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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~  作者: さとう
第四章 支配解放組織『斬月』

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月詠教・天照十二月『師走月』マサムネ①

 トウマは歩みを止め、大岩に座るマサムネを見た。


「お、来たか」


 マサムネは座っていた岩から飛び降り、首をコキコキ鳴らし、腕をグルグル回す。

 そして、交差するように地面に指していた二本の刀……一本は大太刀、もう一本は脇差を手に取る。

 大太刀を背負い、脇差を背腰に差し、両手を広げた。


「会いたかったぜトウマ。あの姉弟、無傷で殺したのか。ま、弱かったろ?」

「殺してないし、弱くなかった。あの弟の攻撃……正直、肝が冷えたぞ」

「あ、そう?」


 マサムネは「へぇ~」と腕組みし、首を左右に揺らす。

 つかみどころのない男だった。トウマは眉をピクリと動かし、マサムネの背腰にある脇差を見る。

 視線に気づいたのか、マサムネは言う。


「あ、気になるか? お前の脇差……いやあ悪い!! 使いにくかったんで、オレ好みに調整しちまった」

「……マジかよ。あーもう、コンゴウザンの大事なモンなのに」

「悪い悪い。あ、この大太刀見ろよ。すげーだろ? お前の脇差を『成分分析』だの『コピープリント』だの、ポリデュクス先輩が苦労して分析して、同じ高度、同じ素材で作った特注品だぜ。オレ好みに長さも変えてある。お前には感謝だな、トウマ」

「……ふーん」


 大太刀。

 トウマの持つ打刀、太刀よりも長い。そして、脇差。


(こいつも二刀流……しかも、刀)


 不思議な感覚だった。

 目の前にいるマサムネは、こうして目の前にいても、強いのか弱いのか(・・・・・・・・)わからない(・・・・)。トウマにとって初めての感覚だった。

 改めて、マサムネを見る。

 白いジャケット、白いズボンにブーツ、天照十二月の紋様が描かれたマントを羽織っており、背中に大太刀、背腰に脇差を差している。

 マサムネは言う。


「んじゃ、改めて。オレは天照十二月『師走月』のマサムネ。ま、新入りだ。よろしくな」

「おう。俺はトウマ・ハバキリ。月を斬る『斬神』だ」


 互いに名乗る。

 トウマは半身になり腰を落とし、マサムネは背負う大太刀の柄に手を添える。


「へへ、トウマ……ワクワクするな」

「おう!! へへへ……いくぜ、マサムネ!!」

「きやがれ、トウマ!!」


 二人は、敵同士とは思えないほどワクワクし、激突した。


 ◇◇◇◇◇◇


 全く同時に飛び出した。

 トウマは『瀞月』を抜き、マサムネは大太刀を抜く。


(──やっぱデケえ、んで長い)


 大太刀の輝きは、『瀞月』と全く同じだった。

 ガキィィィン!! と、刃同士がぶつかり、火花が散る。


「っしゃぁ!!」

「──ッ」


 マサムネの猛攻。

 大太刀を振り回す。その速度は太刀を振るうのと変わらない。

 鋭さもあり、技もある。

 だが……トウマには遠く及ばない。

 トウマは刃を躱す。そして、マサムネの懐に入り、抜刀。


「──っとおおお!!」

「おっ」


 だが、マサムネがバックステップ。トウマの居合を躱した。

 トウマは止まらない。


「刀神絶技、雨の章──『虎牙雨(とらがあめ)』!!」


 振り下ろし、打ち上げをほぼ同時に繰り出す二連斬。マサムネはギョッとしつつも、大太刀で防御する。トウマはすぐに納刀。


「刀神絶技、雨の章──『五月雨』!!」

「ぬおおおおおっ!?」


 抜刀し、何度も斬りつける技。だが、マサムネは全て大太刀で受けた。

 そのまま斬撃の勢いに押され、地面を滑って後退する。


「おーおー、すっげえなあ……でも、いい感じだ」

「何が?」

「へへ、こっちの話……さあ、もっといこうぜ」

「いいけど、本気出せよ。じゃないと……すぐ終わっちまうぞ」


 トウマのギアが上がる。

 マサムネは、刀で倒したいと思っていた。

 剣士は剣で……それは、転生する前から変わらない。

 刀神絶技。雨の章、刹の章、空の章、舞の章……その四つを組み合わせ、マサムネを斬る。


「刀神絶技、空の章──『啄鴉(ついばみがらす)』!!」


 斬撃が降り注ぐ。

 マサムネは大太刀を掲げ、トウマの斬撃を防御していた。

 トウマは、違和感を感じていた。


(──こいつ、何なんだ?)


