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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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## 12話 契約の裏付けと新たな「種」

## 12話 契約の裏付けと新たな「種」


朝食後、俺はいつものように指に布を巻き、粗塩で歯を磨きながら、先程の「プレゼン」を反芻(はんすう)していた。


〈……なんとか通ったな〉


父さんの説得は、予想以上に骨が折れた。母さんの援護射撃がなければ、危うかったかもしれない。


〈これから店の改革を進めていくにあたって、あの頑固な父さんをいちいち説得していたら、スピード感が足りなくなるな……〉


前世の知識はまだ山ほどある。どうやって「信頼」を勝ち取っていくか――それが次の課題だ。


考え事をしながら1階に降りると、厨房ではすでに父さんとテトが話していた。


「よう、テト!おはよう!」


「お、ライム坊!来たか!」


テトが、ニキビ顔を興奮で輝かせながら駆け寄ってくる。


「ライム坊、聞いたよ!親方から!昨日の馬車の話、本当になったんだな!」


「ああ、来週から頼むぜ」


「それにしてもテト、お前、馬が引けるなんて俺は知らなかったぞ」


父さんが、仕込みの手を休めずに言う。


「へい!」

テトは胸を張った。「うちは農家で、10人兄弟の8男だったんです。家には居場所もねえし、街に出てきたところを親方に拾ってもらって。馬で荷車を引くのは、それこそ毎日やってました。久しぶりに馬に乗れるのも嬉しいし、銀貨5枚――5,000円相当――の駄賃は……本当にありがたいです!ありがとうよ、ライム坊!」


「はは、任せた」


〈よし、テトのモチベーションは完璧だ〉


「ライム、行くぞ」


「うん!」


俺は、父さんの後を追って、2人で炎の鍋亭を出た。来週からの契約を正式に結ぶため、父さんが亭主として挨拶回りをするのだ。


まずはマルタの薪屋だ。


「よう、マルタのおっちゃん!」


「おう、坊主!……お、ゴードンも一緒か。珍しいな」


マルタが斧を止め、汗を拭う。


「マルタさん、昨日はうちの息子が――」


父さんが切り出すと、マルタは「がっはっは」と豪快に笑った。


「聞いた聞いた!いやあ、こっちも本当に助かるぜ!最近、西の鉱山の景気がいいせいか、街中が人手不足でな。配達に3人を割くのが厳しくて、残業させちまってたんだ」


「そうでしたか。それなら、うちとしても――」


「おうよ!来週から、坊主の言う通り銀貨25枚、きっちり引かせてもらうぜ!」


交渉は正式に成立した。


世間話に移ったところで、マルタがぼやきを漏らす。


「ただ、忙しいのはいいが、うちの若い連中が昼飯に困っちまってな。市場の周りの飯屋は、どこも鉱山の連中で混んでやがる」


「……なるほど」


父さんが、何か考えるように頷いた。


次に、俺たちは市場の中央にあるロンドール市場組合に向かった。カウンターには、今日もエリーナさんがいた。


「エリーナさん、おはよう!父さん連れてきたよ!」


「あら、ライム君!それに、ゴードンさんまで」


「昨日の馬車の件で、正式に話を……」


父さんが言うと、エリーナさんはにこやかに「はいはい、お待ちくださいね」と言って、奥の部屋に消えた。


〈あれ?いつもならここで手続きなのに〉


すぐにエリーナさんが戻ってきた。


「ライム君、ゴードンさん。組合長がお話したいそうです。こちらへどうぞ」


「「えっ」」


俺と父さんは顔を見合わせた。まさか、組合長室に通されるとは思ってもいなかった。


重い扉の奥には、髭面の組合長がどっしりと座っていた。


「ゴードン、それに……君がライム君か」


「は、はい」


「エリーナから聞いたよ。5歳の少年が、面白い商談を持ってきたって話だ。どういう計画なのか、この俺にもう一度教えてくれないか」


俺は、父さんの前でやったプレゼンを、組合長にもう一度説明した。効率化、コスト削減、そして関係者全員が得をする、という流れを。


組合長は、腕を組み、面白そうに俺の話を聞いていた。


「……なるほど、『うぃんうぃん』か。こいつは愉快だ。ライム君、君、大商人になれるぞ。どうだ、うちの組合で働いてくれないか?」


「いや、俺まだ5歳なんで。それに、うち――炎の鍋亭――も忙しいですから」


俺が真顔で断ると、組合長は腹を抱えて笑った。


「ゴードン」


「は、はい」


「お前、息子に働かせすぎるなよ。5歳ってことを忘れるところだった」


「……すみません。こいつが、どんどんなんでもできるようになるもんで、つい」


父さんが、バツが悪そうに頭を掻く。


世間話の中で、組合長もマルタと同じことを口にした。


「まったく、景気がいいのはいいが、組合の職員も昼飯を食う場所に困っててな……」


組合を後にし、父さんと2人で店への帰り道を歩く。


〈マルタのところも、組合も……「ランチ難民」か。これは……〉


俺が新たな「商売の種」に気づいた、その時だった。


「ライム」


父さんが、ふと足を止めた。


「ん?なに、父さん」


「……朝は、少し厳しく言ったかもしれん」


「え?」


「だが、今日、お前と一緒に回ってよくわかった。マルタさんも組合長も、テトも、みんな喜んでくれてる。大したもんだ」


父さんは、俺の頭にゴツい手を置いた。


「改めて、来週からよろしく頼む」


ぶっきらぼうだが、最大の信頼を込めたその言葉に、俺は「任せとけ!」と胸を張った。

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