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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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## 24話 テトの「適性」

## 24話 テトの「適性」


俺は歩きながら、


〈リバーシ量産化、酒札導入、弁当配達、洗い屋との連携……。まず、一番のキモになるのは「馬車」の確保だ〉


「あ、そうだ。テトにも話を聞いておくか」


市場へ向かう前に、俺は厨房に立ち寄った。裏口では、見習いのテトが、山のように積まれたジャガイモを相手に、一心不乱に皮を剥いていた。


〈……こいつ、いつ見ても皮剥いてるな〉


「よう、テト」

「よう、ライム坊。どうしたんだ?」


テトは、皮むきの手を止めずに顔を上げた。


「世間話ついでに、ちょっと聞きたいんだけどさ」

「おう」

「テトの実家って農家で、馬もいたんだろ?馬って、どうやって飼うんだ?」


「馬かぁ」


テトは、少し懐かしそうな目をした。


「馬はさ、めちゃくちゃ高価だぜ。力持ちだからいろんなところで活躍するし、高く売れるんだ。うちの実家は田舎で土地だけはあったから、馬を増やして売ることもしてたんだ」


彼は、ジャガイモを1つ放り投げ、続けた。


「でも、あの体の大きさだろ?藁とかの餌代が、とにかく結構かかるんだ。餌代のこと言うと、買うのをやめる人も結構いたよ」


〈なるほどなぁ。馬が餌代以上の働きをしてくれないと、維持費ばっかりかかって割に合わないのか〉


「そうなんだ。ちなみに、うち――炎の鍋亭――でも飼えるかな?」


「んー……」


テトは店の裏庭を見回して、首を傾げた。


「スペース的に無理なんじゃないかな。あいつら、寝る場所も結構取るし」


「え!だめなの?」


馬車購入計画がいきなり頓挫しそうで、俺はめちゃくちゃ焦る。


「で、でも!」


俺の焦った顔を見て、テトが慌てて付け加えた。


「馬を自分の家で飼ってる奴なんて、貴族か大農家くらいのもんだ。こういうのは結構、共有するものだからさ。この前行った市場組合の馬小屋も、まだスペースに空きがあったし、増設する余地もあった。あそこなら借りられると思うよ!」


テトは、そこでハッとした顔で俺を見た。


「……てか、ライム坊。もしかして、馬、買うのか?」


「うん。今、市場も洗い屋も、周りが人手不足で困ってるだろ?」


俺は、計画――「ランチボックス作戦」と「洗い屋の配達代行」――をテトに説明した。


「馬車が1台あれば、みんな助かるんじゃないかと思ってな。もし、この計画が上手くいったら、テトも毎日馬さわれるぞ!」


「ホントか!?」


テトは持っていたジャガイモを桶に放り投げた。


「やる!やるよ、ライム坊!俺、正直、厨房にいても、毎日毎日皮むきばっかりで……手際も悪くて、親方――ゴードン――にどやされてばっかだったんだ!この前の馬車、やっぱり最高だったし、本当にそうなれば、めちゃくちゃ嬉しいぜ!」


〈よし、モチベーションは完璧だ〉


「でも」


テトは急に真顔に戻る。


「ちゃんと親方に話は通してくれよ?」


「わかってるよ!」


俺は笑う。


「だから今、そのための『OPEX』と『CAPEX』の調査中なんだ」


「おぺ?きゃぺ?」


「『お金がどれくらいかかるか』って意味だよ!」


俺は、この際だからと本題を切り出した。


「それでさ、肝心の馬は、どこで買えるんだ?」


「馬なら、うちの実家から買えるよ!」


「え?」


「たぶん、農作業が辛くなってきた、年取ったやつがいたはずだから。そういう馬なら、格安で譲ってもらえると思う。年取ったって言っても、馬車を引くくらいなら全然大丈夫さ!……そうだな、銀貨50枚(50,000円相当)くらいで譲ってもらえると思う。普通の馬なら卸値が金貨1枚(100,000円相当)から金貨3枚くらいだよ」


〈銀貨50枚!?〉


〈普通の若い馬なら、卸値から販売所の儲けも考えて相場は金貨3枚から5枚くらいかな。これはラッキーだ。テトの実家筋で、馬は何とかなる〉


〈場所は組合に相談しよう〉


「そうなんだ!ちなみに、餌とかはどれくらいかかるんだ?」


「田舎じゃ牧草だからそんなかからないんだけど、街だと藁を買うだろ?だから、1日でだいたい銀貨3枚(3,000円相当)くらいかかるかも。あとは、蹄鉄とか、たまにお医者さんとかにも見てもらう金もかかるよ」


〈結構かかるな……。1日あたり、全部コミで銀貨5枚くらいで見とかないとな〉


「あとね、ライム坊」


テトが、少し言いにくそうに口を開いた。


「配達の仕事、俺、すげえやりたいんだけど……さすがに毎日は無理だよ!俺のこと、馬車馬かなんかだと思ってない?」


「あ……」


〈しまった!シフト考えてなかった!〉


「そ、そうだよね。悪い……」


「考えてなかっただろ!」


テトはそう言うと、何かを思いついたように手を叩いた。


「それでね、もしよければなんだけど……鉱山に働きに出た、2つ下の俺の9番目の弟――ヤト――がいるんだ。あいつ、俺と違って体も大きくないし、鉱山の仕事は辛いって手紙が来ててさ。もしよければ、あいつに声かけたいな」


「ヤトも、馬、扱えるのか?」


「おう!あいつとも一緒に馬の世話してたからな!もし、ライム坊の計画で、日当が銀貨10枚(10,000円相当)もらえるなら、俺とヤトの2人で交代で働いても、月で1人銀貨150枚(150,000円相当)だ!今の俺の給料――月50,000円相当――より断然リッチだよ!」


〈なるほど。2人体制か。その方が安定するな〉


「そうだね。ヤトが来てくれるといいかもね!」


「よし!馬と弟のこと、俺、実家に手紙書いて確認しておくよ!」


「ありがとう、テト!頼む!」


〈めちゃくちゃ収穫があった!〉


テトに礼を言って、俺は厨房を後にした。


〈テトは、飲食店の見習いとしては不器用で、親父に怒られてばっかりだった。でも、『馬』のことに関してはプロだ。あいつは調理場の見習いじゃなく、『ロジスティクス主任』だ。これなら父さんも文句は言うまい〉


〈馬の調達ルート、維持費、そしてヤトという新しい労働力。必要な相場感が、全部把握できたぞ〉


俺は、金貨を握りしめ、市場へと向かった。

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