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契約魔術

作者: 明日 透

 駅の発車メロディーが駅のホームに響き渡る。僕は階段を急いで駆け下りた。

「はぁはぁ、間に合わなかったか……。」

僕は階段を下りた後、足を止め、前屈みになって膝を掴んだ。息切れが激しい。僕もそろそろ老いとやらを感じる年齢になってきたのだろうか。僕は、息を整えながら、電車の乗車位置に向かい、次の電車を待った。ついさっき、電車が出たばかりだからか、乗車位置には誰も並んでいない。僕は先頭だった。

「うげ、あと10分は来ねーぞ。まあ、でも、次終電か。セーフだな。」

僕は駅の電光掲示板を見ながら、そう言った。

「今日も疲れたな……。」

僕はただ夜空を眺めた。ここは都会なので、田舎のように星が見えるわけではない。ただ黒い空が広がっているのみである。普通なら、電車を待つ間は本やらスマホやらを見て暇をつぶすのだろうが、僕にはそれをする気力もなかった。僕はぼーっと空を見ていた。そうしている間に時は過ぎていき、やがて電車の接近チャイムがなった。

「まもなく、1番線に各駅停車……。」

僕はそれを聞いて、背中に背負っていた鞄を前に背負いなおした。そのとき、斜め後方から酔っ払いが自分に衝突してきた。僕の身体は線路の方へ大きく傾いた。あまりの出来事で僕は何も考えることができなかった。そして、目の前に電車が見えたとき、このままでは死んでしまうと本能で感じた。その時だった。僕の腕を掴んだ一人の男がいた。僕は彼のおかげで、線路上に落ちずに済んだ。

「大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です。ありがとうございます。死ぬかと思いました。」

「いえいえ、それよりも一旦ベンチで休んだ方がいいのでは?随分とお疲れに見えますよ。」

「あ、そうですか。ありがとうございます。」

僕は、さっき自分を助けてくれた男に連れられて、乗車位置の列から抜け、ベンチで休んだ。

「先ほどは、ありがとうございました。」

「いえ、いいんですよ。つかぬことお聞きしますが、最近何かありましたか?」

「いや、別にホームに飛び降りようとしてこうなったわけじゃなくて……。」

僕は強く首を横に振った。

「わかってますよ。さっきのおっさんに突き落とされそうになったんでしょう。でも、それはそれとして、あなた、随分顔色が悪いというか……。」

「そうですかね……。」

僕は反射的にそう言ったが、実は心当たりが腐るほどあった。仕事の大事な書類に不備が見つかったり、力仕事を任されたり……人間関係も良好とは言いづらい。残業も多いので今日みたいに終電ギリギリになることも多い。終電……。

「あっ!終電!」

僕は立ち上がった。先ほど、引かれそうになった電車が終電だったのだ。駅員が僕らの方に視線を向けていることに気づいた。おそらく、駅を閉めるために追い出そうとしているのだろう。僕と男は急いで駅の外へ出た。僕と男は駅の出口で立ち止まった。

「ああ、入場料払う羽目になっちゃいました……。今日は帰れませんし。」

僕は言った。

「そうですね。私もです。」

彼は笑っている。その時、僕は気づいた。そして、深々と頭を下げた。

「あ、すみません。僕を助けたばかりに終電逃すことになってしまって……。」

「いえいえ、いいんですよ。頭を上げてください。人助けできて私もいい経験出来ましたし。私はすぐに帰れますので。」

「ご自宅は歩いて通える範囲で?」

「いや、別にそう言うわけではないんですよ……ちょっと裏技がありまして……。」

「裏技?」

僕は気になった。

「まあ、立ち話もなんですから。」

男は近くにあったベンチに座って話そう提案した。そして、僕と男はベンチに座った。

「それにしても、本当に体調大丈夫ですか?」

彼は言った。それにしてもしつこすぎる。そこまで僕が疲れているのように見えるのだろうか。

「しつこいですね。大丈夫ですよ。体調の心配をしていただけるのは嬉しいですが、別に心配されるほどじゃありません。」

「ふーん、そうですか。」

彼は言った。ホームで助けてくれたり、心配してくれたりと感謝するべきだということはわかっているが、だんだん僕は彼に怒りを覚えてきた。

「あの……。」

僕が彼に物申そうとしたその時、彼はいきなり僕の背中を人差し指で触れてきた。最初はいきなり赤の他人にボディータッチをしてくるとんでもない人だと思ったが、その直後、不思議なことが起きた。疲れが消え去ったのである。眠気も肩こりも腰の痛みも、疲れに起因するものすべてが治った気がした。

