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ガジュマ岩石地帯

 トウマたち一行は、火の国ムスタングの危険地帯の一つ、『ガジュマ岩石地帯』に到着した。

 かなりのハイペースで進んだせいか、たった一日で到着……マール、リヒト、カトライアの三人は疲れ顔で、カトライアが文句を言う。


「ちょ、ちょっと……速すぎますわ」

「そうか? でも、一日で到着したじゃん」

「普通は、三日かけて、来る、ところ、よ……ふぁぁ」


 カトライアは肩を落とし、その場に座り込んだ。

 マールはハンカチで汗をぬぐい、自分の姿を見て顔をしかめる。


「うう、お風呂とまでは言いませんけど……汗をぬぐいたいですわ。淑女としてあるまじき……」

「さーて!! じゃあお前ら、今回は俺も一緒に戦いながら行くぞ!!」

「と、トウマさん……まさか、すぐ入るの?」


 リヒトが言うと、トウマは「おう」と頷いた。

 ガジュマ岩石地帯。入口からすでに岩石だらけの地形であり、大小さまざまな岩や、切り立った崖などが多くあり、自然な横穴もいくつかあった。

 カトライアは立ち上がって言う。


「……魔獣の気配だらけね」

「当然だろう。さて師匠、参りましょうか」

「おう。お前ら、俺たちはここを『まっすぐ』行くぞ。いいか、『まっすぐ』だ」

「「「……???」」」


 カトライアたちは首を傾げた。が……その意味は、すぐに理解することになる。


 ◇◇◇◇◇◇


 一行は、ガジュマ岩石地帯へ踏み込んだ。

 岩石、落石だらけで歩きにくく、岩壁にはトカゲがへばりつき、崖の上では岩のような鱗に包まれたサルが何匹もトウマたちを見下ろしていた。

 

「ロックゴブリン……確か、岩石地帯の固有種ね」


 カトライアが『ガイア』を担いだまま言う。

 すると、道の真ん中を大きな岩石が封鎖していた。

 

「落石のせいでしょうか……まあ、ここなら仕方ないですわね」

「どうする? トウマさん、迂回する?」


 マール、リヒトがトウマに質問する。と……カトライアが言う。


「ふふん。ここは、私の出番!! こんな岩程度、『ガイア』で叩き」

「待った。最初に言ったろ、まっすぐ行くって」


 するとトウマ、跳躍し、岩石の取っ掛かりに足を掛けてさらに飛び、岩の上に飛び乗った。

 ビャクレンも同じように飛び乗り、トウマが言う。


「崖だろうと、岩石だろうと、まっすぐ進む。いい運動になるし、身体も鍛えられるぜ。さ、いくぞ」

「「「えええ……」」」


 トウマは岩の反対側に消えた。

 ビャクレンも、カトライアたちを見降ろして言う。


「心技体、全てを使い登って来い。お前たちが地の国ヴァリアントで過ごしている間、私も同じようなことを生徒にやらせたぞ。結果は、全員がクリア……では」


 ビャクレンも反対側に消えた。

 三人は顔を見合わせ、マールが言う。


「どうやら、行くしかないようですわね」

「そうね……でも、トウマについて行けば、強くなれるわ」

「う、うん……じゃあ、行こうか」


 マールが最初に岩石の取っ掛かりに手を掛けて登り、カトライアが続き、最後にリヒトが昇る。

 そして、リヒトが顔を上げた時だった。


「……ぅっ!?」


 二人は岩石登りで気付いていないが、スカートの中が丸見えだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 マールたちが岩石の上を登り、降り、トウマたちに追いつくと……すでに始まっていた。


