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異世界で社長になる。   〜5歳児から始める異世界ビジネス革命〜  作者: Mizunoki.Kawai


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配達事業ver2

## 104話 配達事業ver2


「じゃあ次は、配達事業だね」


テーブルの上の紙束を軽く整えて、俺は新しい紙を引き寄せた。


「まずはシンプルに、固定の売上から」


レノがうなずいて、用意していた紙を前に出す。


「はい。洗い屋、薪屋、酒屋から、合わせて銀貨120。20日稼働で、月の売上は金貨24です」


「うん」


銀貨120を、さらさらと紙の端に書き込む。


「じゃあ、コストは?」


レノが、少しだけ申し訳なさそうに眉を寄せた。


「ええと……テトさん、ヤトさん、サントの配達担当2人の人件費で、だいたい金貨4ぐらい、でしょうか?」


「うーん……」


〈ここらへん、あんまり確認してないんだろう〉


俺が唸っていると、テトが、そういえばという顔で口を開いた。


「馬のエサと、維持費もあるよ。干し草とオート麦、それに馬医者に診てもらう金。だいたい銀貨6はかかると思う」


「うん。1頭あたり銀貨6ね」


俺はペン先でとんと紙を叩いた。


「馬は全部で4頭になる予定だから――」


紙の端に、簡単な計算を書き込んでいく。


「1頭銀貨6で、4頭で銀貨24。これは30日まるっと維持費で見て、月だと金貨7.2」


レノが、小さく肩をすくめた。


「……すみません。そこまで考えが回っていませんでした」


「大丈夫。ロジスティクス主任がいるからね」


俺がそう言ってテトを見ると、テトは、え?と目を丸くした。


「お、俺?計算は無理だよ」


クララが、すかさず手を挙げる。


「はい!私もできません!」


「そこは胸を張らなくていいからね?」


思わずツッコミを入れる。


〈クララはこれからだとして……テトには、そのうちざっくり計算くらいはできるようになってもらわないとな〉


レノが黙って紙を見つめていたので、俺は落ち着いた声で言った。


「うん。抜けは誰にでもある。だから、こうしてみんなで確認するんだよ」


レノは深く一礼してから、再び顔を上げた。


「ありがとうございます」


「じゃあ、まとめるね」


俺は紙の中央に線を引いた。


「売上が月金貨24」


その下に、コストを書き足していく。


「配達担当4人の人件費で、月金貨4」


「馬4頭の維持費で、月金貨7.2」


ペンでとん、と合計を叩く。


「合わせて、月金貨11.2がコスト。だから――粗利は金貨12.8」


テーブルの上に、静かなざわめきが走る。


「ここからさらに、薪屋の大物配達のスポットと、母友ネットワークからの小口の仕事が入れば、まるっと上振れだよ」


俺は、紙にスポット+αと書き込んだ。


「しかも、配達部隊を自前で持ってるってことは――」


自分の胸を指さす。


「ランチボックス作戦とか、サントエールの出荷の配達料は、ほとんどただみたいなものになる」


母さんが腕を組んだまま、感心したように言う。


「他と比べると額は控えめだけど……確かに、大きいわね」


「うん。単体の利益だけじゃなくて――」


俺は、ランチボックスとサントエールの紙を指でとんと叩く。


「他の事業の助けにもなるんだ。だから、配達事業はこれからも固定収益を増やして、人も馬も増やしていきたい」


テトの方を向く。


「テト。新しい仕事の種を探すのも、ロジスティクス主任の役割だからね」


テトは一瞬驚いた顔をして、それから力強くうなずいた。


「うん。この前みたいに、配達中にいろんな人の話を聞いて、困ってることを拾い上げて、報告するよ!」


「よろしく」


〈現場の肌感覚は数字だけじゃわからない。あれは必ず財産になる〉


「落ち着いたら、次は――鉱山とも正式に契約したいね」


父さんが腕を組む。


「飯と水と道具。あそこは、運ぶものだらけだからなぁ」


レノが紙束からまた1枚取り出した。


「それから、投資の話です」


「うん。馬だよね」


レノは指を折って確認する。


「テトさんのご実家から、普通の馬が金貨1枚。足の速い馬が金貨3枚、と聞いています。馬車については……まだ未確認です」


「だったら――」


俺は紙の端に馬×2と書き込む。


「まず、馬は1頭ずつ買おう。普通の馬1頭はヤトの分。足の速い馬1頭は、レノが使って俺の移動を効率化する」


レノは一瞬目を瞬かせ、それから微笑んだ。


「光栄です。全力で御します」


「馬車は、今度マルタのおっちゃんに聞きに行こう。薪用の荷車を改造してもらうのか、新しく作るのか、1度相談した方が良さそうだね」


テトが胸を叩く。


「じゃあ俺は、実家に手紙を出しておくよ。普通の馬と、足の速い馬。どっちも商会用で欲しいって書いておく」


「ありがとう、テト」


俺はペンを1度置いた。


「――よし。配達事業も、骨は見えたね」


そのとき、クララがぴんと手を挙げた。


「はい!」


〈出た。クララまとめ〉


クララは指を1本立てた。


「1つめ!毎日のきまったおしごとで銀貨120!20日で金貨24!」


指が2本。


「2つめ!はたらく人は4人!テトお兄ちゃん、ヤト、それからサントさんの2人!」


3本目。


「3つめ!おうまさんは4頭!エサと馬医者さんで、月に金貨7.2!」


4本目。


「4つめ!人とおうまさんのおかねを引いても、金貨12.8がちゃんとのこるたからもの!」


ぎゅっと拳を握る。


「5つめ!大きい薪とか、ちょっとしたおとどけはぼーなす!ランチボックスとサントエールの配達料は、ほとんどただ!」


クララは胸の前で手をぽんと合わせた。


「――こんな感じ!」


母さんが吹き出し、テトも苦笑しながらうなずく。


レノが、真面目な顔のまま言った。


「……わかりやすいです」


俺は、ペンをもう1度握り直す。


「この2つを、サントエールの再建と一緒に回していく。――ここからが、本番だ」

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