「あれ……おかしいな、何か肩こりが……。」

僕はそう言いながら肩を回した。そして、男の顔を見たその時、僕は驚いた。

「すみません、どうしたんですか。先ほどは普通だったのに、今、すごく体調悪そうじゃないですか。大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です。私にとってはこれが正常運転というか……なんというか。」

「え?」

僕はどういうことなのかわからなかった。そして、不思議なことに彼の顔が少し明るくなった。体調が悪そうなのに笑顔……僕の疑問はさらに大きくなった。しばらくの沈黙が続いた。このような場所で沈黙が続くくらいなら、断りを入れて、少しの謝礼を支払い、どこかへ行くのが得策なのかもしれない。しかし、いざそれをしたとして、どこか行くあてがない。今の時間、時間をつぶすことができる施設はどこも営業していないし、徒歩で家までとてもじゃないが帰れる距離じゃない。タクシーを呼んで帰ろうにもそこまで金がなかった。無論、男に多少の謝礼として金一封できるくらいのお金は財布に入っている。金がないというのは、それに加えてタクシーで家まで帰れるほどのお金があるかどうか不安だということだ。金を下ろそうにも、銀行はやっていないし、コンビニもあるといえばあるが、手数料を多めに取られるのは少し損したような気分になってしまう。僕は家に帰るのは諦めて、ベンチで一夜を過ごそうと覚悟した。家に帰れない……憂鬱な気分でただ空を見上げた。

「ささっと瞬間移動みたいに帰れればいいんですけどね……。」

僕はため息をついてそう言った。そのとき、僕はふと思い出した。

「あっ、そういえば、裏技って何なんですか。」

僕はその"裏技"とやらが気になっていた。

「ああ、そうでした。」

男は僕の方を真剣な表情で見つめた。そして、こう言った。

「あなたは、現実で魔法が使えると知ったら、それを信じますか?」

「ま・ほ・う?」

僕は何も言っているのかわからなかった。魔法。あのゲームや小説の物語出てくる魔法。不思議なことを起こしたり、人類の欲望をかなえてくれたりする魔法。使えたらいいなとは思うが、現実そんなものはあり得ない。あくまで空想上の話である。

「いやいや、無理でしょう。僕を馬鹿にしてるんですか?」

僕は笑いながら言った。

「まあ、そうですよね。私もそうでした。」

「え?」

僕は驚いた。()()()()()()()?まるで、魔法がこの世に存在するかのような言い方だった。この人はおかしい人だったのだろうか。

「見ていてください。」

男はそう言うと、ベンチから立ち上がり、指を鳴らした。すると、目の前に箒が現れた。箒が現れたのだ。僕は目をこすった。今、何もない虚空から箒が現れていなかっただろうか。いや、もし何処かから持ってきたものだったとしても、どこからその箒を持ってきたのだろうか。そう思っていると、今度は、男は……箒に腰かけたのである。男は宙に浮かんでいる。

