――松の端材とヒノキ材――の提供と、リバーシと酒札の塗装の仕事を。カチさんには、正式に弁当箱の金型の発注と、プレス作業の委託をお願いしたいと考えています」


「おう」


マルタのおっちゃんが、先に我に返る。


「うちの取り分は、マツの端材とヒノキの板の供給、それにリバーシと酒札の塗装だな。金額はこの前坊主と話した通りで構わねえぜ」

「うん」


「金型は引き受けた」


カチさんが重々しく頷く。


「金貨2枚だ。金型の製作と、当面のプレス作業はラークが責任を持ってやる」

「はい!任せてください!」


ラークさんが力強く応じる。


「あ、でも師匠。俺も早く鍛冶の仕事に専念したいので、もし発注の量が増えてきたら、作業は他の方を斡旋してほしいです」

「がっはっは!その時はうちに言ってくれたらと思うぜ」


マルタのおっちゃんが、プレス機の設置場所――製材工場――の件も引き受ける形で笑った。


「わかりました。何から何まで本当にありがとうございます」


父さんが金貨2枚をカチさんに渡し、再び深く頭を下げる。


「よかったね!おじさん!」


クララがパッと顔を輝かせ、俺が用意していた羊皮紙の契約書をテーブル中央へ押し出した。


「じゃあみんな、約束の紙にお名前書いてね!」


あまりにも堂々とした仕切りに、その場の大人全員が一瞬引いた。父さんも、マルタのおっちゃんも、カチさんも、「5歳児とは一体何なのか」と思考の彼方へ飛んでいく。


「ん?どうしたの?早く名前書いてね!」


クララが不思議そうに全員の顔を覗き込む。


こうして、俺の事業の根幹となるマルタのおっちゃんとカチさんとの商談は――ほぼクララのおかげで――無事に終わった。


〈……俺、今回、本当に『うん』しか言ってないな……〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