 攻撃が、ゆるいのだ。

 素人ではない。構えも堂に入っており、太刀筋も悪くない。

 だが、達人というわけではない。あまりにも『弱い』が……なぜか、『強い』と感じていた。

 トウマの斬撃を受け、細かい傷だらけのマサムネ。


「いてて……あーいってぇな。へへ」

「……お前、何なんだ? やる気あんのか?」

「あん? やる気はあるぜ? だってオレ、お前とずっと戦いたかったし」

「……その割には、なんか弱いし、やる気も感じねぇぞ」

「やる気はあるぜ。あと、弱いのはまあ仕方ねぇ……今はな」

「マジで意味わからん」

「お? はは、観客が来たぜ」


 マサムネは刀を肩で担ぐ。

 トウマが背後に視線を向けると、そこにいたのは。


「トウマ―!!」

「トウマさん!!」

「だいじょうぶー!?」


 アシェ、マール、カトライアの三人。

 その後ろには、セリアンとアスルルがリヒトを肩で担いでいた。

 どうやら、七曜月下との戦いに勝利し、ここまで来たようだ。

 アシェは、ずっと気配を殺して見ているビャクレンに聞く。


「状況は?」

「見ての通り。奴を倒せば、この国での戦いも終わる」

「了解。一つ情報、妙な鉄のマギアかな……月詠教のでっかい金属のマギア兵器は止まったわ。司祭たちも投降したり、逃げだしてる。人間側の戦いは、間違いなくこっちの勝利!!」

「そうか……」


 ビャクレンはあまり興味がないのか、トウマに視線を戻す。

 マールは、警戒しつつ言う。


「あの仮面の方が、天照十二月……」

「新入りだそうだ。私も知らない……が、不気味だ」

「不気味?」


 カトライアが聞き返すと、ビャクレンは頷く。


「なんというか……強いのか、弱いのか、判断できない」

「「「……はあ?」」」

「ええい、私にもわからんのだ。ともかく、邪魔だけはするな」

「あ、あの……」


 と、息も絶え絶えのリヒトが言う。


「トウマくん、回復は……必要?」

「いらね。ありがとな、リヒト」

「うん……」

「リヒト、無理は……」

「ありがと、セリアン」


 セリアンは、本気でリヒトを心配していた。

 そして、マサムネは言う。


「わーお、美少女ばっかじゃん!! なになにトウマ、まさかお前……ヤるのか!? そこの三人と!?」

「おう、そのつもりだ。まだ予定立ってないけどな」

「いいねいいねぇ、羨ましいぜ!! 三人とも超美少女じゃん!!」

「だろ? なんだお前、話わかるじゃん」

「おいこら!! 変な話で盛り上がんな!! そんな予定ないし!!」

「ま、まあ……わ、わたくしも?」

「……うー、男って」


 アシェが怒り、マールは頬を染め、カトライアは眉をピクピクさせた。

 マサムネは笑いだし、大太刀を構える。


「あっはっは。さて、ひとしきり笑ったし……トウマ、そろそろオレも反撃するぜ」

「おう、いいぜ」

「じゃあ──行くぜ」


 ドン!! と、マサムネは走り出す。

 トウマも同じように走り出す。


(さあ、どんな技を──)


 トウマは、マサムネの剣を見極める。

 どんな技が来るのか、受け流し、受けとめ、弾き飛ばそうとする。

 そして、仮面で表情の見えないマサムネは。


 ◇◇◇◇◇◇



「『刀神絶技(・・・・)』」



 ◇◇◇◇◇◇


 大太刀による、連続斬り。

 トウマは目を見開いた。一瞬だけ反応が遅れた。

 そして、一撃……トウマの右頬が切れ、肩から血が噴き出した。


「…………おい、今の」

「おいおい、なーに驚いてんだ? お前の技だろ? まあ……オレの技でもあるけど」


 刀神絶技。

 トウマの技を、大太刀でマサムネが繰り出した。

 すぐにトウマも理解する。


「俺の技、摸倣したのか」

「まあ、そんなもんだ。それ以上の理由もあるけどな」


 コピー……それが、マサムネの能力。

 トウマはゾクリとした。


(……もし、こいつが俺の技を全てコピーして……俺に匹敵するくらい強くなれば)


 ゾクゾク、ワクワク、ドキドキと、トウマは震えた。

 マサムネとの斬り合いが、さらに楽しくなる予感がしたのだ。

 トウマはぶるっと震え、笑みを浮かべた。


「いい顔してんなぁ。へへへ……じゃあ、やるか」

「おう」


 トウマ、マサムネが互いに真正面から激突する。


「「刀神絶技、刹の章──『鬼汪(きおう)』!!」」


 全く同じ技が同時に放たれる。

 だが、大太刀のぶん、威力がマサムネの方が上。

 トウマの技は弾かれ、トウマはマサムネが座っていた岩に激突する。


「いっだぁぁ……へへへ、へへ、へへ……く、ははははははは!!」

「笑いたくなる気持ち、わかるぜぇ? なあ、トウマぁぁ!!」

「ああ!! いくぜ、マサムネぇぇぇぇ!!」


 戦いは、まだ始まったばかり。

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― 新着の感想 ―
こんにちは。 以前「マサムネって誰か(一番可能性があるのはトウマ)のクローン?」って書きましたが…。もしかしたらトウマに一回負けた月神側が、トウマの技をラーニングして完コピさせる→技量を分析する為に…
(;´・ω・)ウーン・・・マサムネはトウマのクローンとか?
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