「は?はあああああ!?」

深夜の駅前ロータリーに、僕の驚きの声が響き渡った。

「ななな、なな、何ですか!?これは!?」

僕はあまりの驚きで仰け反ろうとしたが、ベンチの背もたれが邪魔でうまくいかなかった。

「魔法ですよ。」

男は当然のように言った。

「ま、ま、ま、魔法って……空想上の話ですよね?」

「だから言ったじゃないですか、私もそう思ってたって。でも、使えるようになったんですよ。」

「ど、ど、ど、どうして!?」

僕は言った。

「契約をしました。誰とかは言いませんけど。」

「契約?」

「そう、契約。契約魔術ってやつなんですけど、聞いたことありませんか。小説とかで。」

男は箒から降りて、地面に落ちそうになった箒を掴んだ。そして、指を鳴らすと箒は虚空に消えた。男は僕に手を伸ばして言った。

「いきなりなんですけど……私と契約しませんか?」

「え!?いきなり契約なんて言われても!?」

僕はまたしても驚いた。まだ魔法があることを完全に信じ切ってはいないが、それでももし魔法が使えるのなら素晴らしいことだ。僕は半分疑心暗鬼で聞くことにした。

「え、でも契約ってことは何か対価が必要なんですよね?」

「まあ、そうです。でも、もう対価はいただきました。」

対価をいただいたとはどういうことだろうか。僕は急いでポケットや鞄を確認する動作をした。

「いえいえ、別に物ではありませんよ。安心してください。」

「じゃあ何ですか。」

僕は聞いた。

「それはですね……あなたの疲労です。」

「疲労?」

僕はきょとんとした。

「そう、疲労、あなたが普段仕事などをして生まれた1日の疲労をいただくだけでいいのです。しかも、1日だけです。1日だけ。」

僕はこれを聞いて思い出した。

「もしかして、先ほど僕に触れたときに肩こりとかがなくなったのって……。」

「私がいただいたからですね。」

「そうなんですね。」

僕は少し合点がいった。正直、どのような技術で疲労を取っているのかはわからないが、魔法があるのだ。技術がどうだとか言っていられない。

「もちろん、疲労は今日の1度しかいただきません。しかし、疲労を1日分につき、1種類しか魔法は使うことができません。なので、魔法を数種類使いたい場合は、また別日に契約更新という形になってしまいますが。あ、ちなみに魔法の発動に対価や力は必要ありませんよ。」

「そうなんですか。」

魔法は、1種類しか使うことができないとのことだが、そもそも魔法が使えるだけで素晴らしいのだ。さらに、疲労も取れてしまうのだから、文句は言うまい。しかし、聞けば聞くほど、とあることが気になりはじめた。

「でも、どうして、疲労を対価にするんですか?釣り合わないような気がしますけど。」

「あなたにとってはそうなのかもしれませんね。」

男は空を見つめてこう言った。

「私、疲れを感じたことがありません。」

「え?」

「まあ、それは嘘なんですけど、でも、まあ色々あってですね。疲労の経験をしてみたいなと思ったんですよ。どんな気持ちになるのか。」

男は何かに浸っている。

「あ、はあ、そうなんですか。」

僕は言った。魔法使いには魔法使いなりの悩みがあるのだろうか。僕にはわからなかった。疲労なんて、なければないほどいいはずなのに……。

「で、どうします?契約をします?もししないなら、疲労もお返ししますし。」

男は僕の方を見つめた。正直、魔法は使ってみたいし、疲労を返されても困る。僕としてはメリットしかない契約だったので、契約をすることにした。

 僕は契約書にサインをした。すると、サインが光りだし、その光が僕を包んだ。そして、しばらくすると光が消えた。

「これで使えるようになったはずですよ。」

男は言った。

「え、全く実感ないですけど。」

僕は身体を見渡した。一切の変化はない。

「まあ、そうでしょうね。じゃあ、まず今回使えるようにした魔法の概要と使用方法を説明しますね。」

「はい。」

「まずは、箒を思い浮かべて、指を鳴らしてください。」

男はそう言うと、指を鳴らした。すると、目の前に箒が現れた。

「僕……指鳴らすの苦手なんですけど。」

「大丈夫です。やってみてください。」

恐る恐るやってみると、珍しく指をうまく鳴らせた。そして、僕の目の前に箒が現れた。

「おお!」

やはり、非現実的なものを目の前にすると驚くものだ。そして、自分がそれを使えるとなると少し興奮もしてきた。

「じゃあ、立ち上がって、箒にまたがって……。」

男はそう言うと、箒にまたがった。僕もそれに合わせて、ベンチから立ち上がり、箒にまたがった。

「勢いよく地面を蹴る!」

男はそう言うと、ふわりと浮かび上がった。僕も勢いよく地面を蹴ると宙に浮かび上がった。浮かび上がったのだ。

「おおお!!」

僕は夢でも見ている気分になった。

「あとは思い描くだけで自由自在に飛べますよ。」

男は誰もいない深夜駅前ロータリーをゆっくりと1周し飛び始めた。僕もそれについていくように飛んだ。飛んでいるのだ。僕は子供のように笑った。そして、1周し終えると、男と僕はゆっくりと着地した。

