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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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## 27話 酒札の運用テストと父の勘違い

## 27話 酒札の運用テストと父の勘違い


俺は、先程ラークさんから受け取った、プレスしたての木のコマ100枚が入った麻袋を握りしめ、そのまま隣の「マルタの薪屋」へ向かった。


「おっちゃん!こんにちは!」

「おう、ライム坊。どうした?」

「うん。おっちゃんにお願いがあるんだ。これ、ラークさんにプレスしてもらったコマなんだけど、これに色を塗ってほしいんだ」


俺が麻袋からコマをいくつか取り出して見せる。


「店の『酒札』として使いたいんだ。この100枚のうち、30枚を真っ黒に、20枚を真っ白に塗ってもらえる?」

「おう、例の酒札か。任せとけ」


マルタのおっちゃんはニヤリと笑う。


「塗装代は、前に見積もった通り、100枚で銅貨5枚と言いたいところだが、今回はサービスしてやる」

「ホント!ありがとう!」


――その日の夕方。開店前の「炎の鍋亭」。


「父さん、これ。酒札のサンプルができたから、今夜から試してみてほしいんだ」


俺は、マルタのおっちゃんから受け取った、黒と白にピカピカに塗装されたコマと、無塗装の木のコマをテーブルに並べた。


「ほう、これが」


父さん――ゴードン――はコマを1つ手に取る。


「たしかに、前にマルタがくれたリバーシのコマみたいに、綺麗な丸だな」

「うん。カチさんの『プレス機』なら、簡単に、全部同じ形がたくさん作れるんだ!」


俺は、自分で用意した羊皮紙の価格表を見せる。


「使い方はこう」

「まず、お客さんのテーブルに適当な皿を置いとくんだ」

「注文が来たら、給仕の人がこの札を皿に入れていく」

「エールは木の色――無塗装――で、銅貨5枚」

「ワインは黒で、銅貨6枚」

「果実水――ソフトドリンク――は白で、銅貨2枚」

「会計の時は、この価格表を見ながら皿の上の札を数えるだけ。最後に、帳簿に『黒が何枚、白が何枚』って数を書き留める」


「……なるほどな」


父さんは腕を組んで頷く。


「これなら、誰がやっても間違えようがない。たしかに分かりやすい」

「よし、ライム。今夜、何組かの客で試してみよう」


――次の日の朝食。


いつもの山盛り卵炒めが並ぶ中、父さんが切り出した。


「ライム。昨日のお前の『酒札』、やってみたぞ」

「どうだった!?」

「ああ。給仕の連中も、分かりやすくて間違えないからすごく良いって言ってた」


父さんは、ぶっきらぼうながらも感心した様子で続ける。


「忙しくなると、たまに鉱山の連中あたりから『そんなに飲んでないぞ』って言われることもあったんだが……これなら客の目の前に札があるから一目瞭然だ。揉め事がなくなる」


〈よっしゃ!〉


俺は内心でガッツポーズした。店の長年の課題だった請求漏れが、これでようやく解決する。


「父さん、母さん、ありがとう!」


俺は興奮を抑え、すかさず次の布石を打つ。


「あ、そうだ母さん。この前、マルタのおっちゃんに持って行ったお弁当あっただろ?あれ、材料費ってどれくらいかかったの?」

「ええ?そんなの……分からないわ」


母さん――サラ――が首を傾げると、父さんがすかさずツッコミを入れた。


「サラ……。まあ、あの分量なら、材料費は銅貨2枚くらいだろうな」

「銅貨2枚か。そっか、ありがとう!」


「弁当がどうかしたのか?」


父さんが怪訝な顔で俺を見る。


「うん。この前、父さんに『考えて報告しろ』って言われた話なんだけど……」


俺は、父さんに響きそうな言葉を選ぶ。


「市場の人たち、昼ごはんに困ってるみたいだっただろ?だから、うちのお弁当が配れたら、すごく喜ぶんじゃないかなって思って」


「ほう……弁当か」


父さんは、マルタのおっちゃんや組合長が昼飯に困っていたのを思い出したようだ。


「そうか。うちも組合やマルタには世話になってるしな。大金は払えないが、うちの弁当で喜んでもらえるなら、いいアイディアだ」


〈あ、なんか『恩返し』とか『慈善事業』みたいに受け取ってるな。まあいいか、今は〉


俺は、父さんの勘違いをあえて訂正せず、笑顔で頷いた。


「うん!ちゃんと提案まとめてるから、もう少し待っててね!」

「じゃ、歯磨いてくる!」


――水場へ向かう俺の背に、2階の居間から母さんのクスクス笑いが追いかけてきた。


「なんだ、サラ。何を笑っている?」

「あんた、あの子が『恩返し』なんて殊勝なこと、本気で考えてると思ったのかい?」

「え……違うのか?」

「あの子が考えてるのは『商売』だよ。私たちよりよっぽど、金勘定にシビアじゃないか。きっと、あの弁当でいくら『儲ける』か計算してるよ」

「う……」


ゴードンは冷や汗をかくのであった。


――――


俺は粗塩で歯を磨きながら、次の計画を練る。


〈酒札はうまくいった。父さんも弁当作戦に前向きだ。原価は銅貨2枚。いくらで売ろうか〉


〈その前に、最大のネックは『弁当箱』だ。カチさんとマルタのおっちゃんのところで、製造コストの確認をしないと。あと、酒札の追加発注も頼まないとな〉


俺は、今日の予定を頭の中で確定させた。

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