表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/50

## 16話 「手作り」のコスト

## 16話 「手作り」のコスト


〈いっそのこと、リバーシの製品化もしちゃおうかな〉


市場に向かう道すがら、俺の思考は「酒札(さかふだ)」から広がり始めていた。


〈どうせマルタのおっちゃんに酒札を作ってもらうなら、俺が「夢で見た」リバーシのコマと同じ、あの円形で厚みのある形にしてもらえば効率がいい。リバーシのコマとしても使えるし、酒札としても使える〉


問題は「色」だ。


クララの店では、札を赤や青に塗っていた。

うちの店でも、酒の種類で価格を分ける必要がある。エール、葡萄酒、果実水――最低3色は欲しい。


〈この街に「着色屋」みたいな店はあるんだろうか。あとで組合に寄った時にでも聞いてみるか〉


頭の中で必要数を弾く。


店のキャパは50席。客が入れ替わることも考え、多めに見積もる。

仮に、満席の客が1人平均5杯飲んだら……250個?


〈いや、カゴをテーブルごとに置いて、会計時に回収して、また次の客に回すなら、そんなにいらないか?でも、洗い場に溜まることも考えると……〉


〈やっぱり、予備も入れて500個くらいは欲しいな〉


結構な数だ。


〈これがもし、いい感じにできたら、クララの店の木の札もこっちの規格に統一してもらおう。……というか、リバーシのゲームとして売り出すことを考えたら、同じ規格のものを大量生産できると最高なんだが〉


この「中世レベル」の世界だ。まさか、全部手作業なんだろうか。


〈まあ、金がかかるにしても、請求漏れが改善されればすぐに回収できるだろ。なんたって、父さんが「俺が責任取る」って言ってくれたしな!〉


……いや、待て。


〈「責任取る」って言ってたけど、「金出す」とは言ってないな……〉


5歳児の特権を乱用しかけた自分を戒めつつ、一人ツッコミを入れながら、俺はマルタの薪屋に到着した。


店の前では、マルタのおっちゃんが、若い従業員らしき男3人と何やら話し込んでいる。


「おっちゃん!炭を買いに来たよ!」


「おう、坊主!ちょうどいいところだ。ほら、お前ら、こいつが炎の鍋亭のライム坊だ」


「「「ちーす!」」」


若い連中が、威勢よく頭を下げる。


「こんにちは!炎の鍋亭のライムです。おっちゃん、炭をひと箱ちょうだい。あとね、相談があるんだ」


俺は懐から、自分で小刀で削った、いびつなリバーシのコマ――木片――を取り出した。


「これみたいに、まん丸で、ちょっと厚みのあるコマを、たくさん、おーんなじ形で欲しいんだけど、こういうのって作れる?」


「あ?なんだそりゃあ。……まあ、作れんことはねえが」


俺は、父さんにも説明した「酒札」のアイデアと、酒の請求漏れの話を手短に伝える。


「なるほどなあ。『酒札』か。面白いこと考えるじゃねえか。で、どんくらいいるんだ?」


「ええと、とりあえず500個からなんだけど……将来的には、もっと大量に欲しいかも」


「ご、500個だと!?」


マルタのおっちゃんは、目を剥いた。


「おいおい、坊主。そりゃあ作れるが、割に合わんぞ」


「え?」


「お前さんが言うような『綺麗な丸で、全部同じ大きさ』ってなると、うちの製材所の職人が、一個一個、手作業で削り出すことになるんだ。そんなもん500個も作ったら、とんでもない手間賃になるぞ!」


〈マジか……。そりゃそうか。この世界に木材を自動で打ち抜くプレス機なんてないもんな……〉


いきなり計画が暗礁に乗り上げた。


マルタは、頭を抱える俺を見て、ニヤリと笑う。


「まあ、そう落ち込むな。とりあえず見積もりしてやるから、いくつかサンプルを作ってやるよ」


「本当!?」


「ああ。なあ、お前ら」


マルタが、さっきの若い衆を呼ぶ。


「こいつら、新しく雇った連中なんだ。まだ半人前だからな」


「へえ、新人さんなんだ」


「そうだ。こいつらの研修がてら、坊主の言うコマを作らせてみる。研修だから手間賃はタダでいい。その代わり、ちっとくらい形がいびつになっても文句言うなよ?」


「全然いいよ!逆にありがとう、おっちゃん!」


「おう!で、サンプルはいくついるんだ?」


「えっと……64個、お願いできる?」


リバーシ盤、1セット分だ。


「おう、任しとけ!」


俺はマルタに礼を言い、店を出た。


「おっと、坊主!炭を忘れてるぞ!」


「わっ、忘れてた!ありがとう!」


「あと、今週末は約束通り、馬車で薪を取りに来るんだろ?ちゃんと用意しとくからな!」


「うん!馬車で行くよ!よろしくね!」


炭の入った袋を抱え、市場を後にする。


〈そっか……いきなり計画が(つまず)いたな。手作業じゃ、大量生産は無理か〉


リバーシの製品化も、酒札の大量導入も、暗雲が立ち込めてきた。


〈……いや、待てよ〉


俺は、市場組合の建物を見上げた。


〈マルタのおっちゃんは「木工」の職人だから手作業だ。でも、別の方法があるかもしれない。例えば……「鋳造(ちゅうぞう)」とか〉


西の鉱山。

もし、金属で同じものを大量に作れるとしたら?


〈よし、組合に行って、エリーナさんに馬車の予約状況を聞くついでに、この街に「鋳物師(いものし)」や「着色屋」がないか、聞いてみよう〉


俺は、新たな可能性を探るため、組合の扉を押し開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