「箒をしまう時は、最初と同じように、指を鳴らします。」

男は指を鳴らすと目の前から箒が消えた。僕も指を鳴らすと、またしてもうまくいき、目の前から箒が消えた。そして、僕は思った。

「そういえば、今は深夜だからいいですけど。普段は飛べなくないですか?人に見つかったら大変でしょう。」

「そこはご安心ください。魔法を使っているときは人の視界に入りません。防犯カメラにも映りません。あ、見えないし映らないからといって、万引きとかは駄目ですよ。あくまで魔法を使っている姿見えないだけで、そこを歩いているように見えるとか、そこに存在していることはバレますからね。」

「あ、そうなんですか。」

僕は納得した。

「ほかに何か疑問があったりとか、別の魔法を使えるようになりたいと思うようでしたら、またこの駅にいらしてください。いつも大体この時間にはロータリーにいますから。」

男は言った。

「本当に助けていただいて、魔法まで使わせていただいて……ありがとうございます。頭が上がりません。せめて謝礼でも……。」

僕は頭を下げた。そして、財布からお金を出すしぐさを見せた。

「いえいえ、大丈夫です。私は疲労という()()()()()対価をいただきましたし。本当に大丈夫ですよ。」

男はそう言うと、箒に乗った。僕は再度頭を深々と下げると、男は手を振った。そして、どこかへと飛んで行ってしまった。

「不思議な人だったな……そして、まさか魔法が使えるなんて。」

僕は上機嫌で空を飛び、家へと帰った。

 次の日から、通勤が楽になった。いつもの満員電車に乗らなくて済む。それは、本当に素晴らしいものだった。彼が話していたように、飛んでいる間は、僕がその場にいることは認識するものの空を飛んでいるとは思われないらしい。駅の防犯カメラのモニターに映った自分の姿を見ると、僕は箒にまたがっているわけではなく、ただそこに突っ立っていた。地面に足をつけていた。

「面白いなぁ。」

僕はそう言いながら、会社へと向かった。

「どうして、君はこんなことができないのかね!?」

部長が書類を叩きつけながら、僕を叱る。

「あの部長またあいつのことを叱ってますよ。」

「まあ、ミスをしてるのはあいつだからな……。」

同僚の陰口が聞こえる。最近、ミスが多くなってきたような気がしている。やはり疲れているのだろうか。ミスなく完璧にチェックできる魔法があれば……。僕はそう思いながら、資料をチェックしていた。

「あ。」

僕はその日、深夜、自然と駅前ロータリーまでやってきていた。

「お、なにかあったんですね?」

男は僕を見つけると近づいてきた。

「あの……実は……。」

僕が話し始めると、男は親身になって聞いてくれた。

「そうですか。大変ですね。お疲れ様です。……そうだ!ミスを発見できて改善案もわかる魔法とかどうです?」

「そんなのあるんですか!?」

僕は契約を更新した。

 次の日、いつものように書類にチェックをしていると、書類に赤いマーカーがされているのと赤い文字が書かれているのが見えた。これは、別に部長が気が変わってわざわざ指摘してくれるようになったとかそういうわけではない。実際には、ここにマーカーも引かれていなければ、赤ペンで添削されているわけでもない。これは、魔法の効果だ。何か抜けているところやミスなどがあれば、それが自分だけが見える文字やマーカーとして浮かび上がるという魔法だ。

「おっ、やればできるじゃないか。」

部長は喜んでいる。僕も仕事できついことがなくなってきて、とてもうれしかった。しかし、困っているのはそれだけではない。人間関係や残業、雑用係を頼まれるなどいろいろある。僕はいつの間にか、毎日のように男の元へ通い、疲れをとってもらいつつ、色々な魔法を教えてもらっていた。人と仲良くなる魔法、コミュニケーション能力が上がる魔法、雑用を片づけられる生活魔法、時間を止める魔法、簡単な作業なら勝手に行ってくれる魔法、遠隔で操作できる魔法、それはもう数え切れないほどの魔法を使えるようにしてもらった。これはもう魔法使いと言っても差し支えないのではないだろうか。

 そのような最中、僕はふと思った。最近、仕事が楽しくない。確かに、同僚と色々な話はできるし、定時に退社もできている。怒られることもなくなり、仕事も大きな支障なく進んでいる。しかし、なぜかとてもつまらないのである。僕の望んだ理想の生活……そのはずなのに、なぜか楽しくない。僕は、仕事を楽しくしてくれる魔法はないかと思い、深夜に駅前ロータリーに向かった。いつものように、男が待ってくれている。

