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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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## 25話 足りない元手

## 25話 足りない元手


テトとの打ち合わせを終え、俺は厨房を後にした。


〈よし、馬の調達ルートと維持費、人件費――テトとヤト――の目処は立った。これで「ランチボックス作戦」のOPEX(運用コスト)はほぼ見えた〉


残るはCAPEX(初期投資)だ。


俺は懐で、昨日組合長――アイザット――から受け取った金貨1枚の重みを確かめる。


〈カチさんに確認するのは、まず「プレス機」のレンタル代。それと、あの機械はテコの原理を使っても、5歳の俺の力じゃ動かせないから、誰かに作業をお願いする費用。最後に、「弁当箱」の新しい金型の見積もり……とりあえず、これくらいかな〉


俺は市場の奥、槌の音が響く「カチ鍛冶屋」へと向かった。工房の中は、昨日にも増して熱気がこもっている。カチさんが弟子に怒声を飛ばしているのも相変わらずだ。


「すいませーん!」

「すいませーん!!」

「すい――」

「うっせえ、聞こえてるわ!あっちで待ってろ!」


カチさんに怒鳴られ、俺はそそくさと工房の隅にある防音室――来客用――に逃げ込んだ。扉を閉めると、カンカンという甲高い音がくぐもって遠くなる。


〈やっぱりこの部屋すごいな……〉


「おう、坊主」


部屋の中には、なぜか先客がいた。


「あ、マルタのおっちゃん!こんにちは」

「カチの旦那に呼ばれてな。『プレス機』の改良とかで、昨日から付き合わされてるんだ。あいつ、昼間は弟子の指導があるからって、夜通しプレス機をいじってたぞ」


〈カチさん、すごい熱量だ……〉


俺が感心していると、カチ本人が目をギラつかせて入ってきた。


「おう、坊主!よく来たな!プレス機を使いに来たのか?」

「う、うん!それと、相談もあるんだけど」


俺は、あの機械を動かすには自分の力が足りないことを正直に話した。


「プレス機、俺がやるには力が足りないんだ。誰か、代わりにやってくれないかな?」

「ああ?……まあそうか。そういやお前、ちっちぇえガキだもんな」


カチさんはガシガシと頭を掻くと、「おい、ラーク!」と工房に響く大声を上げた。すぐに、日焼けした肌の、ガタイのいい若い男が部屋に入ってきた。


「こいつはラーク。最近入った弟子だ。なかなか筋も悪くねえ。とりあえずこいつにやらせろ」

「ありがとう、カチさん!よろしく、ラークさん!ラークさん、とりあえず100枚お願いできる?」

「おう!任せとけ、坊主!」


「それでね、カチさん」


俺は本題に入る。


「プレス機を使わせてもらうのにお金がかかると思うんだ。レンタル代とか、ラークさんの作業代とか」

「ああ?金だと?」


カチさんは、心底どうでもよさそうに顔をしかめた。


「そんなもんどうでもいい。それより、あのテコの圧力をだな――」

「カチの旦那」


マルタのおっちゃんが助け舟を出してくれた。


「こいつは、そういうのをキッチリしたいタチなんだよ。『うぃんうぃん』ってやつだ。それに、このプレス機がちゃんと『商売』になりゃ、うちの端材も売れ続けるんだからな」

「……ちっ」


カチさんは舌打ちしたが、しぶしぶ計算を始めた。


「プレス1回(コマ10個)で、銅貨3枚だ」

「え?」

「刃が欠けた時の研ぎ代と、マルタのところに――端材を――取りに行く手間賃、ラークの作業代とレンタル代だ。そんなもんでいいだろ」

「じゃあ、端材は?」


俺がマルタのおっちゃんを見ると、彼も計算盤を弾いた――フリをした。


「そうだな。マツの端材なら、プレス5回分(コマ50個)くらいの大きさの板で、銅貨2枚くらいかな。塗装は、100枚で銅貨5枚でいいだろう?」


〈なるほど……コストが見えてきた〉


俺は頭の中で計算する。


〈プレス1回10個で銅貨3枚=1個あたり鉛銭3枚(30円相当)〉

〈端材は50個分で銅貨2枚=1個あたり鉛銭0.4枚(4円相当)〉

〈塗装100個分で銅貨5枚=1個あたり鉛銭0.5枚(5円相当)〉

〈……1枚あたり、だいたい鉛銭3.9枚(39円)!〉

〈リバーシ1セット65枚(※予備1枚)で計算すると、コマのコストが鉛銭253.5枚≒銅貨25枚(2,500円相当)ちょっと。袋を奮発して銀貨5枚くらいだとしても、製品原価は銀貨3枚(3,000円相当)台で収まる!〉

〈それを、組合長――アイザット――は金貨1枚で買ったんだ。……原価率3%!?〉

〈いや、アインズさんが言ってた銀貨10枚で売ったとしても、原価率30%だ〉

〈……これ、とんでもない商売になるぞ〉


「ありがとう、2人とも!それでね、カチさん!」


俺は興奮を抑え、次の計画を切り出した。


「もう一つ、作ってほしい『型』があるんだ!」

「あんだと?」

「このプレス機で、『弁当箱』を作れないかなって!薄い板をガシャン!ってして、箱の形にしたいんだ!」

「なに!?」


カチさんの目が、再びギラリと光った。


「箱だと……?それだと、円形の『抜き型』じゃなく、立体的な『押し型』が必要になるぞ……ブツブツ……」


カチさんは、また黒板に向かって何かを書き殴り始めた。


「おい、マルタ!弁当箱にするなら、マツのヤニはまずいだろう!もっといい木材のサンプルを持ってこい!」

「がっはっは!また始まったか!弁当なら『ヒノキ』の薄いのがいいか?いや、ブツブツ……よし、いくつかサンプル持ってきてやるよ!」


2人の職人が、再び俺を放置して議論を始めてしまった。俺は、夢中になっているカチさんに声をかける。


「あのー、カチさん。その弁当箱の金型は、いくらくらいかかりそう?」

「ああん?……まあそうだな。構造が複雑になるし、試行錯誤も必要だからな……」


カチさんは黒板の図面を睨みつける。


「金貨2枚はみとけ」

「(高い!)……わかった!」


「よし、ラーク!弁当箱の型も、お前に作り方を教えてやる!こっちへ来い!」

「はい、師匠!」


カチさんとマルタおっちゃん、それにラークさんが熱い議論を始めたのを見計らい、俺はそっと鍛冶屋を後にした。


〈よし、コストは全部出た。弁当箱の金型が金貨2枚。プレス機本体は作業費に入ってる。その分作業代は割高だけど全然賄えるし、CAPEXが抑えられるのは今は嬉しい〉


俺は、次の目的地「市場組合」へと向かった。


〈馬小屋のレンタル代と、荷車――中古――の相場を確認して、事業計画を完成させるぞ!〉

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