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チーフテン解放戦⑥

「刀神絶技、雨の章──『霧雨』!!」


 トウマの連続斬り。

 カストルは、タイプシクスス『ライノス』の重装甲で斬撃を防御した……が、斬撃に装甲が負け、ぴしぴしと小さな斬り込みが入っていく。

 カストルは、焦りを感じ始めていた。


(こいつ……!!)


 タイプセカンド『ヨルムンガンド』の鞭は躱され、刀でコマ切れにされた。

 タイプサード『ヤタガラス』で翼を生やし、空中から攻撃をしようとしたが、翼を持たないトウマは空中を蹴って飛び、翼を両断された。

 タイプフォース『ケリュネイア』による双剣攻撃で手数を上回ろうとしたが、同じく双剣を振るうトウマに斬撃で勝てるわけがなかった。

 タイプフィフス『ハヌマーン』による高速起動形態で圧倒的速度で翻弄するつもりだったが、それ以上の速度でトウマに負けた。

 そして、タイプシクスス『ライノス』の装甲は、僅かだが斬られた。

 この状況を、ポリデュクスは爪を噛んでみていた。


「シクススまで……あたしの傑作が、生身の、しかも剣に負けてる……嘘でしょ!? カストル、本気出しなさい!!」

「やってるよ!! タイプセブンス!!」


 ライノスをパージ。小さな妖精型の『ピクシー』が鎧の胸に装着。

 魔力が高まり、両手から連続で魔力弾が連射される。

 だがトウマは腰を落とし、いつの間にか納刀して構えていた。


「刀神絶技、刹の章──『羅冠(らかん)』!!」


 連続ではなく、一撃の抜刀による衝撃波が、魔力弾をかき消した。

 カストルは舌打ち。胸の『ピクシー』を変形させ砲身と変え、魔力を込める。


「『フェアリ―ブラスト』!!」


 放たれるのは、超高密度の魔力による収束砲。

 トウマは再び納刀し、収束砲目掛けて刀を振るった。


「刀神絶技、空の章──『槍鴎(やりかもめ)』!!」


 ボッ!! と、槍のように鋭い斬撃が飛び、カストルの魔力収束砲がかき消された。

 そして、トウマの斬撃が胸に直撃し、『ピクシー』が砕け散る。

 カストルは衝撃で吹き飛ばされ、地面を転がった。


「う、っぐ……」

「……こ、こいつ」


 カストルはポリデュクスの傍まで弾き飛ばされ、ポリデュクスが助け起こす。

 トウマは肩で『瀞月』を担いでトントン叩き、『淵月』をカストルに突きつけた。


「どうした、まだまだここからだろ?」

「「…………」」


 月神イシュテルテが認めた、人間にして神の領域に踏み込んだ四人の人間。

 大地の四神、その中でも最強の『斬神』……カストル、ポリデュクスは今更ながら実感した。


「姉さん、こいつ……」

「ええ。月神様を殺した人間……間違いなく月詠教、いえ……月の全ての脅威となる」

「……使うしかないか」


 カストルは立ち上がると、タイプワン『フェンリル』を解除した。

 トウマは首を傾げる。


「あれ? なんだ、降参か?」

「違うよ」


 カストルが言うと、背後に金属の『ドラゴン』が現れた。

 ポリデュクスは下がる。そして、カストルの額からツノが生え、尾が伸び、皮膚が竜麟に包まれる。

 トウマは、ビャクレンやオオタケマルが見せた最強形態を思いだした。


「『神竜変化(ドラゴンスフィア)』……天照十二月にのみ許された、竜化の最終形態。そして……姉さんの最高傑作のひとつ、タイプファイナル『ドラゴン』」


 すると、金属のドラゴンが分離し、カストルの全身を包んでいく。

 ポリデュクスは言う。


「タイプファイナル『ドラゴン』は、『神竜変化』時に装着する、ドラゴンの力を爆増させる力がある……さあカストル、見せなさい!!」


 カストルは、鈍色の竜鎧を纏い、突撃槍を手にしていた。

 翼も、尾も、何もかも鎧に包まれている。

 トウマは、その威圧感がオオタケマル以上であることを実感し、ニヤリと笑う。


「強いな、お前……」

「当然さ。さあ、全力でいくよ」


 トウマ、カストルの戦いも、最終局面に入ろうとしていた。


 ◇◇◇◇◇◇


「だあああああああああああ!!」


 リヒトは、濃密な魔力を纏い、臆することなくギームスに突撃していく。


「こ、このガキ……!!」


 ギームスは下がる。飛ぼうとしたが、リヒトがぴったりとくっついているので逃げられない。

 そして、接近して拳、蹴りをひたすら繰り出してくる。

