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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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金貨500とマーケティング

## 113話 金貨500とマーケティング


次の日。

俺とレノは炎の夜明け商会の本部に来ていた。


とはいっても、まだ本部と呼ぶにはだいぶ殺風景だ。

机と椅子と棚がひとつ。紙とペン。最低限のものしかない。


〈……そろそろ、この部屋にも商会のロゴ入りグッズとか木彫の熊の置物とか置きたいな〉

〈ミナの紋章があるんだから、少なくとも看板くらいは作りたい〉


そんなことを考えつつ、俺は椅子に座り直した。


「レノ。ガラワ組との金貨500枚だけど、今のところどんな感じかな?」


レノは手元の帳簿を開き、すぐに数字を読み上げる。


「はい。3か月の約束のうち、だいたい半分が経過したところです。

 まずリバーシですが、ロンドールでは1日に100セットは継続して売れています。

 ただ、受注残がなくなってきており、販売の勢いは落ち着いてきています」


「ロンドールは頭打ちか……」


俺は指折り計算する。


「月の粗利が金貨130枚で、立ち上がりの時差を考えて……今どれくらい?」


「誤差含めて、金貨200枚前後かと」


「うん。やっぱりそのくらいか」


レノは次の帳簿を開く。


「つい先日プレス機3号機が完成して、エステルでも販売を始めましたが、まだ販売状況は確認できていません」


〈つまり、ロンドールでの落ち込みのカバーはエステル次第ってことだな〉


俺は小さく頷いた。


「出張で必ず確認しよう」


「そうですね」


レノはさらにページをめくる。


「次に、ランチボックス事業です。本日から正式に1日1000食体制へ移行しています。

 想定粗利は月金貨50枚。現時点で金貨30枚ほど積み上がっています」


「ということは、最終的に100枚近くは積めるってことだね」


「はい。こちらは廃れにくい需要なので、非常に堅い収入源になります」


〈昼食を食べなくなることはない。そして弁当は文化として定着しそうな気配もあるな〉

〈これもゆくゆくは他の街へ広げたい〉


「で、酒造事業は?」


レノは少しだけ表情を変えた。真面目なやつだ。


「酒造事業――プレサントですが、現状は認知がまだ足りません。

 フル稼働なら月金貨100枚を見込めますが、今は金貨20枚ほどの上振れに留まっています」


「やっぱり『最初の一口』を飲ませるまでが壁だよね」


「はい。ただ、品質面は申し分ありませんので、広がり始めればランチボックスと同じく堅い収入源になると考えています」


俺は机の上を軽く叩いた。


「じゃあ、現状のざっくり合計は……リバーシ200、ランチ30、プレサント20。

 合計、金貨250枚前後か」


「その認識で問題ありません。つまり金貨500枚まで、ちょうど半分です」


〈半分……来たな〉

〈でも、残り半分もちゃんと積めるかどうか〉


深呼吸して、俺はレノに向き直る。


「ここからどう積むかが本番だね。俺の最終イメージとしては――」


俺は指で机の上に簡単な表を描く。


「リバーシ:金貨400枚

 ランチボックス:金貨100枚

 酒造:金貨150枚。

 合計:金貨650枚。

 返済金貨500枚+事業投資150枚」


「なるほど……ですね」


レノは指でリバーシの項目を軽く叩いた。


「分かりました。ただ、やはりリバーシと酒造事業が鍵です。

 ランチボックスは安定した事業ですが、桁を動かすのはリバーシとプレサントになります」


「じゃあ、やることは決まりだね」


俺は2本の指を立てた。


「エステルでリバーシの状況確認と、プレサントのマーケティングをやる」


レノが首をかしげる。


「『まーけてぃんぐ』……ですか?」


「うん。簡単に言うと――」


俺は少し考えながら言葉をつなぐ。


「必要としてる人に、どうやって商品を届けるかを考えること、だよ」


レノは真剣に聞き、ゆっくりと繰り返す。


「必要としている人に……どうやって届けるか」


「そう。例えば、量は飲めないけど、しっかり酔いたい人とか」


レノは即座に理解したようだった。


「エールでは酒精が低くて大量に飲まないと酔えない方々……少し年をとってきた方や裕福層、そういった方々でしょうか」


「うん、たぶんね。その人たちにどう知ってもらうか。どこで販売すると届きやすいか」


「なるほど、奥が深いですね。どんな人がプレサントを求めていて、どう届けるか……。すごいです。そのあたり、エステルでバルドさんや姉にも聞いてみましょう」


「それと――こういう話なら、クララに聞くのが一番だよ!」


〈いつもクララとの会話で、いろいろなヒントをもらってきたからな〉


「はい。クララさんなら、とんでもないアイディアを考えてくれると思います!」


〈レノもクララの凄さがちゃんと分かってるな〉


俺は笑ってしまった。


「だよね。数字の話してると、すぐ難しくなるから助けてもらおう」


そのとき。


「ライムいるー?」


階段のほうから、聞き慣れた声がした。


俺とレノは同時に顔を上げる。


「……タイミングが完璧ですね」


「うん。呼ぶ前に来た」


扉を開けると、クララが明るい顔で立っていた。


「ライム! パンフレットできたよ!」


クララがミナ、エリーナさん、そしてマルタのおっちゃんを従えて入ってきた。


〈やっぱり、こういうときに真っ先に来るのがクララなんだよな。そしてなんだこのパーティ編成は、攻めすぎだろ〉


こうして――

金貨500枚をめぐる金策会議は、

最強の右腕レノと、最強の幼馴染クララと周りを巻き込みながら続くのであった。

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