「……。」

いつもなら、「なにかあったんですね?」と気さくに話してくれる男だが、今日は黙ったままだ。少し違和感を覚えたが、僕は話した。

「あのー、すみません、最近、仕事が楽しくなくてですね。楽しくできる魔法みたいのってありませんか?」

「……。」

男は黙ったままだ。

「えーと、すみません?」

僕は言った。

「……もうあなたに新たな魔法を使えるようにすることはできません。」

男は静かに言った。

「え?」

僕は一瞬固まった。

「もうあなたに新たな魔法を教えられないと言っているのです。」

男はそう確かに言った。

「え、どういうことですか。」

「もう、あなたは疲れていないではありませんか。」

確かに、最近疲労が多いかと言われると、少なくなっているかもしれない。

「いや、でも……。」

僕はそう言いかけると、男は言った。

「私がなぜ疲労を対価に魔法を教えていたのかを考えてみてください。」

「え……。」

僕は、少しの間沈黙した。そして、気づいた。確かに、疲労というのは、非常に不快なものであるし、最悪、体調を崩してしまう原因にもなり得る。しかし、それは達成感ややりきったという実感を感じられるものでもあったのだ。彼は、様々な課題や仕事が魔法によって簡単に片付いてしまうようになり、疲労を感じることはなくなったが、それに伴って、やりがいを感じられなくなり、人生がつまらなく感じてしまうようにもなったのである。だからこそ、男は他人から疲労を貰い自分が疲労を体感することで、それが元に戻るのではないかと考えた。僕は怖くなった。

「僕は……僕は、どうすればいいんですか!?」

僕は男に泣きついた。

「……対処法はあります。」

男は言った。一向に僕に目を合わせようとしない。

「え?」

僕は顔を上げた。

「これまであなたが使っていた魔法を無効化して使えなくすることです。」

「……。」

僕は黙り込んだ。僕は、甘い蜜の味を知ってしまっている。もしも、その蜜を一生味わうことができないとなってしまったら、僕は元のようにいつも通りの生活を送ることができるだろうか。いや、できない。できるはずがない。僕はわがままだった。

「嫌です!もう元の人間に戻りたくない!魔法使いのままでいさせてほしい!」

「そうですか……。なら、これしか方法はないですね。」

「対処法はあるんですか!?」

僕は顔を上げた。

 それから数日後、駅のホームで疲れた1人のサラリーマンがベンチに座った。そして、その横に僕は座った。

「あなた、随分と疲れているようですが……。」

僕はそのサラリーマンに話しかけた。流石はコミュニケーション能力が上がる魔法だ。流れるように話が進んだ。男が話した今の自分の状況を打破する方法、それは……。

「僕と契約しませんか?」

自分が契約主となって、別人から疲労を奪うことだった。

 魔法に依存してしまった僕が言えることではないのかもしれないが、自分が契約主になった今、ふと思うのだ。魔法は本当に必要だったのか、楽をして過ごすことがすべての理想だったのだろうか、と。

お久しぶりです、もしくは初めまして、明日あす とおるです。

契約魔術けいやくまじゅつを読んでいただき、ありがとうございます。

本作は、日々に疲れた社会人が魔法によって人生を変えられてしまう話でした。何事もやりすぎは良くありません。休憩と仕事はバランスよく行っていくべきものです。それでこそ、人間らしい生活というものはできるのかもしれません。

新作短編となってしまいましたが、およそ4か月振りの投稿です。連載作品はあまりに投稿してなさ過ぎて、警告文が出てきてしまっていますね。どうにかしたいのですが、大学何も考えないで限界までコマを入れたら大変なことになってしまい、しかも、自動車免許の取得も両立しなければいけないのでかなり限界です。元日の活動報告で話した目標まで届かないかもしれないです……。ああ、魔法が使えれば……。

実は、投稿日である2025年6月18日で、私が活動を始めて1年が経ちます。とはいえ、全然活動していないので、実感沸きません。この作品も活動1周年の記念的な意味も含めて執筆しましたが、書くの久々すぎて文法が……。そのような中でも、私の作品をいろいろ読んでいただいた皆様には心より感謝申し上げます。今後もできるだけ、投稿できればいいなと感じておりますので、どうぞ温かい目で見守りつつ、応援よろしくお願いいたします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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