 月詠流拳法。基本の技だが、その練度は高い。


「ええい、離れ、っぶは!?」


 ドゴン!! と、強烈な一撃が腹に突き刺さる。肘による強烈な一撃だ。

 そして、顔が落ちたところでアッパーカットが入り顎がカチ上げられ、両手の親指を立て首に突き刺し、手刀が右胸、肋骨の間に突き刺さった。

 そして、突き刺さった手を握り、引き抜く……リヒトの手には、肋骨が握られていた。


「あがあああああ!! ぐ、おおおお……」


 激痛。

 ドラゴン化した皮膚に、人間の手が突き刺さるわけがない。

 だが、濃密な魔力を帯びたリヒトの手は、刀剣型マギアよりも鋭利な刃となっている。

 殴打するたびに、手足が砕け折れ曲がるが、圧倒的な回復で傷が瞬間的に消える。


(なんてガキだ!! 月詠流拳法の練度、基本技ばかりだが高い!! それに、『骨抜き』に『首刺』に『横隔潰し』と、殺し技をためらいもなく……いや、これしか教えられていない!! こいつの師は、殺しに特化した……)


 すると、リヒトが這うような態勢になり、ギームスの足をくぐる。そして背中に飛びついて両腕で首を絞める。


『お、っご、あ……』


 ドラゴン化といえど、呼吸をしないと死ぬ。

 バキバキとリヒトの腕が折れる。だが、回復し、また折れる。


「あああああああああああああああ!!」

「この、ガキがああああああああああ!!」


 バサッと翼を広げ、ギームスは飛ぶ。

 だが、上空ではない。

 跳躍し、一瞬だけ上昇し、そのまま頭から地面に落ちたのだ。

 地面は完全に硬化しており、頭の位置はリヒトの方が高い。

 リヒトは、頭から地面に激突。大量の血が噴き出す……そして、手を離してしまった。

 その隙にギームスは離れ、すでに回復したリヒトを蹴飛ばそうとする、が。


「──っが!?」

「アタシのこと、忘れないでよね!!」


 ドン!! と、頭が爆発した。

 視線を向けた先には、アシェが『イフリート』を構えていた。


「この……クソガキぃぃぃぃぃぃ!!」


 ビキビキと怒りに顔を歪めるギームス。大口を開け、牙を剥き出しにして、アシェを頭から喰らおうと飛び掛かった。

 だが……アシェの前に、滑り込むようにリヒトが現れた。


「このヤロウがァァァァァァァァァァァァ!!」


 髪が逆立ち、目が血走り、顎が外れんばかりに大口を開け、額に青筋が浮かんだリヒトは、右腕をギームスの口に突っ込んだ。


『おっぼぅぇっがああああああああああ!!』

「うがあああああああああああああああ!!」


 ベキベキと腕が砕け、回復し、砕けるのが繰り返される。

 リヒトは魔力を全開にし、右腕を全力で『振り抜いた』。


「があああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 バキベキグチャボジュッ!! と、砕け、裂け、水っぽい音が響いた。

 リヒトは、胃まで突っ込んだ手を全力で振り抜き、ギームスの体内から心臓を鷲掴みし、皮膚の内側からギームスの身体を引き裂いたのだ。

 あまりにも凄惨な光景に、アシェは口を押さえた。

 

「…………」


 ギョロンと、ギームスは白目を剥き、ドチャっと倒れた。

 そして、サラサラと粒子となって消滅した。

 リヒトの魔力も消え、肩で息をし……アシェの方を見て少しだけ微笑むと、そのままリヒトは倒れた。


「り、リヒト!! ちょ、しっかり!!」


 こうして、七曜月下『待宵』ギームスは討伐された。

 誰一人、犠牲となることなく。気弱で頼りなかったリヒトが、ギームスを討伐したのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 少し離れたところで、メジエドはアシェを見ていた。


「……まだまだ若く青い。まあ、断罪の対象からは外れましたね」


 まだ、月に対する脅威ではない。

 メジエドはそう結論づけると、持っていた本をアシェに向ける。

 すると、真っ白なページにアシェの顔、名前が映し出された。


「要注意人物……いずれ」


 パタンと本を閉じ、メジエドは闇に消えるのだった。

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おはようございます! リヒト大覚醒&大金星!
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