「お、来たか」

「ふむ、なかなか早い」


 トウマ、ビャクレンは、巨大なトカゲと戦闘中だった。

 場所は、両側に穴だらけの岩壁がある細い道。その穴から、岩石のようにゴツゴツした表皮を持つ巨大トカゲが何十匹も現れ、トウマたちに襲い掛かっていたのだ。

 トウマの足元には、首が両断されたトカゲが数匹転がっている。

 そして、岩壁から飛んだトカゲが、トウマ、ビャクレンを丸呑みしようと襲い掛かって来た。


「刀神絶技、『甘雨(かんう)』」

「月詠小太刀二刀流、『金糸梅(きんしばい)』!!」


 二匹のトカゲは、綺麗に両断され即死……トウマは刀を鞘に納め、マールたちに言う。


「交代だ。あと二十匹くらいかな……お前たちに任せる」

「そうですね、では……よろしく頼む」


 トウマ、ビャクレンが下がり、マールたちが前へ。

 意外にも、三人とも文句を言わず、マギアを手に前に出た。


「ま、こうなる気はしていたわ」

「そうですわね。でも、サバイバル経験がなかったら、きっと慌てていたでしょうね」

「あはは……じゃあ、ボクはアシストするから、前衛をお願いするよ」


 カトライアが『ガイア』をクルクル回して構え、マールも新型の双剣を抜く。


「「お任せを」」


 すると、トウマたちほどの脅威ではないと察したのか、壁の横穴から大量の岩トカゲが現れた。

 カトライアは右側面、マールは左側面へ向かって走る。


「『高貴なる殴打(エレガント・ノック)』!!」


 ズドン!! と、カトライアの巨大ハンマーが岩壁を殴りつけ、衝撃で何匹かの岩トカゲが落ちて来た。そこを、カトライアは狙う。


「お母様が言っていました。レガリアには、今の技術では解析できない『固有能力』があると。魔力によって発現するレガリアの奇跡!! お見せしましょう!!」


 カトライアが『ガイア』を頭上に突き出す……すると、槌の部分が巨大化した。

 魔力による膨張と言えばいいのか、風船のように槌が膨らみ、さらに持ち手の部分が伸縮する。

 槌部分の巨大化、そして持ち手の伸縮……現在のマギア理論から外れた現象。それが『ガイア』の固有能力。

 伸びた持ち手、巨大化した槌部分に、堕ちて来た岩トカゲは弾き飛ばされた。


「お~っほっほっほ!! さあさあ、叩き潰して差し上げましょう!!」


 カトライアは元の大きさに戻した『ガイア』を手にする。

 だが、持ち手が槍のように長くなり、槌部分は小さくなり、扱いやすさが上がっていた。

 大きさの自在化……新たな戦い方に、カトライアはうまく順応しているようだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 一方、マールは。

 岩壁に張り付いている岩トカゲを見て、クスっと微笑んだ。


「わたくしの武器が剣と理解し、射程外から様子を伺っている……というわけですわね。でも……」


 マールは、新型マギアを岩トカゲに向ける。

 ただの双剣だった『ハールート&マールート』は、その形状が変わっていた。

 グリップの部分がやや歪曲し、ガード部分が肥大化していた。そして、両刃だった刀身が片刃に変更され、峰の部分に細い筒が追加されていた。


「ムスタングの技術で強化された新型マギア……新たな名を『ルサールカ』ですわ。ふふ、もうおわかり?」


 すると、水を凝縮した弾丸が放たれ、壁に張り付いていた岩トカゲの頭部を粉砕した。

 マールは言う。


「接近戦だけ……わたくしの弱点を補う、いいマギアですわ。ありがとう、アシェ」


 すると、岩に擬態して近づいていた岩トカゲが、マールの背後から大口を開けて喰らいついてきた……が、マールは気付いていたのか、反転し、もう一本の双剣を振る。

 すると、岩トカゲが綺麗に両断され、地面を転がった。

 もう一つの剣……こちらも片刃に変更され、グリップとガード部分が強化されている。

 何より、刃に薄い水の膜が纏わりついていた。


「ヴラドさんの『デルピュネー』から得た、属性を纏う力……わたくし、剣に水を纏わせることはできましたけど、闇の国ゾルファガールの技術でさらに薄く、精錬された水を纏うことができるようになりましたの。ふふ……この新型マギア『ヴォジャノーイ』は、斬ることならトウマさんにも負けませんわよ?」


 中距離攻撃を獲得し、接近攻撃をさらに強化。

 『ルサールカ』と『ヴォジャノーイ』……新たな双剣を手にしたマールは、岩トカゲたちに向かって言う。


「それでは、ダンスを始めましょうか」

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